IF4話 使い魔と精霊の違い
「あっ。なぁプリシラ、使い魔と精霊の違いって何だ?」
「使い魔と精霊の違い? 違いも何も同じだ。違いがあるとすれば、上位や中位と言ったものだろう」
「違いがねぇのか・・・。ならここにいる生徒たち全員が、精霊と契約をしてるって事か?」
「そうだな。妾みたいな人と見分けがつかないのを、精霊と呼んでいるそうだな。だが実際は違う。妾を含め召喚されるものは全て精霊だ。解ったか主よ?」
「解った。でも全て精霊って言うのはビックリするな。じゃあクリスタルドラゴンや、狼も精霊になるのか」
「そやつらもそうなるな」
「・・・気になったが。精霊はどうやって生まれる?」
「性行為は勿論。精霊王が勝手に増やしたりしてるな」
「勝手に増やすだと? どうやって増やしてるんだ? まさか無から生み出す何て言わねぇだろな?」
「無からは無理だ。それをやるにはたちの悪い神がやる事だ。精霊王が出来るのは。この世界で死んだ魂が精霊界に来た時に、精霊王がその魂を再利用して生まれ変えさせる。記憶は消されるがな。言っておくが。魂が精霊界に行っても、何も変化は出ない。肉体と違って、影響は無いからな」
「ま、まるで神様がやることですね」
「まぁあの精霊王または女王は、神になりそこなった者だからな」
「「「「「神になりそこなった者!?」」」」」
プリシラ以外全員驚く。
「言ってしまえば、出来損ないだな」
「おいプリシラ。いくら何でも言い方が悪いだろ。親か祖父母みたいなもんだろ」
「知らんな。あんな屑は妾知らんな。あの屑は妾が寝てる時に、夜這いに来たのだぞ」
「それは精霊王が悪い」
「だろ。故に妾はあの屑の事を、親とも祖父とは思わん」
と言っても。最初は無理やりやろうとしてたけどな。まだ言う事が聞くだけでもマシか?
「聞く事はこれで終わりか?」
「あぁ。これを研究者に聞かせたら、真っ先にラザの所に行くな。今聞いた事は誰かに口外をするなよ。誰かに喋れば分かってるだろな?」
オレ含め生徒たちは顔を青くして、首を縦に振る。
「よし。これで授業に入れるな。ホームルームで言ってた通り、空間収納魔法を憶えてもらうぞ」
イゼベル先生から、空間収納魔法の説明をする。その説明を聞いて、実際に空間収納魔法が出来るかを試す。オレとエメリー様とエディスさんは、すぐに空間収納魔法が出来るようになった。それをイゼベル先生に言うと、先生は驚く。オレたちは先生の前で、空間収納魔法をやると合格を貰える。その後は他には何か出来ないかを試してみる。
午前と午後の授業が終わって、放課後になる。オレとプリシラは図書室に向かう。
「大丈夫か主よ。生き物を初めて殺めたんだろ。まだ怖いか?」
「大丈夫だよ。もう怖くない。ここで怖がっていたら、冒険者にはなれないだろ」
「そうだが。主が無理だと思ったら、いつでも言うがよい」
「そう簡単に言うかよ」
「―――あの、ラザ・メルト・カルバーン。ですよね?」
「そうですけど。貴女様はどちら様で?」
「伯爵家のご令嬢。リゼラ・エル・ゲールです」
「ラザ・メルト・カルバーンです。それでオレに何かに用ですか?」
「ラザさんは婚約者はいませんか?」
あ、今ので確信した。コイツプリシラ狙いだな。あるいはオレを傍に置いて、自分自身の地位を上げる気か?
「――――――いませんが」
「でしたら私と」
「消え失せろ小娘。小娘ごときが、妾の主に手を出そうというのか?」
プリシラが鋭くリゼラさんを睨む。
「ヒッ!?」
「そもそも小娘はどう言った理由で、主に近づいた?」
「・・・・・・それは入学式の時からラザさんの事が」
「嘘だな。小娘は今ここで初めてあっただろ。それを入学式の時から好きだったと? 嘘も大概しろよ小娘」
「う、うそではありません!」
「いいや嘘だ。現に小娘の過去の記憶には、主の顔が映って無ければ姿も映って無い。これを嘘とは言わず何と言うんだ?」
「あ、あなただってうそを言ってるのでは? 大体人の記憶なんて、見ること出来ませんよね」
「まぁ信じられぬよな。耳を貸せ小娘」
プリシラはリゼラさんに何かを言う。するとリゼラさんの顔が赤くする。
「ななななな何故それを!?」
「だから言っておるだろ。小娘の過去の記憶を知っておるとなぁ」
「きょきょきょきょきょ今日の所は、かかかかかかか帰らせてもらいます!」
リゼラさんは帰って行く。オレたちは移動を再開する。
「なぁプリシラ。お前はあの人に何て言ったんだ?」
「それはだな。1日何回・・・。いや言うのは止めておこう」
・・・多分言おうとしているが、分かる気がする。プリシラの頭に中は厭らしい事しか、無いのか? そんな事は無いよな。
図書室のドア前に着いたら中に入る。オレは椅子に座りに行かずに、受付の方に行って奥の部屋に入る。
「司書さん。生きてますか?」
「・・・生きてるよ。貴方が来るたびに、生存確認するのは一体何なの?」
「司書さんはあんまり人と会わないイメージがあるので、こうやって生存確認しないといけないと思いまして」
「否定出来ないな・・・。はい。これが貴方たちの仕事だ。本を元の位置に戻しておいてくれ」
司書さんから本を大量にテーブルに置く。プリシラはその大量にある本を浮かせて、部屋から出て本を本棚に戻していく。
「主よ。ちと先の話だが。来年は精霊科に転科するのか?」
「精霊科に転科? する気無いけど。何で?」
「主の記憶を見てな。妾がいる事によって、精霊科に転科する話を見た」
「それでオレは精霊科に転科すると思ったのか?」
「しないのか?」
「するわけ無いだろ。大体精霊科に転科しても、教えてもらう内容は少ないと思うぜ。それだったらプリシラに直接習った方が、詳しく学べると思うが」
「学ぶ意欲があると?」
「あるね。中々ない機会だし、これを手放すわけ無いだろ」
「そうか。なら休日とかにするか。その方がいいだろ」
「そうだな。その方がいいかな。先ずは本を本棚に戻すか」
オレたちは大量にある本を、本棚に戻していく。