表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/177

第6話 召喚

 3週間後。放課後図書室にて。


 入学して3週間たった。その3週間でエリオットを尾行していたが、特に攻略対象と話そうとしてなかった。その攻略対象を高嶺の花として見ているから、声をかけようとはしてないんだろう。最も身分差があり過ぎるのも原因なのか、あるいはオレと友達になってないからか、攻略対象と会話が出来てないのか? 仮にそうならこれから起きるストーリーイベントと、学校生活を専念させてもらおうかな。丁度ストーリーイベントが4月29日に起きる。特に死者は出ない。が、オレが犯人に仕立て上げられる可能性がある・・・。

 4月29日に起きるイベントは、エメリー様の下着が盗まれる事だ。盗んだ犯人はウチのクラスにいるが、名前と顔が思出せない。まぁその時なった時に考えよう。それにしてもゲームやっている時は何も思わなかったが、今思うと王族に対して盗みを働くとか。正気には思えない。よく処刑や終身刑にならなかったな・・・。でも学園からは去ったな。とにかく、オレが疑われないようにしないよな。


 オレは少し身体を動かす。


 ―――そろそろ目の前の事を終わらせないとな・・・。


 オレはチラッとある女性を一度見て、すぐに違う所を見る。


 ・・・バレてる? バレてるかな? バレてますね。そう言ってくださいよ。クリス様・・・! オレが一体何をしたって言うんですか・・・!?


 オレを見ていたのはリトリ公爵家のご令嬢、クリス・アリー・リトリ様だ。


 いやいやいや、本当に何ですか!? オレの心は一般庶民ですよ! それ以上見られると死んじゃいますよ!!


 オレは頭を下げる。多分少しづつ顔が青くなる。


「キミ・・・、大丈夫・・・?」


 オレは驚きながら声がした方を見る。


「は、はい・・・」

「いきなり声をかけてごめんね。ボクは2年生のクリス。クリス・アリー・リトリ。気軽にクリスって言ってね。キミがラザ、だよね?」

「はい。ラザ・メルト・カルバーンです・・・。それでオレに何か御用で?」


「うん、同じクラスのエメリーを知ってるよね?」

「はい」

「エメリーからね、凄い人がいるって聞いてね。キミは気配遮断が出来て、属性魔法の8つをすぐに使えたんでしょ」


「そうですね。でも気配遮断に関しては、もうバレていますね。いつから気付いていました?」

「キミが初めて図書室来た時からかな。あ、勿論ボクがいつもここにいるわけじゃないよ」

「えっ・・・。それって最初っから見つかっていたって事ですか?」


 トーマスさんからお墨付きだったのに・・・。


「そうだね。最初はね、何でここでは使う必要がないのに、気配遮断を使っているんだろう。って思ってキミを見ていたんだよ。何か悪さをするんじゃないかってね」

「は、はぁ・・・」

「後々エメリーから聞いて分かったよ。キミは授業以外では気配遮断を使ってる事が。何で?」


「感覚を忘れないようにする事と、上達させる事ですよ」

「ふ~ん・・・」


 あ、絶対にそれだけじゃない。って思われてる。


「―――おーい! クリスはいるかー!」

「――――――ッチ。メンドクサイの人が来た・・・」


 何かトンデモナイ言葉を聞いてしまった。


「ごめんね。ちょっと友達が呼んでるから行くね。また明日」

「あ、はい。さようなら」


 クリス様は呼ばれた人の元に行く。


 ・・・恥ずかしぃぃぃぃぃぃ。


 オレは顔を赤くして両手で顔を隠す。


 ゲームでも意外と綺麗だなー、って思っていたけど。近くで見ると凄く綺麗・・・。あんな事されると普通の人は勘違いするよ・・・。クリス様を呼び出した人には感謝するよ。落ち着くまでちょっと待ってよ。


 それから落ち着くまでに1時間かけて、ようやく男子寮に戻れた。




 4月29日。午後の授業中庭にて。


「よーしそろったな。今からオメェーらにある魔法陣が書いてある、紙を渡す」

「先生。質問いいでしょうか?」

「何だ?」


「何で私たちは練習着に着替える必要があったのですか?」

「答えは簡単だ。オメェーらには『使い魔』を召喚してもらう。使い魔は『精霊界』から召喚される。精霊界については後日話す。その精霊界から召喚した使い魔と契約して、その後は契約した使い魔と遊ぶために、練習着に着替えてもらった。分かったか?」

「分かりました」


「よし。早速渡すぞ」


 イゼベル先生は1人1人に紙を渡していく。終わったら元に位置に戻る。


「召喚する時は魔力を流して『召喚』か『サモン』と言えば召喚される。召喚出来たら、そいつに名前を付ければ契約が出来る。やってみろ!」


 イゼベル先生にそう言われ、各生徒たちは召喚を始める。


「何が出るか楽しみですね」

「そうだねー。アタシはこうなんと言うか・・・。そう! カッコいい使い魔を召喚したい!」

「アバウト過ぎじゃないですか? ラザさんは?」


「そうですね・・・。フクロウ辺り、ですかね」

「フクロウ? 何かカッコよくないよ」

「エディスはちょっと言い過ぎですよ」


「そうかなー」


 ついに来た。ストーリーイベントとエリオットの上級精霊の召喚する日が。実は重なっているだよ、ストーリーイベントと召喚する日が。一応ゲーム通りなら、イゼベル先生に具合が悪いと言って保健室に行くが、保健室に行かないで女子更衣室でエメリー様の下着を盗む。一見オレは関係が無いように思えるが、オレは自己紹介の時に気配遮断が使えると言っていたから、一番最初に疑われる可能性がある。念のためアリバイを作るために、出来るだけイゼベル先生の傍にいようとしたけど・・・。何故かエメリー様とエディスさんと一緒にいる。そのせいか男子生徒から嫉妬の目が痛い。だが同時にアリバイが作れる。


「では、私からやりますね」


 エメリー様が持っている紙は光出す。多分魔力を流すと魔方陣が光るのだろう。


「召喚!」


 エメリー様がそう言うと、紙が盛大に光出す。すぐに光が収まり紙が消えていた。その代りに小さい竜が宙に浮いていた。


「ほぅ、クリスタルドラゴンの子供か。ドラゴンと言うだけで珍しいが、その中でも特に珍しいクリスタルドラゴンが召喚されるとはな。良かったな」

「はい!」


 周りの生徒はエメリー様を見る。ある者は称賛しある者は嫉妬する。


「エメリー。この子に名前を付けたら?」

「名前。名前は・・・ミラワール、貴方の名前はミラワール!」


 クリスタルドラゴンの子供は、名前を貰えて嬉しかったのか。エメリー様の周りを飛びまわる。


「よし次はアタシだ! 召喚!!」


 エディスさんは気合を入れて召喚をする。紙が消えて出て来たのは狼だった。


「カッコいい!! えっとねー、君の名前は・・・、ミスベル!」


 ミスベルと名前を付けられた狼は、エディスさんに近づいてじゃれつく。狼犬の間違いじゃないか?


「最後はラザの番だ―――」

「うおおおおおお! スッッッッゲェェェェェェェェ! エリオットの奴精霊を出しやがった!!」

「す、凄いですよ! 精霊を召喚するなんて!」


「凄いって・・・、俺はただ普通に召喚しただけだよ」


 エリオットの周りに人が集まる。勿論イゼベル先生もそこに行く。


 やっぱり召喚したか。これで攻略対象が全員揃った。この4人あるいは3人の中から誰を選ぶか、それとも誰とも選ばずにこのまま過ごすか。どっちにしろもう少し尾行する必要があるな・・・。


「――――――よしお前の名前はフランシスだ!」

「うむ、今日から(わらわ)の名前はフランシスだ」


 名前も同じだな。そろそろオレも召喚するか。


 紙に魔力を流し召喚の準備を始める。


「召喚・・・」


 紙は光って消える。光が消えると水色の狐が出てくる。


 ・・・あれ狐? フクロウじゃなくて?


「・・・キュ~?」


 水色の狐はオレを見て不安そうな顔をしている。


「あ、あぁそうか。名前を付けないと・・・。」


 名前か・・・。ラザの時はどんな名前を付けていたんだっけ? そもそもラザの使い魔を見たのって、そんなに・・・。


 オレはしゃがんで少し考える。2分くらいで名前が決まった。


「ペール。お前はペールだ」

「キュ!」


 ペールは嬉しかったのか、オレに抱き着いてくる。


 可愛い・・・。この狐可愛すぎる。今までこんな可愛い狐を見た事あった? いや無い。俺は一度も無い。


 オレはそのままペールを撫でまわす。


「―――ラザ。お前がそんな顔をするとはな」

「!?!?」


 オレはすぐに声がした方に顔を向ける。そこにいたのはイゼベル先生だった。


「お前は何処か、追い詰められているような顔をしているから。学園生活に不安があると思ったが・・・。その顔が出来るならわたしの杞憂だったな」


 オレはそんなに追い詰められてる顔をしてたか?


「しかし。まさかそのデレデレの顔を見るとはな! その言う顔を好きな女の前でその顔をしろ」

「・・・・・・」


 オレはペールを触るのをやめて、顔を両手で覆う。


「その状態で話しを聞け。お前が召喚したのは『アイスフォックス』だ。普通のフォックス自体珍しくはないが、アイスフォックスに関しては別だ。アイスフォックスは神出鬼没のお陰で、情報が少ない。いいかラザ。クリスタルドラゴンや精霊も貴重だが、お前のアイスフォックスも貴重だ。研究者や上級貴族共には気を付けろ。何かあったらすぐにわたしの所に来い。分かったか?」

「はいぃぃぃ・・・」

「情けない声を出すな・・・。まぁ無理もないか」


 イゼベル先生は他の所に行く。そしてすぐに他の人が来る。


「いやーラザもそんな顔をするんだね~。ちょっと見せてみ」

「や、止めた方がいいのでは?」

「えぇ~何言ってのエメリーは~。さっきまで見て見たいって言っていたのに」


「エ、エディス! 余計な事を言わないでください!」

「アッハハハハ!」


 2人が喋っている間に、オレは元通りになる。オレは顔を覆っている両手をどかす。


「ありゃりゃ。フツーに戻ってる」

「流石に普通に戻りますよ。それより召喚した使い魔を放置していいんですか?」

「「――――――ッハ!」」


 2人はすぐに使い魔の所に行って、こっちに戻って来る。


 わざわざこっちに来なくても・・・。ほとんどの人が召喚が終わったようだな。後は・・・。


 オレはチラッとイゼベル先生の方を見る。見ると、イゼベル先生と具合が悪そうな生徒と話している。


 あれは・・・。そろそろ始まるのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ