第81話 意外と気にって
10月17日。文化祭2日目。自分たちのクラスでは、物凄い叫び声が聞こえてくる。今年のクラスの出し物は、お化け屋敷だ。去年もお化け屋敷をやっていたが。今年はエメリー様たちがいるから、去年とは比べ物にはならない、怖いお化け屋敷になっている。具体的には、本気のメイクと衣装を作って、演技の練習を徹底的にやった。その結果現在の状況になっている。
「うんうん。昨日に引き続き、お客さんの嬉しい悲鳴が聞こえるよ」
「何をどう聞こえたら、嬉しい悲鳴に聞こえるんですか? どう考えても、怖くて悲鳴を上げてますよ」
「怖いのが見れて嬉しい悲鳴でしょ」
一体どんな考えをしたら、そんな風に聞こえるんだよ・・・。
「それは置いといて。結局サラサさん来なかったね・・・」
「サラサは幽霊とかが嫌いですからね。お化け屋敷には来ませんよ」
「なら無理やり捕まえて、無理やりここに行かせような~」
「今の時間はサラサはクラスの仕事をやってますよ。仮に自由時間でも。ここに来させると、二度口を聞けなくなりますよ」
「やっぱり止めておこう」
「心変わりが早いですね。それでどうします? 昨日行ってない所に行きますか?」
「そうだね。じゃあサラサさんのクラスに行こうか。昨日は行けなかったからね」
オレたちはサラサ様のクラスに行く。
「今年は一緒に回れたけど。去年と一昨年は一緒に回れなかったよね」
「1年生の時はエメリー様だけ時間が合わなくて、2年生の時はオレが違うクラスでしたね」
「今年はあの手この手で、3人と一緒の時間で回る事が出来ました!」
「あの手この手って言っても。ただ他の生徒たちに、この3人で回りたいって言ったら、他の生徒たちは普通に許可したんだよね。何かアタシに対する目が痛かった・・・」
「まぁ平民と王族ですからね。そりゃあ嫉妬の目で見られますよ」
「ラザは気配遮断で逃げてたもんね・・・。ズルい」
「ズルくないですよ。出来ない人が悪いんですよ」
「これでも少しは出来るようになったんだよね~。それでも見つかるね」
「まだまだ練習が足りてませんよ」
「・・・私も習った方がいいでしょうか?」
「その必要は無いですよ。もし使えるようになったら、色々誤解が生まれますよ。特にエメリー様のご家族が」
「あぁ・・・」
「理解は出来たようですね。それはそうと、サラサ様のクラスの出し物は何でしょうか? オレは聞いてないんですよ」
「メイド喫茶だって~。流石にアタシたちが1年生の時にやってた、喫茶店はそう出てこないか」
「そりゃあ出てきませんよ。男子生徒からは批判が必ず出ますよ。あの時決まった理由は、エメリー様が賛成したから、男子生徒たちは賛成したんですよ。あの喫茶店は酷かった気がしますよ。主にオレを含めた男子生徒たちが・・・」
「でも楽しかったじゃん。ラザはその時呼び込みをやっていたけど。結局ラザが男って言わなかったら、誰にもバレなかったんでしょ」
「はい。悲しい事に初見では誰も男性だと、気付いてくれませんでした」
「あれでも普通のメイクだったし、声も少し変えていたでしょ。それじゃあバレないよね」
「でも綺麗でしたよ。もう一度見たいです」
「もうメイクのやり方を忘れたので、もう無理ですよ」
「絶対嘘でしょ。そうじゃ無かったら、今頃自分でメイク出来て無いでしょ」
「えっ、いつもエディスさんにやってもらってますよ。何忘れてるんですか?」
「アタシ1回もやってないよ! 少し手伝おうと思ったけど、ほぼ終わっていたよ!」
「確かに終わってましたね。ラザさんは意外と気にっていたりしませんか?」
「そんな事は無いですよ。ただ染み付いているだけですよ」
「やっぱり自分で出来てるんじゃん・・・」
「さ、早くサラサ様のクラスに行きますよ」
「逃げた」
「逃げましたね」
オレたちはサラサ様のクラスに着く。中に入ってメイドに案内されて、席に座る。
「出来れば高くない方がいいね」
「確かにそうですね。一昨年はロザリー様たちのクラスで、メニューに記載されている値段が・・・」
「あれは高過ぎるよね。あれだけ高かったから、勝てると思ったんだけどな~」
「相手は姉さんとクリスさんですよ。あの2人が接客をやってくれるのなら、高い値段何て気にしませんよ」
「流石王族と公爵家。この2つに勝つには、中々難しいね」
「一体どう言う成り行きで、勝負になったかは知りませんが。そろそろメニューを見ませんか?」
「そうですね。メニューを見ましょうか」
オレたちはメニューを見る。すぐに食べ終わる物を選んで、メイドを呼んで注文する。
「意外とまともな値段だったね。これらなら今年はアタシらが1位かな」
「今年は姉さんたちがいないので、勝てると思いますよ」
「去年はクリス様のクラスが1位でしたね。今年も何か賭けているんですか?」
「負けたら一番高いクレープの奢り。1年生の時から変わってないよ」
「これでサラサ様が負けたら、2人分も奢らないといけないんですか」
「ラザもいる?」
「止めときますよ。オレがいない時に決めたんですよね。後から割り込んでくるのは、流石にどうかと思いますよ」
「あっそう。ならアタシ含めて3人でやろっと」
待っているとサラサ様が、料理を運んでくる。
「んん~、メイド姿のサラサさんは可愛い!」
「似合ってますよ」
「今度一緒に写真を撮りましょう」
えっ、カメラってあったの? それとも魔道具?
「――――――それでは自分は仕事に戻ります」
「待って。メイドの服ってまだ残ってる?」
「予備が何着がありますが」
「ラザ。出番だよ」
「何言ってるか分かりませんねー。オレは食べる事に忙しいので、さっきの事は聞かなかった事にしますね」
「着ないのですか?」
「サラサ様。その期待をしている目で見ても、オレは着ませんよ。それより仕事に戻った方がいいかと」
「・・・・・・はい」
サラサ様は仕事に戻り、オレたちは料理を食べる。食べ終わったら少し休憩をしてから、会計に行って料金を払ってクラスから出る。その後は他のクラスに行く。時間が経つと文化祭が終わる。出し物の順位は、ウチのクラスが1位だった。