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waste monster  作者: 白銀みゆ
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終わりなき戦い 2

KTは、普段VR専門のSEを仕事にしている21歳。

大学の博士課程に相当する範囲までを、19歳と2ヶ月で終わらせた。

今や、この世界の要となっている通信に関する知識を極め、更に新しい通信を開発しようとしている。

彼の論文は世界に注目され、この国にも大いに期待されている。


TWEは、有志で集められているメンバーなので、年齢も職業もバラバラで、チームの編成に関しては、取りまとめている本部が行なっている。

当然、警察機関も動いてはいるのだが、本来の治安維持活動だけで手一杯、つまり、人手不足なのだ。


この街は、犯罪も自殺も100年前に比べたら大幅に減少しており、法律も変わった。

警察用ロボットは、人間が動かす物と、AIが動かすものがあり、AIは、一切攻撃をしないようにプログラムされている。

何かの脅威から人を守る場合には、襲われている人を逃すべく最大限の努力をするようになっており、最悪の場合は自らが盾となるが、いかなる場合でも武器は使用しない、と、決められている。


一方、人が遠隔操作するロボットは、武器の所持、攻撃の許可をされているが、基本的には殺傷能力の低い武器しか携行していない。

有事には、特別な武器が配布されるケースがあるが、waste monsterが現れるまで、有事らしい有事がなかったので、警察は戦う事に慣れていない。


それよりも、戦う事において優秀な成果をあげられるのは、アクションゲームなどが得意な人間である。

故に、waste monsterが現れた時に、我こそはと思うものは集え、と、呼びかけがあり、腕に自信がある連中が集まった。

大半がゲーム感覚で参加しており、誰が取り仕切っているのかなど興味がない。

しかし、KTは、TWEを取り仕切っているのは、一体誰なのか、気になっていた。


リーダーは戦闘の都度、報告書を出さなければならないから、それをいったいどこの誰が読んでいるのか気にならない方が不自然というものだ。

報告書や、戦闘時の映像を元に、次なる武器が開発されるのだろうから、そう言う意識を持って書いているものの、実際にそれが役に立っているのか、気になり始めるとキリがない。

そうして精神が不安定になると、ソファが検知して安定剤を投与される為、KTは深呼吸をして一旦報告書を書く手を止めた。


報告書の提出期限までまだ時間がある。

そう思い、気分転換にゲームを始めたKTだが、その時警報が鳴った。

この警報は、あくまで治安維持に関わる人間にしか届いていない。

混乱を避ける為、治安維持に関わっていない人間は、必要に応じて非難誘導された時に初めて、なんらかの危機が迫っていることを知る。


「今度はどこだよ」


waste monster出現地点を確認すると、自分がいるカプセルからはずいぶん離れた場所だった。

この短時間に移動したのか、別の個体なのか。

そもそも個体という概念が当てはまるのか。

waste monsterに関しては、謎が多すぎる。


一先ず、今回の警報に関して、KTは自分が出動する必要がないことを確認した。

TWEでは、waste monster出現地点の近隣にいるメンバーが対応する事になっているからだ。

しかし、警報を聞いた事で、ゲームをやる気分ではなくなってしまった。

ため息をつきながら、報告書の作成画面を開き、作業を再開した。


その頃、waste monster出現地点では近隣のTWEメンバーが対応に当たっていた。

だが、これまでとはwaste monsterの様子が異なっていた。

これまで出現したwaste monsterは、例えるなら蛇のような動きや形をしていた。


それが、今回は、大きな人形ひとがたを形成し、攻撃のパターンも全く異なっていた。

waste monsterを形成しているのは、文字通り廃棄物なのだが、ほぼ液状で、骨のように支える強固な物体があるとすれば、それは廃棄されたばかりの死体くらいのものである。


攻撃を浴びせれば、その正体がわかるかと、攻撃を仕掛けると、そこには、おそらく元はカプセルの一部であったであろう鉄材やカプセルの外壁が垣間見えた。

過去の戦いで損壊したカプセルはあり、その瓦礫の一部は確かにwaste routeに落ちた。

それを取り込んで骨格にしたというのか。

知能があるとしか考えられない。


戦闘に当たっていたTWEのリーダーは、戦況の悪化を予測し、緊急支援要請を出した。

この場合、どんなに遠くにいるメンバーも、動ける者は出動する事になっている。


「ちっ。マジかよ。」


KTは、報告書の最後の1文字を入力し、送信すると、即座に出動準備をする。


「こちらTWE28リーダーKT、支援要請了解。

ドローンとロボ、どちらが必要か。」


いざという時は、リーダーも戦闘員として動く。

戦況に合わせて対応すべく、前線の判断を仰いだ。


「KT、感謝する。ドローンにて兵器の補充及び戦闘を記録願いたい、そちらのチームの出動が可能であれば、あわせて頼む!」


KTは、メールでチームに出動要請を送る。

その手の動きは目にまとまらぬ速さだ。

三人から、出動可能とすぐに返事があった。


「TWE28、戦闘員3名派遣可能。

すぐに向かう。」


現場近くの警備ロボットと、ドローンにアクセスし、遠隔地から戦闘に参加する。

すぐに現場に到着すると、前線にいたリーダーのドローンは、既に損害が激しく今にも落下しそうになっている。


「TWE28現場に到着した、指揮権をもらう。

すぐに撤退しろ。」


waste monsterは、頭のない人間のような形をしておりり常に液体が骨格の周りを動いているようだった。


「これは、骨格部分壊さないと無限ループだぞ。

カプセルの外壁なんてそうそう壊れるもんじゃないだろ。」


KTは、高速で考えを巡らす。

爆発の威力が強すぎれば今度は真上のカプセル底部が破損する。

バリアを展開したところで被害が出るだろう。

破壊するのではなく、あの形を崩す方法なら?

ワイヤーで引き倒す!


「ワイヤー!ワイヤーを引っ掛けて倒せ!」


KTが指示を出すと、ロボがワイヤーを出し、2体がかりでwaste monsterへ引っかける。

そして、そのまま引き倒すと、骨格はいとも簡単に崩れ、waste monsterは跡形もなく消えた。


「瓦礫回収!」


また骨格に使われてはかなわない。

付近にある瓦礫だけでもひとまず回収し、汚染物処理施設へ全てを納めた。


「まったく、waste monsterってのは一体なんなんだろうな。」


後から駆けつけたサブリーダーが言った。


「まったくだ。

一先ず解散!」


その後、KTはその手腕を見込まれ、本部から、TWE全体の指揮を担う統括リーダーへの就任、及び、waste monsterの分析チームへの協力を打診されたのだった。

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