第61話 浮かぶ
1週間後。午後の授業、第3アリーナにて。
ナタル先輩のお姉さんとまともに戦えるために、1週間練習を続けてきたけど。人ってここまで上達するものなのか? もう普通の人なら目で追えない気がするが、普通に目で追えること出来るけど・・・。っと魔法が来る。
ナタル先輩が撃ってくる魔法を避ける。1つの魔法だけではなく、複数の魔法を使ってオレを倒しにきてる。避けてる途中で雷が降ってくる。オレはそれも避けながら、ナタル先輩に近づく。ナタル先輩に近づいてきたら、木剣で首元に寸止めをする。
「オレの勝ちです」
「参りましたわ」
木剣を下ろして、ナタル先輩から離れる。
何か雷すら避けられるようになってる。まぁ雷魔法だから避ける事が出来るのだろう。雲から落ちてくる雷は、流石に避けれない気がする。
「少し慣れてきてますね。もう少し速く走りましょうか?」
「お願いしますわ」
すると右肩に右腕が置かれる。左を見るとイゼベル先生がいて、肩を組まれていた。
「―――何か1週間楽しそうな事をしてるじゃねぇか? 何でわたしをのけ者にするんだ?」
「イゼベル先生は加減を知りませんよね? いきなり見えない速さで走られても、ナタル先輩は反応出来ませんよ」
「誰がいつ加減が出来ねぇって言った? おいナタル。次はわたしが相手してる。安心しろ、ラザと同じようにやる」
「お、お手柔らかにお願いします・・・」
これはちょっとヤバいぞ。ヘタしたら気絶させられるぞ。
オレはイゼベル先生の右腕をどかして、2人から離れてモリス先輩たちの所に行く。
「お疲れラザくん。何かイゼベル先生がラザの代わりにやってるけど、あれって大丈夫かな?」
「イゼベル先生は教師なので、ナタル先輩が死亡することは無いと思います。死亡させたら一発で捕まるので」
「そうだけど・・・。何か死なないギリギリのところで、色々やると思うけど」
「・・・それはちょっと知りませんね。クリオ先輩とサラサ様は練習中ですか?」
「うん。何かクリオが一方的にやられてるけどね」
「っと言うより、中々近づけてませんね。近づけば剣や斧の攻撃、かと言って距離を取っても矢と氷魔法と毒魔法の攻撃。何とも嫌な戦い方ですね」
「サラサさんに勝つにはどうすればいいんだろ?」
「オレの場合は近づいて戦いますね。あるいはこっちも魔法を撃って、数で勝負しますね。後は空を飛んだり地面に潜ったり、ですかね」
「地面に潜るのはちょっと無理だと思うよ」
「そうですね。でも空は飛べると思いますよ」
オレは風魔法で身体に風を纏って、少し浮かぶ。
「えっ!? ラザくんいつからそんな事出来るようになったの!?」
「2年生になる前に使えるようにしたんですよ。今でも練習中ですがね。少しだけですが、一方的に魔法を撃つことが出来ますよ」
「浮かぶって怖くないの?」
「最初は怖かったですよ。でも慣れたらかなり楽しいですよ。空を飛べる動物や魔物は、いつもこんな景色を見てるんだ。ってなりますね」
「慣れると怖くないんだ・・・。ぼくも出来るかな?」
「あまりオススメはしませんよ。風魔法を継続的に使うので、すぐに魔力が無くなります。現にこれだけでもかなり魔力を使ってます」
「そうなんだ。ん? でも浮遊魔法があったよね。それを使えばいいんじゃないかな?」
「確かに浮遊魔法がありますが。あれはまだ使えないので、風魔法で代用してるんですよ」
オレは風魔法を使うのを止めて、地面に着地する。
「浮遊魔法が使えれば、かなり魔力消費を抑える事が出来るんですがね・・・」
「出来ないものはしょうがないよね」
「―――ラザ先輩! さっきの何ですか!? 少し浮いてましたよ!」
こっちにサラサ様が来る。遅れてクリオ先輩も来る。
「一体どうやって浮いていたのですか? 教えてください!」
「え、聞きたいのですか? でもさっきまで模擬戦してましたよね。魔力の方が大丈夫なんですか?」
「多分大丈夫です! さっきの教えてください、お願いします!」
サラサ様は頭を下げる。
「教えるので、早く頭を上げてください」
「ありがとうございます!」
サラサ様は頭を上げてお礼を言う。
「使い方は簡単ですよ。自分の身体に風を纏って、その纏った風で身体を浮かせます。モリス先輩には言いましたが、これはかなり魔力を消費します。魔力が無くなった途端に地面に落ちます」
「それってかなり魔力が必要になるんじゃない?」
「かなり必要ですよ。普通の人がやったらすぐに魔力が無くなりますね」
「風を身体に纏って・・・」
サラサ様は身体に風を纏う。身体に風が纏ったら少しづつ浮かぶが、すぐに地面に着地する。
「・・・もう地面に足がついてしまいました」
「あぁ魔力が無くなったんですね。気分は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「こう考えるとラザくんは凄いね。風魔法で身体を風で纏って飛んで、その後魔法とか使って戦うんだよね?」
「そうですね。最初の内はすぐに魔力が無くなって、よく地面に足が着きましたね。それを繰り返していたら、魔力量も増えましたね」
「って事は、魔力量を手っ取り早く増やすなら。今みたいなことをすればいいのね」
「1つのやり方ですね。仮にやるなら何人か人がいた方がいいですよ。空中にいる間に魔力が無くなって落ちます。その時に誰かにキャッチしてもらう必要があります」
「そうなのですね。ラザ先輩は今まで誰とやっていたのですか?」
「去年だったら、3年生の先輩方に協力してもらったのですが。2年生になってからは、イゼベル先生に協力してもらってますね」
「やっぱりイゼベル先生に協力してもらってるんだ・・・」
「一番安心できる人ですよ。サラサ様、もし続きをやるのでしたら、魔力ポーションをあげますよ」
「いいのですか? 魔力ポーションは少し高いものですが」
「自分で素材を調達して、自分で調合してるので。タダですよ」
「では遠慮なく貰います」
オレは空間から魔力ポーションを出して、サラサ様に渡す。サラサ様は魔力ポーションを受け取って、蓋を取って飲む。飲み終わったら空間の中にしまって、風魔法で浮くように練習をする。