第85話 予約屋
12月27日。オレは王都にある馬車乗り場に行く。
「ラザー! こっちこっち!」
エディスさんは手を振っている。オレはエディスさんの所に行く。
「おはよー。意外と来るの早かったね」
「この辺はあんまり来ないので、少し早く寮から出て来ましたが。特に迷わず来れましたね」
「後はエメリーたちだけだね」
「そうですね。マルル先生にバレなければいいですが・・・」
「大丈夫でしょ。わざわざここ集合にしたし、イゼベル先生は家からここまで来るし。そう簡単にはバレないよ」
それバレるフラグじゃないだろうな? バレたら面倒になりそう・・・。
「ところで。馬車で移動するって事は、かなり遠いんですか?」
「遠いって言えば遠いね。歩きで行くと確実に1日じゃ足りないね」
「そんな遠い所に温泉宿があるんですか。馬車で行っても時間がかかるのでは?」
「今回乗る馬車は、普通の馬車とは違うよ。普通の馬とは違って、速い馬が馬車を曳くからね」
「そうなんですか。それなら早く着きますね」
どれくらい速いかは知らないけど。
「あ、エメリーたちが来た。こっちこっち!」
エメリー様たちはこっちに来る。
「ファーストホースか。これなら早く着くな」
「イゼベル先生は知ってたんですか。馬、ですよね?」
「れっきとした馬だ。よく魔物と間違われるが、ちゃんとした馬だ」
「じゃあ集まったし、馬車に乗るよ」
オレたちは一度御者の所に行って、人数確認と本人確認をする。それが終われば幌馬車に乗る。少ししたら幌馬車が動き出す。
「後はこのまま何事も無ければ、夕方にはフウオ街に着くよ。そのフウオ街に予約した温泉宿があるよ」
「気になったんですか。どうやって予約したんですか?」
「予約屋って言う店があってね。その店で予約したい店を選んで、紙に書くんだよ。書き終わったら、魔道具に置いて予約する店の方に転移されるよ。後は返答が来るまで待機だね。店以外にも船や飛行船の予約も出来るよ」
「そんな店もあるんですね。馬車の予約も出来たり?」
「勿論。この馬車も予約したからね」
「何から何までエディスに頼ってますね・・・。ありがとうございます」
エメリー様はお礼を言って頭下げる。オレたちも同じようにやる。
「いいよいいよ、好きでやってる事だから・・・。だから頭を上げて、恥ずかしいから!」
オレたちは頭を頭を上げる。
「一応聞きますが。皆さんはお金の方は大丈夫でしょうか? 自分はいつもより多く持って来ましたが」
「アタシは大丈夫だけど」
「私も大丈夫です」
「わたしも平気だが。ラザはどうだ? 一番金が少ないと思うが」
「今まで空間の中にしまっておいた、いらない素材を一気に売ったので。お金は大丈夫です」
「それなら平気ですね。それと―――」
サラサ様が何か言おうとした時に、幌馬車は大きく揺れる。
「揺れますね。ファーストホースが走ると、ここまで揺れるのですか?」
「初めて乗ったから分かりませんね。この先も揺れたりしますかね?」
「アタシは何度も温泉宿に行ってるけど、もうこの先は大きく揺れないよ」
「そうですか。エディスさんもそう言ってるので、オレから離れたらどうですか。エメリー様」
「あ・・・、はい!」
エメリー様はオレから離れる。大きく揺れた時に、オレに抱き着いたのだろ。恥ずかしい・・・。
「それでサラサは、何か言うおうとしてませんでしたか?」
「忘れ物がないかを聞きたかったんですが。特に無いですよね」
「無いでしょ。仮に忘れ物があったら、フウオ街で買えばいいからね」
「そうです―――」
サラサ様が何かを言おうとしたら、幌馬車が急に止まる。
「・・・なんでしょうね。自分が何かを言おうとすると、馬車に何かしら異常な事が起きるのは。何故でしょうか?」
「たまたまだと思いますよ。何かあったか御者に聞いてみましょう」
「わたしも付いて行こう」
オレとイゼベル先生は幌馬車から降りて、御者の方に行くが。魔物が複数いた。
「そう言う事か。ラザ。解ってるだろうな?」
イゼベル先生は空間から、剣を出しながら聞いてくる。俺も空間から剣を出す。
「解ってますよ。あの魔物どもを殲滅でしょ」
「解ってるじゃねか。行くぞ!」
オレたちは魔物どもの方に行く。
「ひぇ~、あのお客さんたち強いですなぁ~」
「強いどころか、強すぎるよね」
「ってお客さん。幌馬車に乗っていてくださな。危ないですよ」
「そうしますね。そろそろ終わりそうなので」
「え、終わる? あ。本当ですね」
殺した魔物を回収をして、浄化魔法で身体を綺麗にしてから幌馬車に乗る。
「お疲れ様です。怪我はありませんか?」
「あると思うか?」
「ありませんね」
「この程度で怪我をしたら、イゼベル先生に怒られます」
「あぁ怒るな。もう一度鍛え直しだな」
「勘弁してください・・・。話は変わりますが。ユールスト街に、ダンジョンが出来たのは知ってますか?」
「話は聞いている。お前の故郷だろ」
「はい」
「わたしも教師を辞めてたら、すぐに向かうつもりだ。お前はどうするんだ?」
「帰る前に王都で冒険者になってから、手伝をするために実家に帰りますよ」
「なら会うかもな。会った時にお前の家に泊めさせてくれ」
「いいですけど。両親と使用人が、変な勘違いをしなければいいのですが・・・」
「・・・最悪わたしが貴族だと言えばいい。そうすれば解決するだろ」
「それもそうですね」
「・・・何かいいな~。卒業しても普通に会えるのって」
「エディスさんも会おうと思えば、会えるのでは? 商人と言う立場を使って」
「・・・あぁ~。でも親が許してくれるかな」
「許してくれるんじゃないですか? 今街は人が沢山いますし、色々潤っていますよ。多分親父は街に置く商会を、増やしたい思いますよ。現に色んな商会から、店を出せてほしいって言ってますし」
「そう言う事なら。ちょっと話してみようかな。卒業した時に話せばいいかな?」
「その方がいいですね。こっちも一応手紙で聞いてみますね」
雑談をしながら、幌馬車はフウオ街に向かう。