異世界のアフレクションネクロマンサー448
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『カツ…カツ…カツ……』
私が足音を鳴らし、オレンジの液体が満たされているに噴水に近付いても、オレンジの手は何かする訳でも無く、大人しく引き下がって行く。
先程までの獰猛で、飢えた獣のように迫って来たのが、嘘のように大人しく戻って行く。
(誘われている……)
ドラゴンも、私も呼ばれている。
オレンジの液体は、多くの生き物達を吸収した……それならば、我々の事も吸収しようとしても、何ら不思議では無い。
我々という、各種の生命の頂点にいる存在を欲しても……
「格の違いが分かっているのさ。吸収すべき相手なのか、それとも、今まで蓄えて来た物を捧げるべき者なのかを」
噴水の淵に座って、ドラゴンがオレンジの液体を掬うと、
「こんなモノを創って……」
手の平に染みて、筋肉に沿って、オレンジ色の線が発光しながら体を走った。
その摩訶不思議な光景を見てもなお、ドラゴンと反対側となる噴水の淵に座り、
「……何の為に、こんなモノを」
ドラゴンと同じように、オレンジの液体を手で掬うと、オレンジの液体が体の中に染みて走り、体が熱くなって、体内の中の結晶が反応する。
(体が訴えている…もっと、このオレンジの液体を摂取しろと…そして、新たな……)
「新たな命になれと、言っているだろ?」
体が、新たな命になろうとしている。
「この、人とドラゴンが融合した姿。これがドラゴンである我々の新たなステージ……人の知恵を手にした姿」
「それを私にも」
「そうだ、お前はまだ不完全……芋虫から、蛹になっただけで羽化をしていない」
ドラゴンの言葉に呼応して、噴水からオレンジの手が伸びて来て、二人の事を抱き締めて……
「さぁ受け入れるんだ…否定する事は無い。奴等の創った爆弾を、我々は逆に利用してやるんだ」
「…………」
目を閉じる…人としての最期の時を受け入れて……
(先生…私は、この世界の紡ぐ欠片となります)
オレンジの手に抱き締められて、一つの卵となっていく。




