第75話 ダンジョンが出来た
夏休みが始まって、8月1日。エメリー様たちが家に来る。外で挨拶が終わったら、トーマスさんに付いて行って。客間に行く。
「今年は兄たちが帰って来なくて良かった」
「そうだな。あの馬鹿2人が帰って来たら、私の胃が持たなくなるぞ・・・」
「胃薬でも飲んでろよ。それよりいいのか? 今日は新人たちの説明会だろ。早く行かないと遅刻するぞ」
「・・・ラザ。お前も来てくれないか? 私1人では人が足りん」
「何人か使用人を連れて行けばいいでしょ。オレは今から、エメリー様たちの相手をしてくるから。それとも変わってくれる?」
「―――では行って来る。くれぐれも、エメリー様たちに迷惑をかけるなよ」
親父は急いで準備をして、説明会に行く。オレは部屋に戻る。自分の部屋の前に着いたら、ドアを開けて中に入る。
「やっぱりいましたか」
「ここに来れば。確実にラザに会えるからね」
「確かにここに来れば、確実にオレはいますね。あんまり来てほしく無いんですか。そもそも堂々と男性の部屋に入りますか?」
「普通は入らないよね~。まぁラザだから普通に入ってるんだよ」
オレだからいいのかよ・・・。この3人はオレの部屋に入って、何か変な事はしてないだろうな?
「ベッドの下を確認をしたのですが。特に如何わしい物は無かったですね」
「机の引き出しの中やタンスの中も見たんですが、これと言って如何わしい物は無かったですね」
「逆に真面目な物しかなかったね。この年ならあると思ったんだけどな~」
「お前ら人様の部屋で何やってるの!? 普通物を漁るか!?」
「ラザ先輩が怒ってる・・・。しかも敬語じゃ無いですよ」
「怒る時も敬語が抜けるんだ。これも稀の中の稀だね」
「このまま敬語ではなく、タメ口で喋ってほしいですね」
「反省のする気無いと見ました。出禁でいいですね」
「すみませんでした」
「もう人様の部屋を漁らないので」
「出禁はやめてください」
「本当に反省してますか?」
「「「はい」」」
「・・・まぁいいでしょう。ですが。次同じ事をしたら、即刻出禁ですからね」
「分かりました。ところで。ここに来るまで、かなりの冒険者がいましたが。何か祭りでもやっているのでしょうか?」
「あぁ祭りじゃ無いですよ。実は去年の夏くらいに、街の近くにダンジョンが出来たんですよ」
「「ダンジョンが出来た!?」」
「あぁそう言えば。ユールスト街の近くにダンジョンが出来た、って話があったね。そっか、ラザがいる街はユールスト街だったね」
「その・・・、ダンジョンが出来て危険なのでは?」
「管理をしてなかったら、危ないですね。ウチにいる騎士団が最初に見つけのですが、時に被害が無かったですね。その後がちょっと・・・」
「ダンジョンの権利で揉めたんですね。でもダンジョンは、最初に見つけた人に権利があると。授業で習いましたよ」
「エメリー様の言う通りです。最初に発見した人が、ダンジョンをどうこうする権利があります。勿論冒険者ギルドに連絡したり、領主に連絡をして権利を譲ることが出来ます」
「どんな風に揉めたの?」
「最初に発見したのはウチの騎士団なので、権利は騎士団にあったんですが。騎士団の人たちは、親父に権利を譲渡しようとしたんですが・・・」
「そこで冒険者ギルドの人たちが、何か言ってきたの?」
「そうです。多分騎士団が警備をしてる時に、冒険者が見たんでしょうね。それをギルドの方に報告をして、ギルドマスターがウチに来て。講義をしてきたんですよ。「領主がダンジョンを独占するのは駄目だ! 我々冒険者ギルドが悪用しないように、キッチリ管理をする」って言ってましたね」
「何か大変な事になっていたんだね。それでどっちが権利を得たの?」
「エディスさんは知っていて、聞いてるんですか? 最終的には親父が勝ちましたよ。そもそも騎士団の所属がウチなので、自然と親父の方に権利が譲渡されるんですよね。色々大変だったらしいですよ」
「ダンジョンの権利がカルバーン家になった事で、何か変わったことはないんですか?」
「親父の仕事が増えた事と、最近はお母さんも仕事をしてますね」
「だから色々バタバタしてたんだ・・・。何かごめんね。こんな大変な時期に来ちゃって・・・」
「大丈夫ですよ。ダンジョンの権利を得る前から、バタバタしてるので。特に問題は無いですよ」
「いえ、かなり問題だと思いますが。ところでダンジョンから出てくる、宝とかはどうなってるんですか?」
「一応ウチも売買をやってますが。主な売買は親父が一番信用している、商会が売買してますよ。っと言うより、領土内にある商会は1つしか無いんですが」
「確かマキレイ商会だっけ?」
「そうです。マキレイ商会が売買してます」
「そうなるとカルバーン家の利益は、どうなってるんですか?」
「基本的には冒険者や騎士団たちが、ダンジョンに潜って宝を手に入れたら。マキレイ商会かウチに売りに来ます。先ずウチで買取をした後は、王国に行って売りに行くか。こっちに来ている商人に売りますね。マキレイ商会では。買取をした後に売り出されます。その商品が売れたら、売れた金額の3割をカルバーン家に、納めて貰う事になってます。ただしこれは、ダンジョンで出た宝などになります。日常品とかの合計売上金を、3割を納めて貰う事はありません。他の売り上げは他の所で納めてもらうので」
「ん~、それでもカルバーン家の利益は少なくない? 生活って出来るの?」
「意外と出来てますよ。元々税収入が良かったので、特に生活は困りませんでしたね。それにいきなり収入がドカッと入って来ると、これはこれで面倒になるので3割にしたらしいですよ」
「カルバーン家が生活出来てるなら、特に何も無いですね」
「まぁそうですね。あ、今年の春からロザリー様がこっちに来てますよ」
「姉さんが!?」
「・・・話を聞いてなかったんですか? てっきり手紙で伝えてると思いましたが」
「初めてしりました。姉さんは今何をしてるんですか?」
「今はダンジョンに潜って、宝集めでしてると思いますよ。交代制で。明後日には地上に戻ると思うので、会いに行きますか?」
「行きます」
「では明後日会いに行きましょうか」
「明後日行くのは良いとして。街に行かない? 一昨年は街に行かなかったから、今年は行きたいと思うんだけど」
「良いですね。早速行きましょうか」
オレたちは立ち上がって、部屋から出る。