第8話 街
5月1日の日曜日。ベッドの上で仰向けになる。
何か疲れが一気に来たような・・・。昨日までエリオットを尾行していたからか? でもその尾行で分かった事は、特に攻略対象と関わろうとしなかった。やっぱりオレがエリオットと友達にならなかったから、攻略対象と関わる機会が無かった。そうなるとこれ以降起きるストーリーイベントにも影響が出そうだな。現に2日前に起きた事も内容が少し違っていたし。・・・ここまでくればもうエリオットを尾行する必要はないかな。後は本格的にストーリーイベントを乗り越えて行けばいいか。それより今日はどうするか。やる事が無くなると暇だな・・・。このままぐうたらするか。
「クゥ!」
急にペールの右前足がオレの左ほっぺを触る。
「なんだ~ペール。オレはこれからぐうたらするんだ~」
「クゥゥ!」
今度は両前足でほっぺを触って来る。
「何するんだ。暇なのか? 暇なんだな」
「ククゥ」
ペールは右前脚でドアの方を指す。
「外に出たいのか? 学園の敷地内ならいいが、学園の敷地外になると首輪を付けないといけないんだよ。だがその首輪はまだない。諦めろ」
「クゥゥゥ・・・・・・」
ペールが落ち込んじゃったな。こればかりはしょうがない。2日前に貰ったプリントには「学園の敷地内なら首輪などをしなくてもいいが、学園の敷地外になると首輪などを付ける義務がある」っと書いてあったな。付けなかったらどんな罰則があるか知らないが、きっとキツイ罰則がるのだろう。・・・街か。そう言えば全然街とか行ってなかったな。疲れがあるが行くか。
オレは起き上がりベッドから下りる。オレは寝間着から私服に着替える。
「ペール。学園の敷地内までは一緒だけど、敷地外になったら帰らせるからな」
「キュ!」
ペールは返事をしてオレの後ろ首まで登って、そのまま巻き付く。
「そんなにここが良いのか?」
「クゥ」
「お前が良いなら良いけど」
オレはドアを開けて外に出る。施錠して男子寮から出る。
「あ! あれがアイスフォックスじゃない?」
「ホントだ! いいなぁ~。お願いすれば触らせてくれるかな?」
「アナタはフォックスのアリーがいるでしょ!」
「それでも触りたいのー!」
「モフモフ・・・」
「モフモフね」
「モフモフだね」
「ッチ。珍しい上のモフモフを召喚したくらいで、いい気になりやがって・・・」
「アイツ1年生だろ? ちょっと痛い目に遭わせようぜ」
「バカやめとけ。あの1年生はあのクリス様と仲がいい噂だぞ」
「なにっ!? 一体どんな手で仲良くなっただよ・・・」
「すみません。ちょっとその噂、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「「うわああああああっ!?」」
あっ、ついオレに関する噂が流れていたから。ついつい聞いてしまった。
「なななな何だよお前! 急に現れやがって!」
「そそそそそうだ! な、何のようだよ!」
「先程言いましたが、オレに関する噂が流れているという事なので。是非その噂を聞きたいと思いまして」
「あぁ・・・何だそんな事かよ・・・」
「噂の内容だな。最近ポッと出た噂だから、そんなに深くは知らないが。図書室で何度もクリス様とお前が会って、楽しそうに話している。これだけだ」
「・・・・・・はい? オレはクリス様に会って話したのは、1回だけですよ」
「「えっ、1回だけ?」」
「そうです」
「嘘じゃないだろうな」
「本人であるオレが嘘ついてどうするんですか? 今のところオレに特にメリットはありませんよ」
「「(コ、コイツ。こんな羨ましい噂が流れていて、特にメリットが無いだとぉぉぉ・・・)」」
「その噂を流した張本人とかって分かりますか?」
「さぁ~それはわかんね~な~」
「そうですか。では失礼します」
オレは知らない人から離れて、校門の方に行く。
「「・・・・・・腹がたつぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」
「なーにがメリットが無いだって・・・。メリットだらけじゃねぇか!」
「それがねーなんてぬかしやがってっ!!」
何か聞こえたような・・・。気のせいか。そろそろ校門に着くしペールを帰さないと。
オレはペールを帰して、そのまま校門を出て街の方に行く。
前も歩いたけど、意外と遠い。何で街から離れた場所に学園を造ったんだよ・・・。
オレは街の中を歩きだす。
武器屋に防具屋に宿屋、服屋に飲食店や本屋や散髪屋。色々あるな。とりあえず何か食べたいな・・・。―――あの屋台にするか。
オレは屋台の方に行く。
「いらっしゃい! 何本にする?」
「2本ください」
「あいよ! 合計銅貨6枚だ」
オレは服のポケットに入ってるお金が入った袋出す。そこから銅貨6枚を店の人に渡す。
「毎度! そのまま食べるか?」
「はい」
オレは袋をポケットの中にしまう。そして店の人から肉串を2本受け取って食べる。
んんっ美味い! 塩でシンプルな味付けだけど、いい感じに塩が効いていて美味い! これ何の肉なんだ?
「すみません! これ何の肉ですか?」
「何ってお前・・・。オーク肉に決まってるだろ」
「!?」
お、オーク肉? ここに来て急にファンタジー要素を・・・。魔法が使えるだけでもうファンタジーだけど。
「何だお前。・・・さてはお前は貴族だな」
「はいそうです」
「なっ! し、失礼しました!」
「いえそんな急に畏まられても・・・。オレは確かに貴族ですけど、三男だからそこまで偉くないですよ。敬語もいりません」
「そ、そうか・・・。しかし、お前は本当に貴族か? 普通なら不敬罪とか言ってくるぞ」
「そうなんですか? オレは特に気にしてませんが」
「そもそも三男でも、それなりには偉いと思うが」
「あぁオレはちょっと事情があるんですよ」
「そうか・・・。よし、1本オマケだ!」
「ありがとうございます」
オレは1本受け取って屋台から離れる。
良し全部食べた。ゴミ箱は・・・・・・。あるわけ無いよな。丁度噴水の近くだから、あまりやっちゃいけにないけど。串を燃やすか。いや駄目だな。何処か捨てられる場所は・・・。
「ねぇねぇ君。その手に持ている串はゴミかい?」
オレは後ろから声をかけられて、そっちに振り向く。
「はいゴミです」
「ならこの袋の中に入れてくれ。私たちはこの街の清掃員だからね」
「ありがとうございます」
俺は清掃員が持っている袋の中に串を入れる。清掃員は違う所に行く。
何かテーマパークにいそうな人だな・・・。さて次は何処に行くか。
オレは周りを見ながら、何か変わった店がないか見ながら歩く。
この店は・・・。ケーキ屋か?
チラッと窓から中を見ると、ショーケースにケーキが並んでいた。オレはすぐにその店に入る。
「いらっしゃいませ(男性のお客さんなんて珍しい)」
オレはショーケースに入っているケーキを見る。
異世界に来て甘いものは諦めていたが、まさか異世界でケーキが存在するとは・・・。出来れば端から端まで1つづつ買いたいけど、そこまでお金が無いし冷蔵庫とかも無い。そうなるとかなり絞って2つかにするか。定番の苺のショートケーキとチョコレートケーキ、いやチーズケーキも捨てがたい・・・。待てよ。ペールってケーキを食べるのか? いやいやそれは無いよな。ペールは狐だし、流石にスポンジケーキ自体食べる事は出来ないだろう・・・。
「(な~んかこのお客さんかなり迷ってるな~)」
よし。多分食べないだろうけど、ペールの分も買うか。
「すみません。苺のショートケーキ2つください」
「かしこまりました。お持ち帰りでしょうか?」
「はい」
店員さんはせっせとケーキを取り出して、箱に入れていく。
「お会計銀貨5枚です」
流石ケーキ高い。値段が高い。
そう思い中がらお金が入った袋を出して、そこから銀貨5枚取り出し手渡す。袋をポッケにしまう。
「丁度ですね。ありがとうございました」
オレは店から出てそのまま学園の男子寮に帰る。帰って来たらペールを呼び出して、手を洗って箱から苺のショートケーキを取り出すして、ペールと一緒に食べる。
「ククゥ―!」
た、食べてる・・・。普通にケーキを食べてる・・・。
「腹壊さないのか?」
「クゥ!」
腹壊さないんだ・・・。