第66話 変異種
5月1日。別校舎の冒険科の教室にて。
「今年は1年生が来てくれるのでしょうか?」
「さぁ? こればっかりはオレには分かりませんね。去年はサラサ様が来てくれましたが、あれは奇跡だと思いましたよ。冒険科は人気無いので・・・」
「そうですね・・・。去年の自分は奇跡だったのですね」
「奇跡と言うと、オレも奇跡に含まれるでしょうね」
話ながら待っていると、イゼベル先生が入ってくる。1年生がいないかを、確認するが1年生の姿は無かった。
「今年はいないようですね」
「来年は転科確定ですね」
「まぁ普通はこんなもんだがらな。授業を始める前に話すことがある。卒業試合の代表は勿論ラザだ。それによりクラス代表にはなれない。解ったか?」
「解りました」
「次は『職業体験』だ。2人も分かっているが、職業体験は3年生の6月にやる事になっている。ただ今回は3年生は、ラザ1人だけになる。そうなるとサラサだけが暇になるだろう。そこでだ。サラサ、お前にも職業体験をさせることになった」
「自分も職業体験をやるのですか? でもいいのでしょうか? 2年生が職業体験に参加しても?」
「許可はもう貰ってある。特に問題はねぇ」
「解りました」
「内容をここで言ってしまうぞ。内容は勿論、依頼を受ける事だ。基本的に討伐系の依頼になるが、特に問題はねぇだろ。受けた依頼の報酬はオメェーらの物だ」
「報酬も貰えるんですか。でも依頼を受けるには、冒険者登録をしないといけないのでは?」
「普通ならそうだが、授業の為に許可は貰っている。それでも文句を言ってくるなら、叩き潰すだけだ」
「叩き潰すのは駄目だと思いますが」
「話て駄目なら暴力しかなくなるだろ。なおわたし以外にも腕が立つ冒険者が、同行してくれる」
「冒険者が同行してくれるんですね。そうなるとあまり無茶な依頼は、受けなくて済むんですね」
「受けてぇなら受けてやろうか? ワイバーンとかコカトリスとかな」
「オレたちが問題なく達成できる、依頼にしてください!」
「分かってる分かってる。オメェーらがちゃんと、達成できる依頼を受けるよ」
大丈夫だろうか? イゼベル先生の事だ。きっと6人パーティで、受けるような依頼を受ける気だ。
「職業体験の話は終わりだ。早速授業を始めるが・・・。どうしたものか」
「? いつも通りにアリーナで模擬戦をすればいいのでは? 座学の方はほぼ終わってますよ」
「そうだが。同じような事の繰り返しで飽きねぇか?」
「「飽きてますよ」」
「だろうな。・・・・・・よし、今回は森に入るぞ」
「森ですか。ここ最近授業で森に入って無いので、いいかもしれませんね」
「同じく」
「ならすぐに森に入るぞ」
オレたちは立ち上がり、教室からでて更衣室で練習着に着替える。更衣室から出て、校門で集まってから森の方に行く。
「この辺なら魔物も出るだろう。いいか、1人で戦うんじゃなく2人で戦えよ。わたしは危険になったら助ける」
「いつもの事ですね。では行きましょうか」
「はい」
オレとサラサ様は前に進む。後ろからイゼベル先生が付いて来る。
「この森に来たのって、いつぶりでしょうか?」
「オレは休みの日にも何かも来てるので、特に久しぶりとかは思いませんが。多分ですが、去年の7月の上旬くらいじゃないですか。あのワイバーンが襲撃した日ですよ」
「あの日ですね。そう言えば、あのワイバーンはどうなったのでしょうか?」
「あの後はちゃんと研究者に渡した。その結果、あのワイバーンは変異種だったようだ。何がどうやってあんな風になったかは知らねぇが、前見たワイバーン以外にも他のも確認されている」
「あのワイバーン以外にもいるんですね。ワイバーン以外にも変異種は?」
「確認されているが、そんなに数はいねぇな。もしかしたらこの辺で出遭うかもな」
「止めてくださいよ。そんな事を言うと、出てくるかもしれないじゃないですか」
「何だラザ。怖いのか?」
「怖いですよ。変異種何て普通種より、強い可能性があるじゃないですか」
「まぁあるな。だがオメェーらなら大丈夫だろ。仮に負けるような事があったら、1から鍛え直しだな」
「それはちょっと・・・。でもそう簡単には出てこないので、安心して先に進めると思いますよ」
「だといいんですけ―――」
オレはベルトに通している、鞘から剣を抜いて構える。すると草むらから、頭が2個あるゴブリンが飛び出してくる。オレはすぐにゴブリンの方に近づいて、頭を狙わず胸の中心部分を剣で刺す。刺した剣を引っこ抜いて、違う場所にもう一度刺す。ゴブリンの動きが止まったら、剣を抜く。
「・・・・・・これって間違いなく、変異種ですよね?」
「あぁそうだな。ゴブリンの頭が2個あるとか、聞いた事ねぇぞ」
「この森で何か異変でも起きてるのでしょうか?」
異変どうか分からないが。このゴブリンはもしかして―――。いや、言わなくていいか。
「もう少し調べる必要があるかもしれねぇが、今のわたしたちは調べられるような道具が無い。かと言ってここで引き返しても、何も分からないままだな・・・」
「もう少し調べてもいいと思いますよ。危険になったらすぐに逃げだしますが」
「お前はすぐに危険な方向に考えるな・・・。まぁ何も分からないままで、騎士団に言っても駄目か。ならもう少し調べて見るか」
イゼベル先生はゴブリンを空間の中に入れる。オレたちは移動して、他に変異種がいないかを探す。