第72話 実力が
朝ご飯を食べ終わったら、食器を片付ける。少し休憩をしてからイゼベル先生の家から出る。オレは男子寮に帰ろうとしたが、エメリー様に「折角のなので、このまま買い物に行きましょう」と言われ、オレは男子寮に戻れず、一緒に買い物に行く。
数時間後。買い物は終わり、オレたちは寮に戻る。帰る途中、いつもの屋台を見つける。オレは屋台に寄ってから帰る、っと言うと。何故かエメリー様たちも付いてきた。
「おういらっしょい! 今日は両手に花ってレベルじゃねぇな!」
「両手に花と言うより、それを超えてますよ。気軽に手を出す相手では無いですよ」
「そうか~。で、いつもの2本か?」
「それと3本追加で」
「あいよ! 銅貨15枚だ」
オレは空間から銅貨が入った袋を出して、袋から銅貨15枚出して店の人に渡す。袋は空間の中にしまう。
「アタシたちの分までいいの?」
「良いですよ。オレとペールだけ食べるのは、申し訳ないので」
「やった」
「あぁ店長。一応言っておきますが。オレの右側にいる2人は、公爵家と第2王女様なので」
「はっはっはっは! ラザは随分と面白いこと言うな! そんな人たちが、俺の屋台で串肉を食べるのか? なぁ嬢ちゃんたち!」
「えぇっと・・・。その何と言いますが・・・」
「自分は公爵家の娘になりますが」
「――――――へ? マジですか?」
「大マジです」
「しししししし、失礼しました!! 知らなかったとは言え、タメ口言ってしまって!」
「気にしてませんよ。ここで自分やエメリーさんが怒れば、ラザ先輩に迷惑かかりますし。何よりも一番被害が出るのは貴方です。たったこれだけでの事で、不敬罪なんて言いません。なので安心してください。このままタメ口で話してください」
「分かり―――、いや分かった」
「それはいいけどさぁ~、肉って大丈夫なの?」
「おぉっとそうだった。・・・大丈夫だな!」
串肉が焼けたら受け取って、オレはペールを呼び出す。その辺のベンチの方に移動して、串肉を食べる。
「んんっ、美味い。塩しかかかってないけど、良い感じに効いて美味い」
「エディスさん。オレと同じような反応してますね。美味しいのは同感です」
「何か今まで損してましたね。今度は違う屋台でも回ってみます」
「美味しい屋台があるといいですね」
「・・・ラザ先輩はどれだけ屋台を回ったんですか?」
「ほぼ全て回ったと思いますよ。ジャガバターも食べたし、わた飴も食べたし。ウィンナーも食べたし、ホットドックも食べましたね」
今思うと。何でジャガバターがあって、ポテトチップスが無いんだろ?
「アタシたちが知らないうちに、色々回ってる・・・。そうだ、クレープって食べたの?」
「ペールと一緒に食べましたよ。美味しかったですよ。時間があったらまた食べに行きますよ」
「ペールも食べたの!? お腹壊さなかったの!?」
エディスさんはペールを見る。ペールはエディスさんの顔を見て、首を傾げる。
「あ、問題は無いんだ。まぁケーキも食べられる時点、クレープも食べられるよね。何でだろ?」
「使い魔だからでは?」
「だったらアタシのミスベルだって食べられるよ」
「そうですよ。ペールっと言うより。アイスフォックス自体は、クリームなど普通に食べても、害が無いかもしれません」
「何か変わってるよね~。食べ終わったし、帰ろっか」
ペールの串を持って空間の中にしまう。ペールはオレ首の後ろまで来て、マフラーを巻くように座る。オレたちは歩き出し、学園に戻りオレは男子寮に戻る。
6月中旬。午後の授業。オレたちは王都内にある冒険者ギルドにいる。イゼベル先生はギルド職員と話し、ギルド職員は何処かに行く。オレとサラサ様は、依頼書が貼ってある掲示板の方に行く。
「色々ありますね。ラザ先輩はどの依頼を選ぶのですか?」
「そうですね・・・。先ずは自分の実力が通じる依頼を選びますね。例えばこのベア―討伐とか」
「ベアー討伐ですか。これはこれで難しいと思いますが」
「そうですかね。気配遮断を使って、後ろから斬ればいいと思いますが」
「それはラザ先輩みたいな人しか出来ませんよ」
「そんな事は無いと思いますが。サラサ様はどの依頼を選びますか?」
「自分は・・・。このキマイラを選びます」
「ベアーより難しくないですか? しかも毒付きですよ」
「自分の毒とキマイラの毒がどっちが強いか、それを競いたいのです」
「どうやって競うんですか? まさかサラサ様の身体の中に毒を入れる。何てことは言いませんよね?」
「・・・・・・」
「止めてください! 何でそんな危険な事をするんですか!?」
「やりません。やりませんよ」
コイツ。オレかイゼベル先生がいなかったら、絶対にやっているぞ・・・。
「―――早速選んでるのか」
イゼベル先生の声が聞こえて、イゼベル先生の方を見る。イゼベル先生以外に、知らない人が2人いる。
「こっちの2人が今回同伴してくれる、冒険者だ」
「初めまして、ラザです」
「サラサです」
「おれはクレラン。こっちは・・・」
「・・・・・・シア」
シアさんはクレランさんの後ろに隠れる。
「あぁー、シアちょっと恥ずかしがり屋だから。初対面の人の時はいつもこうでな。あまり気を悪くしないでくれ」
「大丈夫ですよ。その程度で気を悪くすることは無いですよ」
「同じく」
「悪いな。で、早速どの依頼を受けるんだ? 依頼は1つだけの話だけど、どれか1つに絞れるか?」
「オレはベアー討伐をやりたいんです」
「自分はキマイラ依頼をやりたいです」
「「――――――ブフッ!!」」
何かクレランさんとシアさんが吹き出したぞ。
「ちょちょちょちょ、何でそんな依頼を受けるんだ? ベアーなら何とかなるけど、キマイラはちょっと・・・」
「ん。キマイラを狩る実力がない。もうちょっと弱い魔物を選んでほしい」
「えぇ・・・」
「オメェーらは一応、Bランクだろ。キマイラくらいなら殺せるだろ」
「イゼベルさんは知らないんだっけ。最近魔物ランクを見直したから、色んな魔物のランクが上がったんだ。キマイラに関しては、Cから一気にAに上がったよ」
「あのキマイラが? 雑魚にしかみえねぇんだがな」
それはきっと、イゼベル先生みたいな人だけですよ。
「っという事なので、もう一度選び直してくれ」
オレとサラサ様は依頼書を見て、どの依頼を受けるかを見る。