第84話 温泉宿
12月中旬。期末試験とある程度の受験などが終わり。生徒たちはあまりにも嬉しさに、叫び出す。
「ここまで叫ぶんだ・・・。何かちょっと怖いね」
「今まで追い詰められていましたので、色々ストレスが溜まっていたんでしょう。でも今は、追い詰められるものは無くなりましたね。まだ結果が出て無いのに、何でもう気を抜いてるんだろうか」
「一時的でも解放されるので、それを喜んでると思いますよ。結果が悪かったら、更にストレスが溜まりますね」
「ここいると怖いから、図書室に移動しようか」
オレたちは立ち上がり、図書室に行く。図書室に着いたら中に入って、空いてる席に座る。
「ラザさんは特に何も無いですが。エディスは就活は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。アタシは親の商会の所に就職するからね。手伝いとか色々やってたから、ほぼ試験は無いね」
「楽じゃないですか。あまり他の人には言わない方がいいですよ」
「分かってるよ。それより冬休みはどうする? どっか行く?」
「どっかって何処ですか? あんまり遠い場所には行けませんよ」
「実はね~」
エディスさんは空間から、雑誌を出す。
「ここの温泉とかどう?」
「温泉!? 温泉何かあるんですか? ちょっとその雑誌見せください」
「良いよ」
オレはエディスさんから雑誌を受け取って、内容を見る。
に、日本の温泉宿と一緒だ・・・。ゲームでこんなのあったっけ? ・・・・・・あった。ただ2年生の夏休み中に行くはずだが。オレのせいでかなりズレたのか。夏に温泉に行くのはどうかと思うが。
「もしかしてラザ。行く気満々?」
「違いますよ。ただ驚いて、見ているだけですよ」
「それでこの温泉宿に行きたいんですか?」
「うん。本当は家族と行きたいけど、色々忙しいから中止になった。だからエメリーたちを誘って、温泉に行こうかな~って。思ったの」
「私は良いですが。他は誰を誘うんですか?」
「サラサさんを誘うし、保護者としてイゼベル先生を誘うよ」
「変わらないメンバーですね。まぁ楽しんで来たらどうです。あ、お土産はいりませんよ」
「ラザは何言ってるの? ラザもだよ」
「待ってください。どう考えても男性のオレが行くのは、駄目ですよ。絶対に駄目ですよ」
「大丈夫だよ。ちゃんとラザだけ個室を予約するから」
「それで安心すると思ってるんですか。行きませんよ。男子1人女性4人は、痛い視線が来るのできついですよ」
「でも前にイゼベル先生の家に行った時は、普通でしたよね?」
「た、確かに普通でしたけど・・・」
「じゃあ平気ですね。いつ行きましょうか?」
「その前にサラサさんとイゼベル先生に聞かないと」
2人は話を進めて、日程を決め始める。どうやらオレの意思は無いようだ。
「・・・エディスさん。その温泉宿は一度行った事あるんですか?」
「あるよ」
「その温泉宿は浴衣がありますか?」
「ゆかた? なにそれ? そんなの無いよ」
浴衣が無い? もしかして、店の外見だけは日本に似てて。中はそうでもないのか?
「浴衣が無いなら、ちょっと安心は出来ますね」
「よく分からないけど。良かったね」
「良かったは良かったですが。一応確認しますが、オレも行く事になるんですよね?」
「そうだよ。とりあえず冬休み中、26日から30日の間には行きたいね。無理だったら、1月の1日から4日には行きたいかな」
「あぁそうですか」
「――――――ここにいましたか。探しましたよ、ラザ」
マルル先生がこっちに来る。
「何か御用ですか?」
「えぇ。実はさっき知ったんですか。イゼベル先生は教師を辞めるんですね」
「あれ、今まで知らなかったんですか? てっきり知ってると思いましたが」
「知ってたんですか!? 何で教えてくれなかったんですか!」
「知っていると思ったんですよ」
「エメリーさんとエディスさんは知ってましたか?」
「知ってますよ」
「知ってるね。去年聞いたけどね」
「それで話はそれだけですか? こっちはちょっと忙しいので」
「あ、はい終わりですね。ところでその雑誌は、温泉などの雑誌ですね。3人で行くのですか?」
「サラサさんと保護者としてイゼベル先生を誘って、5人で行く気だけど」
それをマルル先生の前で言うのか!? 絶対に理由を付けて行くって言うぞ!
「―――男性はラザだけなんですよね?」
「そうですね。ラザさんだけですね」
「でしたら、その保護者の枠にぼくを入れてくれませんか? 男性1人だと心細いと思いますし、保護者が増えれば別々に行動出来ますよ」
ほら言ってきた。オレをダシに使って、イゼベル先生と一緒に行きたいんだよ。
「保護者はイゼベル先生だけいればいいかな。別行動もしないし、皆見て回りたいしね」
「それにマルル先生も忙しいと思うので、遠慮させていただきますね」
拒否した。もしかてマルル先生を入れる事に、不満があるのか?
「ぼく自身は忙しく無いので、基本的には予定は空いてますよ」
「それでも遠慮させていただきます。まだこっちは予定を決めていませんし、まだ行くと確定をしたわけではありません。そもそも2人が来れるかも分りません」
「それでしたら、ぼくが聞いて来ますよ」
マルル先生はそう言って移動する。
「いちゃったー・・・」
「行きましたね。何でそこまで拒否をするんですか?」
「マルル先生はイゼベル先生の事が、好きなんですよね?」
「何でそんな事を知ってるんですか?」
「サラサさんから聞いたよ。前にイゼベル先生の家に、泊まりに行った時にね」
「サラサ様はそんな事喋ったんですか・・・。それでイゼベル先生は何て言ってました?」
「お酒の酔いが醒めて、真顔で「絶対に無い」って言ってましたね」
「完全に脈なしじゃないですか。だから拒否をしていたんですね」
「そうだよ。だって両想いでも無いのに、一緒にいさせるのは酷だよ」
「確かにそうですね。こうなるとイゼベル先生は断りそうですね」
「マルル先生の前ではね。多分アタシたちの前では行くって、言うかもよ」
「それは無いと思いますが」
「――――――ここにいたか。さっきマルルに会ったが。オメェーらは温泉に行くのか?」
イゼベル先生とサラサ様がこっちに来た。
「行くよ。サラサさんとイゼベル先生はどう? 行ける?」
「勿論行きます。自分の予定はあまりありませんから」
「わたしも大丈夫だ」
「イゼベル先生も来るんですか? マルル先生も来ると思いますよ」
「大丈夫だろ。アイツ前では断ったからな。学園の行事ならいいが、それ以外では絶対に行きたくねぇな」
「「「「(完全に脈なしだ・・・・・・)」」」」
「ほら、サッサと予定を決めるぞ」
オレたちは温泉に行くために、予定を決める。