第63話 そこまでオレは
クリス様と研究者っぽい人の試合が始まって、5分くらい経っただろうか。今の所研究者っぽい人が優勢だった。研究者っぽい人は錬金術師と言うべきだろうか? 鉄の塊から攻撃を出してくるし、何なら魔法みたいな事もやる。
「錬金術師ってあんなことも出来るんですね。てっきり石から金に変えるだけかと、思いましたよ」
「お前はもう少し勉強したらどうだ?」
「そう言われましても、あの錬金術はサッパリ頭に入って来ないんですよ」
「ラザさんでも苦手な物があるんですね」
「オレは万能じゃないですよ。苦手な科目は1つや2つありますよ。それに錬金術は特に必須じゃないで、特に気にしてませよ」
「来年から必須にするように、学園長に掛け合うか」
「本当にそれだけはやめて下さい! 卒業出来なくなるじゃないですか!」
「冗談冗談だ。それにしてもあの鉄はスゲェな。あそこまで自由自在に形を変えられるのか」
「クリスさんって勝てるのかな? 何か一方的に押されてるよ」
「難しいだろうな。クリスは魔法が得意だ。近距離ではなく遠距離で、効果が発揮するのが多い。大してあの錬金術師は違うだろうな。一見遠距離が得意に見えそうだが、あれだけ自由に形を変えられるんだ。接近戦も得意と考えてもいいだろ」
「・・・・・・さっきから気になったのですが、あの錬金術師の後ろの方にある氷は何でしょうか? 普通なら溶けて消えてるか、割れて消えると思うのですが。全く消えてません。クリス様は何か考えてるのでしょうか? それともあの錬金術師が何か企んでいるのでしょうか?」
「あ、本当だ。確かに錬金術師の後ろの方に氷がある。でもあれってクリスさんが撃ち出した魔法じゃない?」
「でも戦いの中心部分を集中的に見ていたので、あの氷がクリスさんの魔法とは言えませんよ」
「それもそっか。でもいつ使うんだろ?」
エディスさんがそう言うと、錬金術師の後ろにあった氷が動き出す。動き出した氷は錬金術師に向かって飛んで、氷は錬金術師にぶつかる。クリス様は好機を逃さず魔法で攻撃をする。錬金術師は魔法でボコボコにされる。
「クリス様が勝ちましたね。あの氷はクリス様が残していた魔法ですね」
「あんな風に魔法を残せるんだ・・・。でもあれって気付く人は気付くよね?」
「まぁそうだな。今回は相手がちょっとした慢心があったから、気付かなかっただろうな。不自然に残っていたら、それを排除または調査はするな」
「どんな時でも油断をするなって事ですね」
クリス様と錬金術師は退場する。次はナタル先輩とそのお姉さんが出てくる。卒業生側の観客席にいる、モリス先輩たちが応援をする。オレは立ち上がって応援をする。
「ナタルせんぱーい! あれだけ練習したんですから、負けないでくださいよー! 負けたら練習してた時より、もっと速く走って倒しに行きますよー!」
「―――ヒッ!?」
「何でそこで顔を青くするんですか!?」
「「「「「(いや誰だって顔を青くするだろ・・・)」」」」」
「一体何があったかは知りませんが、ナタルが顔を青くするほどのお相手なのでしょう。その男はいつか倒しに行くとして。ナタルがこの学園で、どこまで強くなったかを見ないとね」
「お姉様。それはおやめになった方がよろしいかと」
「あら何で?」
「その男子生徒は、イゼベル教師に教わっています」
「・・・・・・え? 嘘ですよね?」
「本当です」
ナタル先輩のお姉さんは、イゼベル先生の方を見る。
「イゼベル先生。何か先生を見てますが、知り合いですか?」
「知り合いと言えば知り合いだな。一時的に鍛えてやっていたな」
「弟子ってやつですか?」
「まぁそう言われればそうだな。手でも振っておくか」
イゼベル先生はナタル先輩のお姉さんに向かって手を振る。ナタル先輩のお姉さんは驚いて、すぐに手を振り返す。
「――――――んんっ! 今はナタルの実力を見ましょう」
ナタル先輩とそのお姉さんは武器を構えて、試合が始まる。オレは一度座る。
「ラザって意外と応援するんだね。あんまり応援しないと思ったけど」
「応援くらいはしますよ。そこまでオレは薄情な人間じゃないですよ」
「でもロザリーさんとクリスさんには、応援しなかったよね」
「あの2人に対して応援するのは、恥ずかしいじゃないですか!!」
「そんな理由で応援しなかったの!? 分からなくないけど」
「話を戻しますけど。この試合ってすぐに決着つくのでは? 相手は二刀流ですよ」
「そんなすぐに終わる―――」
するとこちらの方にナタル先輩が飛んでくる。通り過ぎて上の方に上昇する。一度止まって魔法を使って、ナタル先輩はお姉さんに攻撃をする。
「アイツ魔道具を使ってやがるな。あれだけの魔法を使っているなら、魔力回復速度アップと魔力増加を使ってるかもな」
「試合中に魔道具って使っていいんですか?」
「特に禁止されてないが、あまりにも強すぎる魔道具は禁止されている。来年はあの魔道具を禁止されるかもな」
「ちょっとナタル先輩を恨みたくなりましたね・・・」
ナタル先輩は魔法で攻撃を繰り返す。ナタル先輩のお姉さんは、ただ逃げ回るだけで何も出来なくなっていた。それが数分続いてナタル先輩のお姉さんは、木剣を地面に落として両手を上げて降参をする。ナタル先輩は地面に着地する。ナタル先輩はお姉さんの方に行って、何か話してから2人は退場をする。
「やっぱりこうなったか」
「やっぱりって。相手は魔法が使えなかったんですか?」
「ほぼ使えなかったな。ナタルがいる距離まで魔法が届かねぇな。斬撃も未だに飛ばせねぇ・・・。ラザは飛ばせたっつぅのに・・・」
「あれは魔法を使って飛ばしてるので、普通は出来ないと思うのですが・・・」
「・・・何かよく分からない話をしてるよ」
「私たちが会話に入れる隙が無いですね・・・」
この後は各クラスの代表3名の番になる。試合のしかたは3対2のやり方になっている。数時間後。全ての試合が終わり保護者はこのまま校門の外に移動して、2年生は一度クラスに戻って少ししたら昇降口前の方に行く。
サラサ様は・・・。いた。
オレはサラサ様を見つけて、サラサ様の方に行く。
「ラザ先輩こっちです」
「―――やっとこっちまで来れた・・・」
「お疲れ様です。姉上は試合に勝ちましたか?」
「勝ってましたよ。苦戦はしてましたけど」
「姉上はもっと苦戦すればいいのですよ。日ごろから自分を弄っているので、それくらいの苦戦をしてくれないと、こっちが困ります」
何か色々恨みを持っているんだろうな・・・。
「ナタル先輩の方はどうでした? 相手は姉でしたので戦いづらいと思うのですが」
「そんな事は無かったですよ。ナタル先輩が一方的に攻撃をしてましたよ」
「練習の成果がでたのですね」
アレは練習の成果なのか?
待っていると卒業生が来る。1年生と2年生は拍手で見送る。待っているとナタル先輩たちが来る。
「「卒業おめでとうございます」」
「うん、ありがとう。来年はラザくんがこうなるね」
「そうですね。ナタル先輩。良かったですね、お姉さんに勝つこと出来て」
「えぇ。まさか一方的になるとは思いませんでしたわ」
「本当に良かったですよ。ナタル先輩が負けいたら。休みの日にナタル先輩を探して、また練習をしなくて済みますよ」
「わたくしも勝ててホッとしましたわ・・・」
「1年生が入ってくれるといいわね」
「はい。自分も後輩に教える日を楽しみにしてます」
「入ってくれるといいのですがね。来年はイゼベル先生も教師を辞め事になってますが」
「「「「「「「え?」」」」」」」
「あれ? 知りませんでしたか? なら説明しますね」
オレは先輩たちに説明をする。
「し、知らなかった・・・。イゼベル先生は来年で教師を辞めるんだ」
「しかも辞めたら冒険者に復帰するのね。一緒に仕事したいわね」
「お姉様がイゼベル教師を知っている理由が、今分かりましたわ」
「今まで気付かなかったんですか?」
「そこまで話してはくれませんでしたわ。イゼベル教師は、元果て無き夢のクランメンバー。でいいのですね?」
「はい。冒険者に復帰したら、またそのクランに戻るようですよ」
「果て無き夢ねぇ・・・。あたしたちも入ってみる?」
「えぇ~無理だよ~。ぼくが入っても足で纏いだよ・・・」
「あんたはまだそう言うの!? いい加減にしなさい! 何度も何度もそう言って―――。ってちょっと混んできたわね。じゃあね2人とも。何処かで会ったら食事とかしましょうね」
先輩たちは前に進んで行く。
「・・・3年になったら、自分は他の科目に転科します」
「そうした方がいいですね」
「―――いたいた。やっと見つけたよ」
クリス様とロザリー様がこっちに来る。
「卒業おめでとうございます」
「うん、ありがとう~」
「ありがとう。来年はラザたちだな」
「はい」
「あぁそうだ。話は聞いたぞ。イゼベル先生は来年で教師を辞めるようだな」
「エメリー様たちから聞いたんですね。イゼベル先生の次女の代わりみたいですね」
「らしいな。・・・心配は無いと思うが、3人を頼むぞ」
「その時になったら何とかしますよ。ロザリー様はそのまま騎士に?」
「そうだ。親には反対されたが、何とか押し切ったぞ」
「アハハハ・・・。クリス様はどうなるんですか?」
「クリスはこのまま魔法騎士団に入団になっている。頻繁に会えなくなるな・・・」
「そうですか。ところで、2人はいつまでじゃれ合ってるんですか?」
「ん? ボクが飽きるまでだよ」
「姉上。そろそろ行かないと邪魔になりますよ」
「ハイハイ。じゃあね2人とも。サラサはまたすぐに会えそうだけど、ラザはそう簡単には会えないよね」
「騎士にならない限りそうですね」
「じゃあいつかまた会おうか」
そう言って2人は前に進む出す。卒業生たちの見送りが終わったら、教室に戻って春休み注意事項を聞いて寮に帰る。