第9話 空間収納魔法
5月1日。教室にて。
「よーし全員いるな。朝のホームルーム始めるぞ。先ずはギアについてだ。わたしとギアとエメリーで話し合った結果。ギアは3ヶ月の男子学生寮の自室謹慎になった。本来なら保護者を含めて話合うが、保護者の時間が取れず、3人で話し合った結果そうなった。退学にならなかった理由は、エメリーが視界にさえ入らなければ、罰は軽くてもいい。との事だ」
酷い事をする・・・。ギアって人が学園に戻ってきても、色々と陰で言われる事を分かっているのか? 退学の方がよかったんじゃないか?
「先生。ギアはどうやって物を盗んだんですか?」
「ギアの家は『鍵師』だ。金庫を開けたり、合鍵作ったりする鍵関係の職人だ。その鍵師の中で『鍵魔法』がある。この鍵魔法は魔法を使って施錠してる所を開けたり、施錠を出来な物に鍵魔法を使って、物に施錠出来るようにする。今回は鍵魔法で元々ドアノブにかかっていた魔法を消して、中に侵入して物を盗み出る時に再度魔法をかけた。これがギアがやった事だ」
そんな事も出来るのか。じゃあ普通に鍵とかいらなくね? ・・・それは違うって?
「次は授業についてだ。4月までは午前と午後の授業はわたしが教えていた。だが5月から午後の授業は変わる。前にオメェーらに渡したプリントに書かせた、選択科目の授業になる。オメェーらが受ける科目はもう決まった。今からプリントを配るが、普通に列ごとに配ってもいいが、見られたくない人いるだろう。今から名前を呼ぶ。ルー」
イゼベル先生は生徒を呼んで行くが、次呼ばれる事が分かっているので、生徒たちは並んで行く。勿論自分も並ぶ。
「ラザか。お前だけだぞ、第1候補に『冒険科』って書いてあったのは」
「そうですか。つまりオレは冒険科に?」
「そうだ。冒険科の先生はわたしだ」
おっと午前と午後もイゼベル先生か。特に問題はないけど。
プリントを貰って席に戻る。
「これで全員にプリントがいったな。最後は進級試験の課題だ」
「イゼベル先生。質問いいでしょうか?」
「何だエメリー」
「進級試験はまだ先の話では?」
「確かにまだ先の話だが。今ここで言う。進級試験は各クラスによって一部違う。筆記試験までは同じだが、実技試験が違う。わたしの場合は『自分の得意な属性魔法を使って中級を発動すること』と『空間収納魔法を使えるようにする』これが条件だ」
それを聞いたオレ以外の生徒は少し騒ぎ出す。
「くくくく空間収納魔法は2年生で習うのではっ!?」
「中級も2年生で習うことになってますよ!」
「そもそも1年で魔法や剣術や創術など、必要最低限を学ぶものなのではっ!?」
「まぁオメェーらの言いたい事は分かるが、これはもう決定事項だ! 安心しろわたしも鬼じゃない。午前授業でちゃんと教える」
多分そういう問題じゃないと思いますが・・・。
するとチャイムが鳴る。
「―――朝のホームルームはここまでだ。1時間目は先ほど言った空間収納魔法を教える。では解散」
イゼベル先生は教室から出る。
「いやー何か試験が面倒になったね~。2人は頑張れそう?」
気配遮断を使おうと思ったら、エディスさんに話しかけられる。
そう言えばエメリー様の前の席だったな。
「私はちょっと・・・。先に教わっている、お姉さんとクリスさんに聞いてみます」
「あぁそっか。エメリーにはお姉さんとクリス様がいたね。ラザはどう?」
「頑張るしかないですよ」
「まぁそうだよね~。でもどうやって空間収納魔法を使えばいいんだろう?」
「・・・空間収納魔法は、言ってしまえば空間の中に収納するスペースがある。その中に収納出来るようなものをイメージして、そこまで魔力を流してやれば出来るんじゃないですか。出来るか分かりませんが」
「・・・何か説得力がある気がする」
「すぐに出来そうな気がします・・・」
「それは無いと思いますが。でもどうやって空間に物や手を入れるか。先ずそこからですよ」
「あぁ~そっか。先ずは空間にどうやって物とかを入れるかだよね~」
チャイムが鳴り生徒たちは席に座っていく。少しすると先生が入って来る。
「よーしいるな。ホームルームで言った通り、空間収納魔法について教える。空間収納魔法は空間の中に物を収納する魔法だ。その中に入れた物は時間が止まり、熱い物は熱いし冷たい物は冷たい。ただし生きてる動物や人間は入れる事は出来ない。が、腕を入れるくらいは許される。空間の中は無限大だから何でも入るぞ。使い方だが。こればっかりは詠唱ではどうにもならん。この魔法を作った人曰く「何か適当に魔法陣とかを組んでいたら出来た!」って言っている。そうなると魔法陣の方だが、これは1人1人魔法陣が変わって来る。つまり自分専用の魔法陣が必要になる。後はイメージでどうにかしろ。魔法陣で新しく創る場合は、私が持ってきた魔法陣の作りが書いてあるプリントがある。必要ならわたしの所に来い」
肝心のイメージの説明を省かないで!
ほとんどの生徒たちはイゼベル先生の所に行って、魔法陣の作り方が書いてあるプリントを取りに行く。
「じゃあさっき言った。どうやって空間に物を入れるかを考えようか」
「「んー・・・・・・」」
難しいな・・・。そもそも空間自体よく分からない。これをただの学生がどうやって理解するんだ?
「ん~・・・。あ! 鍋に水を溜めてそこに手を突っ込んでいく感じで、それをイメージすれば空間に触れる事が出来るんじゃない?」
「どうでしょうか・・・。でも仮に出来てもその中に物を入れる事は出来ますか? 私にはそのまま物が浮かぶ気がします」
「物は試しだよ! 早速やってみるね!」
エディスさんは試しに右腕を先程言った事を試す。すると右手はどんどん消えていく。
「「「・・・・・・・えっ?」」」
「これって出来てるって事でいいの?」
「えぇっと・・・。どうなんでしょうか?」
「試しに物を入れてみたらどうですか? 入れたら一度閉じて再度取り出せれば、成功してると思いますが」
「う、うん。試しにやってみるね」
エディスさんは鉛筆を左手で持って、それを空間の中に入れる。そこから両手を離す。そして再度同じ事をして、空間から鉛筆を取り出す。
「・・・鉛筆が出て来た」
「これはつまり、成功してると言ってもいいですよね?」
「そうですね・・・。オレたちもやってみましょうか」
オレとエメリー様はエディスさんと同じ事をする。
「「出来てる・・・」」
「先生! アタシたち出来ました!!」
「はぇーな!? また授業が始まって数分しかたってねぇぞ! オメェーら本当に出来たんだろうな? ちょっとやってみせろ」
オレたちはイゼベル先生の所に行って、イゼベル先生の前で空間収納魔法を使う。
「・・・・・・出来てるな。とりあえず良くやった。だがやり方とかヒントを他の生徒に教えるな。自分のクラス他クラス他学年にもだ。誰かに教えれば、ババァの鉄拳が飛ぶぞ」
イゼベル先生は怖い顔でオレたちを見る。オレたちは顔を縦に振る。
「はぁ・・・。本来なら、少しづつわたしがヒントを教えていくつもりだったが・・・。よし。オメェーらは引き続き空間収納魔法を使って、色々試してみろ」
イゼベル先生に言われた通りに、他にも何か出来ないか試してみる。