第7話 被疑者
数時間後。召喚した使い魔と遊び、一応仲良くなった。
「よし、大体こんなもんだろ。さて召喚した使い魔を戻し方だが。戻すと言っても、一時的に家に帰るだけで再度呼び出す事も出来る。戻すときは使い魔の名前を呼んで『戻れ』か『リターン』と言えばいい。逆に呼び出すときは使い魔の名前を呼べばいい。やってみろ」
イゼベル先生にそう言われ、各自使い魔を戻したり呼んだりする。オレもやってみる。
「ペール、戻れ」
そう言うとペールは、ポンッっと音を出しながら消えていった。
「ペール」
ポンッっと音を出して現れる。
「クゥ!」
ペールはオレに抱き着いてくる。オレは抱き着いてきたペールを撫でまわす。
意外とジャンプ力がある。ん?
ペールはオレの首の方に登ってきて、オレの後ろ首にお腹を置く。まるでマフラーを巻くように座る。
まるで狐のマフラーみたいだな。でもこれはこれで良い・・・!
「・・・ねぇラザ。何かズルくない?」
「「「「「(確かに)」」」」」
「そうですか? エディスさんの狼だって、モフモフですよ」
「そうじゃなくって。そのマフラーみたいになっているのが、ズルいって言ってるの!」
「そう言われても・・・」
「いいなー・・・」
「―――オメェーら。今日の授業は終わりだ。エメリー、エリオットはすぐにわたしの所に来い。それ以外者は着替えて教室で待機してろ。解散」
エメリー様とエリオットはイゼベル先生の所に行く。オレ含め生徒たちは男女別の更衣室で着替えて、教室に行って待機する。
「全員いるか? ってエメリーはどうした?」
「エメリーなら『下着』が無くなったって言って、女子更衣室で探してます」
「下着をなくしたぁぁぁ? 一体何やってるんだ・・・。エメリーは下着を探してどれくらい時間が経つ?」
「大体10分くらいです」
「それぐらい探しても見つからないなら、盗まれた可能性があるな・・・。おい女ども、エメリーの下着を盗んだか?」
女子生徒たちは顔を青くして頭を横に振る。
「まぁ盗むわけねぇよな。バレたら物理的に首が飛ぶ。一応男どもにも聞いておく。盗ったか?」
オレ含め男子生徒たちは顔を青くして頭を横に振る。
「だろうな。そもそも無理があるな。男女別の更衣室のドアノブは魔法が付与されている。男子更衣室には男子しか触れないし、女子更衣室は女子しか触れない。さてそうなる・・・」
説明ありがとうございます。それにしても可笑しいなー。確かエメリー様が戻ってきて下着が無くなったっと言って、そこでエリオットを中心として話が進行していったが。何故かここにはエメリー様がいなくて、代わりにエディスさんがエメリー様の状況を少し言って、その後イゼベル先生を中心として話が進行してるな。先生だからこれはこれで良いのか。
「―――ラザ。可能性はほぼ無いが聴くぞ。授業中に気配遮断を使って、女子更衣室に行ったか?」
「行ってませんよ。いなくなっていたら、エメリー様とエディスさんに気付かれますよ」
「うん。アタシとエメリーなら気付いているね」
「そうだろうな。オメェーら2人は何故かラザを見てるからなー」
「はい?」
「いやだって。何かすぐに消えそうだから。つい」
「授業中は消えたりしませんよ。話してまだ数時間ですが。オレを何だと思ってますか?」
「そ、それより。早く犯人を見つけないと!」
「も、戻りました・・・」
教室にエメリー様が入ってきた。が、服装は練習着のままだった。
「その様子だと、まだ見つかってねぇようだな」
「はい・・・」
「全く情報がねぇーな。このまま続けば明日明後日も続きそうだな・・・」
「―――あの。おれはラザが怪しいと思います」
「はぁ?」
1人の男子生徒がオレを被疑者にしようとしている。
「いやいや話聞いてました? オレはほぼエメリー様とエディスさんと一緒にいましたよ」
「それはあり得ない。エリオットが精霊を召喚した時に、おれ含め皆エリオットの方に行ったのに、お前はエリオットを見向きもしなかったじゃないか。エリオットに集まっている時にお前は、気配遮断を使って女子更衣室に行って中に入り、エメリー様の下着を盗んだだろ!!」
コイツ馬鹿だろ。
「本当に人の話を聞いてました? 女子更衣室に入るにはドアを開けないといけないですよね、そのドアを開けるにはドアノブを触らないといけませんよね。でもそのドアノブは男子は触れませんよ。どうやってそれを触るんですか?」
「それはたまたま通りかかった女子生徒に頼んで、中に入っただろう! あるいは窓から侵入しただろ!」
「いやいや・・・。先ず前者の方ですが、先ず怪しまれますよ。何で男子生徒が女子更衣室に入ろうとしてるのかって。後者に至っては、中はどうなっているかは知りませんが、換気するために魔法陣は設置してると思いますが。多分窓は無いですよ」
「ラザさんの言う通り。女子更衣室には窓は無いです」
「ほら。何で貴方はオレを被疑者にしたいのかは分かりませんが、貴方が一番怪しいですよ」
「なっ、何を言っているんだ!?」
「オレは見ましたよ。貴方が具合が悪そうに、イゼベル先生と話していたところを」
「あぁそれなら憶えてるぞ。確か「具合が悪いので、保健室に行っていいですか?」って言って来たな。本当に具合が悪そうだったから、保健室に行かせたが・・・」
「おれはちゃんと保健室に行きました!」
「じゃあ保健の先生に聞きましょうか。行っていたら先生も貴方の事を、憶えていると思いますよ」
「・・・ッ!」
「あぁラザ。その保健の先生はな・・・、もう帰宅しているんだ・・・」
「えっ・・・。帰宅して・・・る・・・?」
「そうだ」
そんな事ある?
「っ・・・、ぁはははは・・・。ハハハハハハハハハ!! これでおれが被疑者がどうか分からなくなったなぁぁぁ!!」
コイツ・・・。
「ん~・・・。なぁちょっといいか?」
「ハハハハハハハハハ! 何だよエリオット、まだオレを疑っているのかぁ?」
「いやさぁ。ギアは具合が悪くて保健室に行ったんだろ」
「そうだ!」
「じゃあ何であんな早く戻ってきたんだ?」
「――――――っ!? な、何を言っているだよエリオットは・・・」
あ、もう終わりだな。
「いやだってさぁ。俺もちょっとギアを見たけど、かなり具合が悪そうに見えてさ。あれは早退かなって思っていたけど・・・。そうしたら数分で戻って来ていたから、実は大したことないんじゃないかなって」
「・・・・・・」
ギアって奴は黙る。
「ほぉぉ・・・。つまり何だ。お前は具合が悪そうに装って、わざと保健室に行く振りをしたのか・・・。随分と演技が上手いじゃねぇか・・・、えぇ?」
「な、なにを言ってるんですか先生・・・。おれは本当に具合が悪く・・・」
「ギア! 今からお前の荷物を確認させてもらう! 拒否権は無しだ!!」
イゼベル先生はすぐにギアって奴の所に行って、カバンやズボンなど物が入れられるような所を確認する。
「――――――あったぞ。エメリー、これはお前のか?」
「は、はい・・・」
エメリー様は顔を赤くする。
そりゃあ誰だって顔を赤くする。上の下着ではなく下の下着なのだからな・・・。
「あのイゼベル先生・・・。その下着はギアさんに渡してください」
「えっ・・・」
それを聞いたギアって奴は、何故か嬉しそうにする。
「はぁ? 何故渡す必要がある?」
「―――好きな人でも無いのに下着を触られるのが心底嫌で、正直それを洗った後でも身に付けたくもないです。それに貴方が私の視界に入ったら悪感しますし、そのまま勢いで気絶しそうなので、今後私の視界に入らないでください。いいですか?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
エメリー様以外はクラス全体が青ざめる。
「お前・・・。もう少し言い方って言うものがあるだろ・・・」
「いえ、この場合は素直に言わないと駄目な気がしました」
だからと言って、素直に言いすぎだと思う・・・。ここまでする必要があったのか?
「本人がそう言うなら。ほらギア」
ギアって人は無言でエメリー様の下着を受け取る。
「本当は使い魔の届出書の説明をする気でいたが・・・。この馬鹿のせいでおじゃんになった。今からプリントを配る」
「あっ、イゼベル先生。私が代わりに配ります」
「そうか。ならすまないがわたしの代わりに配ってくれ」
そう言ってイゼベル先生はどっかからプリントを出して、それをエメリー様に渡す。
「それを配り終わったら、今日は帰っていい。エメリーは後で職員室に来い」
イゼベル先生はギアって奴を連れて職員室に行く。
何か疲れたなー・・・
オレは首に巻かれているペールの頭を撫でる。
「・・・ラザは首がいたくないの?」
「意外と痛くないんですよ」
「「「「「(痛くないんだ・・・)」」」」」
「く、配りますよ」
エメリー様はプリントを配っていく。全員分配り終わったら各自帰って行く。オレはエリオットの方に行く。
「エリオットさん。先ほどはありがとうございました」
「あぁいいよ。俺はただ疑問に思ったことを言っただけだぜ。それじゃあな!」
エリオットは友達と一緒に帰って行く。自分の机に戻ってプリントをカバンにしまって、カバンを持って男子寮の自室に戻る。