第62話 いいんですかねぇ
3月20日。今日は3年生の卒業試合。2年生は第1アリーナの観客席に座る。
「いいんですかねぇ・・・。クラスごとに座らなくて」
右隣にイゼベル先生。左隣はエメリー様がいて、更に左にはエディスさんがいる。
「いいんだよ。そういうのは卒業式だけでいいんだ」
「そうだよラザ。そんな事をしたら楽しめなくなるよ」
「それもそうですけど・・・。そう言えば、保護者以外の外部の人って来るんですか?」
「来ないな。何せ人が多い。こんな人が多いのに保護者以外の人が、座れるものか」
「やっぱり観客席が足りないんですね。ところでエメリー様以外にも、家族って来ているんですか?」
「生憎両親は仕事が忙しくてこっちにこれません。昨日は仕事で来ていたのですが、今日はこれそうにもありません」
国王様方は忙しすぎじゃないですか?
「でも代わりにメイドの人が来ているので、問題はありませんよ」
「それでも親が来てくれないのは、ちょっと悲しいですよ」
「そうですね。それより始まりますよ」
オレは今年の代表生徒を見る。ロザリー様とクリス様は勿論いる。後は知らない先輩方だった。冒険科はナタル先輩が出てる。
「やっぱりナタル先輩が代表になったんですね」
「あぁ3年の中でナタルが一番強いからな。それにとある冒険者がナタルを指名していたからな」
「それってナタル先輩のお姉さんですよね」
「何だ知っていたのか。今回の冒険者側からはナタルの姉が来る。しかもその姉はクランに所属していて、クランは【果て無き夢】に所属している」
「果て無き夢って何だっけ?」
「果て無き夢って言うのは、冒険者のクランの1つだ。他にもクランは存在しているが、果て無き夢は他のクランより人が多い。何故そんなに人が多いのかと言うと、過去に突破不可能と言われていたダンジョンを、6人パーティが突破したんだ。それを聞いた冒険者たちは、仲間に入りたいとかクランに入ってほしいって事になったんだ。ただ何度もそんな事があるから、当然その6人パーティは困る。そこでパーティリーダーがクランを作った。それが果て無き夢だ」
「何か凄いクランだね。エメリーから聞いたけど、イゼベル先生も果て無き夢にいたんだよね」
「確かに果て無き夢にいたな。色々楽しかったな、とんでもねぇことをする事が多かったからな。だが最近ちょっと落ち目になってきてるな」
「それって何があったんですか?」
「今のクランリーダーが、あまりいいリーダーじゃねぇんだよ。わたしが加入した時はまだ平気だったが、わたしが抜けた後から落ち目になって来たな。わたしが抜けてから、一気に抜けていったらしい。今でもクランがまだあるのが驚く」
「何でその事を知っているんですか?」
「何回かクランにいた人と会っているからな。その時に話を聞いているんだ」
「何かそのクランは消えそうだね・・・。大丈夫なのかな?」
「大丈夫じゃねぇか? わたしは来年には冒険者に復帰して、クランに戻るからな」
「「え?」」
「冒険者に復帰して、クランに戻るんですか。1人でもやって行けそうですか」
「1人でもやっていけるが、やっぱり仲間がいるとそれだけ動きやすい。何ならラザも加入するか? お前ならやっていけるだろ」
「あぁ~考えておきます」
「ってちょっと待って! イゼベル先生は来年で教師を辞めるの!?」
「聞いてないですよ!」
「・・・イゼベル先生。2人に言ってなかったんですか?」
「言うのがメンドクサかったからな。わたしは3年契約だからな。止める時は引継ぎをなどをやってから、教師を辞めることになっている」
「は、初めて聞いた・・・。イゼベル先生は教師を辞める事になっているんだ・・・」
「私も初めて聞きました。でも何で3年契約なんですか?」
「ラザに話したが、わたしには2人の姉貴がいて、その次女の姉貴が教師のままだったが。次女の姉貴が体調を悪くなってしまったから、わたしが代わりに教師になったんだ」
「そうなんですね。教師をそのまま続けないのですか?」
「教師なんて言うのはメンドクセェーだろ。なら冒険者に復帰する。それしか金が稼げねぇからな。わたしの話より、試合でも見たらどうだ? 丁度お前の姉だぞ」
イゼベル先生にそう言われ、オレたちは試合を見る。
「ロザリー様って騎士科の代表何ですよね? クラス代表ではないのですか?」
「原則として、騎士科の代表とクラスの代表の両立は出来ません。それは魔法科と冒険科も同じです」
「仮に両方代表にすると、ちょっとした差別が生まれるからな。だから1つにしたようだ」
「じゃあオレは来年はどっちかになるんですね」
「そうだな。来年はお前は冒険科の代表だな。っと言うよりお前しかいねぇ」
「デスヨネー・・・」
「相手の騎士ってどれくらい強いのかな?」
「部隊の隊長をしてるので、それなりには強いと思いますよ」
「強いだけじゃねぇが。ロザリーが戦っている騎士は、騎士団の中で中の上くらいだろ。合ってるか知らねぇけど」
「じゃあ姉さんがそれに勝てば、隊長になれるくらいの実力があるのでは?」
「そいつに勝ったからと言って、隊長になれるわけじゃねぇよ。隊長になるのに色々必要なんだよ」
「そうですよね。あ、姉さんが勝ちました!」
試合はロザリー様が勝った。ロザリー様と騎士の人は退場して、次はクリス様と何か研究者っぽい人が出てくる。