第59話 何処で演技力を
文化祭が終わり、オレは職員室に移動して中に入る。
「揃ったな。んじゃ、再度説明するぞ。おっさんとお2人はこのまま学園から出て、王都の南門の詰所に行く。南門にいる門番たちには、事情を説明してるから。詰所に入って魔法を封じる魔道具を、両手に付けてから南門から出る。その後は道から外れて森に入りお仲間さん会う」
「ならここで集まらないで、詰所で準備をすればよかったのでは?」
「ラザくん。詰所にいる兵士たちが必ずしも味方、って訳じゃないぞ。中には内通者がいるからねぇ~」
「それって去年アンタが学園に侵入した時も、内通者に手引きしてもらったのか?」
「いや、おっさんは堂々と侵入したが。あの時は顔がバレて無かったから、入れたんだよねぇ~。んで、お2人はそのまま幌馬車に乗って合言葉が出るまで待て。合言葉の確認だが、憶えてるかね?」
「『夜道に気を付けて』だろ。・・・なぁラザ。やっぱりコイツ信用出来ないぞ」
「信用できないの分かりますが、ここはルイスさんを信用しないと駄目ですよ」
「そうだぞエリオットくん。おっさんを信用しないと、お仲間さんを捕まえることは出来ないぞ~」
「何か腹が立つな」
「まぁまぁ。とりあえず移動してもいいと思いますよ、先生方も騎士団の方も先に行ってると思いますよ」
「おぉそうだな。じゃあ行きますか」
オレとエリオットはルイスさんについて行き、学園から出て王都の南門の詰所に行く。
「来たか。話は聞いている。これが魔法を封じる魔道具だ」
門番の人から魔法を封じる魔道具を受け取る。オレは片手を自分で付ける。
「エリオットさん。もう片方の手をお願いします」
「お前躊躇なく付けるなよ・・・。これが本物の魔法を封じる魔道具だったら、どうるんだよ」
「今回は偽物だから普通に魔法は使えるぞ。後、その気になれば引き千切る事も出来るぞ」
これを引き千切れるのか? 使っている素材が違うなら、引き千切れるかもな。それにしても手錠にしか見えのだが。
エリオットに片手を付けてもらう。エリオットはルイスさんに付けてもらう。
「先に謝っておくぞ、すまないねぇ。お仲間さんに信用されるように、2人を殴ったり蹴ったりする」
「まぁそれはしょうがないか。でもこっちも何かするかもな」
「本当にすまないねぇ。次は使い魔を召喚してくれ」
オレとエリオットは使い魔を召喚をする。召喚されたペールはオレの両手を見て、手錠を壊そうとする。
「あぁペール、この手錠は壊さなくていいから」
「・・・クゥ?」
「これから人攫いを捕まえるから、オレとエリオットさんは攫われ役をやるんだ。そこにいる奴は前に捕まえたが、今は味方だ」
「・・・何かラザが普通に喋ってる。初めて見た」
「普段から敬語で喋っているから、物珍しいかもしれんが。今はそんな場合じゃないだろ」
「あぁそうだったな」
「騎士のアルバです。使い魔は私が案内をします。ついて来てください」
「ふむ・・・。主よこの小僧が変な事をした場合は、ぶちのめしていいのか?」
「いいぜ。思いっきりぶちのめせ!」
「だそうだ。小僧、変な事はするなよ」
「わ、分かっております・・・」
「ペール。あの人について行ってくれよ。勿論変な事をして来たら、ぶちのめしていいぞ」
「クゥ!」
ペールとフランさんは騎士の人について行く。
「はぁ~あれが精霊ねぇ~。何とか言うか、え―――」
「ルイスさん。流石にそれを堂々と言うのは、ちょっと駄目だと思いますが」
「そうかい。じゃあ森に行きますかぁ」
ルイスさんはフードで顔を隠す。ルイスさんついて行って、詰所から出て南門から出る。そのまま道から外れて森に入る。そこには2人の男性がいた。
「随分と来るのが遅かったじゃないですか。一体何をしていたんですか?」
「ちとこの男が暴れちゃってねぇ~、中々連れて来れなくって」
「放せよクソジジィ! オレは子爵家だぞ! オレにこんな事をして、あとでどうなるか解っているのか!?」
「うるさいガキだなぁ」
オレはルイスさんに腹を殴られる。その場でオレは膝を地面に着ける。
「(おいおい変わり過ぎじゃない? おっさんびっくり)」
「(ラザは何処で演技力を身に付けたんだ?)」
「おい運び屋、あまり傷付けるな。それで、この2人は誰だ?」
「今殴った奴が、アイスフォックスを使い魔にした奴で、その隣にいるのが精霊を使い魔にした奴だ。名前は後で聞けばいいだろ」
「精霊を!? 本当に精霊を使い魔にした人がいるんですね。過去にもいたと話は聞きますが、まさかこんなガキが・・・」
「コイツはかなり金が貰えそうだぜ。早く移動しようぜ。オイ立てよ」
オレはよろよろと立ち上がる。そのまま男性2人について行く。ついて行くと幌馬車と人攫いの同業者が何人かいる。オレとエリオットは幌馬車に乗せられる。
「後は目的の場所まで連れて行くだけですね。運び屋もお疲れ様でした」
「もうこんなのはやりたくないよ。おっさんには荷が重い」
「そうですか。では我々はこれで」
話が終わり、幌馬車に人が乗るのが分かる。少ししたら幌馬車が動く。
「あぁおっさんから一言。夜道に気を付けて!」
オレとエリオットは合言葉を聞く。オレは風魔法で幌馬車を破壊をする。
「なっ!? テメェ何してやがる!」
「こいつらを押さえろ!」
「遅い!」
エリオットは素早く押さえようとする人の、金的を蹴ったり腹を蹴ったりする。
「意外と弱いな」
「よくこんな狭い場所で動けますね。ところで、いつの間にか身体強化を使っていたんですか?」
「幌馬車に乗った時かな。よく馬が暴れなかったな、音が大きかったと思うが。とりあえず幌馬車から降りようぜ。もう戦いが始まってるぜ」
オレたちは幌馬車から降りて、そのまま移動する。移動してるとルイスさんを見つけたが、裏切る可能性があるので。警戒をしながら近づく。
「いやいやそんなに警戒しなくてもいいじゃん。おっさんは裏切らないよぉ~」
「まだ信用は出来ませんからね」
「ここで急に裏切るかもしれないからな。警戒するのは当たり前だろ」
「何か泣きたなくなるなぁ~。それはそうと、その手錠を外そうか」
オレとエリオットは、ルイスさんに手錠を外してもらう。
手錠でいいんだ、これ・・・。
「よし、じゃあ俺たちも手伝いに―――」
「その必要はねぇぞ。もう片付いたからな」
「「「えっ?」」」
イゼベル先生がこっちに来る。周りを見ると確かに終わっている。よく見るとロザリー様とクリス様がいる。
「は、早い・・・。こんな早く終わるのかよ・・・」
「まぁイゼベル先生だから、っとしか言えませんね」
「2人は無事だな。学生はもう寮に戻れ。騎士から護衛をしてもらえ。運び屋はこのまま残れ」
「はいよ。じゃあお2人さん、お疲れ様」
「お疲れ様です。先ほどの言葉使いはすみませんでした」
「いいっていいって。そうしないと疑われるからねぇ」
「俺はラザの演技がちょっと気になったが。それとお疲れ様です」
オレとエリオットはそれぞれの使い魔に会う。その後は騎士に護衛をしてもらって、学園の寮に戻る。