夢の中10
そう、別に礼人を頭数に数えて戦わせようとしているのではない、あくまでも礼人を死ぬ危険性から遠ざけるために連れて行くに過ぎない……とは言え、
「それでは礼人これを着て下さい」
「あと刀と弓もじゃ」
礼人は自分の身を守るためには武器が無ければならない。
それ故に二月とアニーは礼人に鎖帷子と旧日本兵の制服、そして皆が持っている物と同じ刀と弓を渡され、
「よいか礼人、決して手柄を立てようと思うんじゃないぞ、生きれば礼人には未来があるのじゃから」
「そうですよ。礼人は私達が戦う姿を見て今後に生かしなさい」
あくまでも死なない事を考え、決して戦おうとしてはいけないと釘を刺される。
「はい……」
礼人も自身では役に立たないと分かっている以上、そこで反論する気などさらさら無く。
渡された物を身に着けるために、壁際でこそこそと着替え始めるのだが、
「救援の方はどの位で来る?」
「それが雪に阻まれてどんなに早くても一時間は掛かるそうだ」
「そんなに掛かるのか……」
背中越しに聞こえる大人達の話は深読みをするまでもなく、嫌な雰囲気で話が進んでいる。
礼人は渡された鎖帷子を身に着けると、それは想像以上に軽くて何だが頼りなく感じたが、それは昔の鋼で作られたのではなく、チタン合金で作られた現代の鎖帷子であるため、礼人が思っている以上の強度を誇り、それと礼人が渡された旧日本兵のデザインの服であるが、これは防弾ベストと同じ繊維で作られている。
礼人が渡されたこれらは一見すれば時代遅れだが、その中身はしっかりと現代の技術で作られているのである。
この一式が昔にあれば、それこそ神話の八岐大蛇を討った草薙の剣に匹敵する代物になっていたであろう。
ならば、その一式があれば八岐大蛇だろうが鵺だろうが簡単に始末出来るかというと、そうは問屋が卸さない。
過去の時代の人は優れた道具が無かったゆえに己自信を鍛える必要があり、霊力だけを見れば現代の霊能者は足元に及ぶかどうか……
それは優れた道具を手にした分、霊力を必要としなくなった弊害と言える。
礼人は現代の神器を纏い終えると大人達の中に混ざり、
「自分にも、どの位危険な状態なのか教えて頂きたいです」
妖力から感じるおぞましさは説明を聞かなくても肌で分かるが、やはりある程度の形というものが欲しいのは、少しでも立ち会う時の緊張感を和らげたかったのかもしれない。




