第74話 ノーラス商会
冒険者ギルドに戻り、依頼の報告をする。報告が終わると、報酬が支払われる。一度その報酬を受け取って、後で分配をする。
「銀貨400枚。クレランさんたちも、分配は必要ですよね」
「おれたちは必要無いよ。学生の同行依頼で報酬は貰えるからな」
「それならイゼベル先生は?」
「わたしは禁止されている。それにわたしは何もしてねぇだろ」
「ならオレとサラサ様で分配しますね」
オレは銀貨200枚をサラサ様に渡す。オレは空間から銀貨が入った袋を出して、残った銀貨200枚を袋に入れて。袋を空間の中に入れる。
「じゃあまた明日だな」
「「また明日?」」
「・・・イゼベルさんから、話を聞いてない?」
「「全く」」
「・・・どういうこと?」
「あぁ~言い忘れていた。職業体験は3日間やる事になっている。だから明日と明後日も、依頼を受けてもらう」
「イゼベル先生。そう言う大事な事を言うのを、忘れないでくださいよ! もしオレたちが予定を入れていたら、どうしてくれるんですか!」
「悪かった・・・。本当に悪かった・・・。だからその、鬼気迫る表情をするな」
「誰のせいだと思ってるんですか? 他にないですか? 他に言い忘れていることはないですか? 今ならまだ許しますよ」
「ねぇよ。特に2人に言うようなことはねぇよ」
「・・・そうですか」
「今日はもう解散してもいい。帰りは気を付けて帰れよ」
「「はい」」
オレとサラサ様は学園に戻り寮に戻る。
7月23日。大掃除。6月中にあった職業体験と運動会は、大怪我もなく無事終了。職業体験の最後は、キマイラの討伐をした。サラサ様がかなりやる気を出していた。やる気を出していたのはいいが、毒でジワジワとキマイラを殺したのは。ちょっと酷いと思った・・・。運動会は3位で終わった。徒競走で負けたっと言うより、他の競技で負けていたと言うべきだな。なお、オレは3年連続で徒競走1位を取ったので。表状を貰った。この先3年連続徒競走1位が、出るかは分からないらしい。
「去年は無理だったけど。今年は3人で大掃除だね!」
「そんなに嬉しいですか?」
「嬉しいよ。この3人が一番楽しいからね。それに去年は大変だったよ。ラザがいなかったらから、エメリーに色んな人が殺到したんだよ」
「何でオレがいると殺到しないんですかね。アレですか。オレはイゼベル先生に鍛えられてるから、近づくと怪我すると思われてるんですかね?」
「それが一番の理由ですね。一昨年も実は少し殺到してたんですよ」
「えっ? オレはそんなの知りませんよ」
「だろうね~。あの時はラザがゴミ捨てに行ってる間だけ、エメリーに殺到したからね。ラザがいない所だと、殺到してたり目線が刺さる事もあったね」
「・・・オレはエメリー様の番犬か何かですか?」
「番犬でしょ。どう見てもラザは番犬だよ」
「エディスさん。いくら本当のこととは言え、そのまま率直に言ってはいけませんよ。ラザさんが番犬みたいに、私たちと一緒にいる。ではなく。ちゃんと遠回しに言わないといけませんよ」
「エメリー様。エディスさんより酷い事を言っていることに、気付いてください」
「冗談ですよ。ラザさんを番犬ではなく、良き友ですよ」
「だといいんですが」
エメリー様って、たまに言い方がキツイ事を言うからな・・・。場合によっては背筋が寒くなるんだよ・・・。
「ねぇラザ。今年はラザの家行っていい?」
「去年は来なかったのに、今年は来るんですか?」
「あれ? 行ってほしかった?」
「全く。来られると、こっちは休めないんですよ・・・」
「それってエメリー様たちの事でしょ。アタシが行っても特に平気だと思うけど」
「平気と言えば平気ですが。で、今年はエメリー様とエディスさん。そしてサラサ様もですか?」
「そうですね。サラサも行きたいと言ってましたね。ラザさんの家に行ってもいいんですか?」
「断ってもどうせ来るんですよね。でももっと早く言ってほしいですね。手紙で両親に伝えることが出来るので」
「そこは大丈夫だよ。もう手紙を送ったから」
「はい!? いつの間にか手紙が送っていたんですか!」
「5月ぐらいに送りましたよ。返事は「はい」の一言だけでしたけど」
親父。もう少し書く事があるだろ。「はい」だけは駄目だろ・・・。
「・・・いつ家に来るんですか?」
「8月1日だよ。そこから大体2週間はいるつもりだけど」
「2週間もいるつもりですか・・・。家の手伝いをしなくていいんですか?」
「貴族の縁を手に入れる事が、一番の家の手伝いだと思うよ」
「流石商人の娘。変な所で商人魂が出てる」
「そうでしょ。まぁ上手く縁を持てればいいんだけど、中々難しいんだよね~」
「そう言えばエディスさんって、何処の商会の娘なんですか?」
「ノーラス商会だけど」
「ノーラス商会!? あの大商会!? マジかよ・・・」
「そう言えばラザには、一度も言ってなかったね」
「私も初めて聞いた時は驚きましたよ。ノーラス商会は、色んな分野の商品を扱っています。食材、食器、家具、道具など。今力を入れているのは、食器ですよね」
「うん。低予算で白のコップを作れないかを、考えてるんだよ。低予算で出来たら、儲けることが出来るよ!」
「そうなんですか。頑張ってください」
「うん。頑張るよ。ところで、今年も終業パーティーは出ないの?」
「出ませよ。1回出たんですから」
「やっぱりで出ないんだ。今年で最後だよ。最後くらい出てもいいと思うけど」
「嫌ですよ。行っても楽しく無いんですよ」
「・・・終業パーティーと今の状態、どっちが楽しく過ごせますか?」
「そりゃあ今の状態の方が―――」
オレは今すぐに口を塞ぐ。
「ふ~ん。今の状態の方が楽しいんだ~」
「ラザさんは素直じゃないですね」
「何ですかその目は? そんな優しい目で見ないでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか!」
くっそ。まさかこの2人にも弄られるとは・・・。このまま弄られることは無いよな?