第58話 攫われ役
修学旅行から帰ってきて3日後。別校舎の冒険科の教室で、先輩たちとサラサ様にお土産を渡す。先輩たちとサラサ様は喜んでいたので、お土産を買って良かった思う。そこから10月17日。2回目の文化祭で2日目だ。オレはイゼベル先生に呼ばれて、職員室に行く。職員室に着いたらドアをノックして、入室の許可を貰ったら中に入る。
「失礼します」
「あぁこっちに来い」
オレはイゼベル先生の方に行く。イゼベル先生以外にも他の先生方もいる。そしてオレ以外の生徒たちもいる。ロザリー様やクリス様たち以外にも、エリオットや他の貴族ポイ人たちもいる。多分使い魔と攫われる可能性がある人たちだろう。
「よしこれで全員だな。本当ならすぐに合図札を渡すはずだが、事情が変わった。ここにいる生徒たちに聞く、午前中に仕事があるものは手を上げろ」
イゼベル先生がそう言うと、何人か手を上げる。
「なら合図札を渡しておく。午後にもう一度職員室に来てくれ」
イゼベル先生は午前中に仕事が、ある人に合図札を渡す。受け取った生徒たちは職員室から出る。
「残っている生徒は午後から仕事をする者として見る。・・・よし話すぞ。去年ラザ・メルト・カルバーンが、何でも屋を足止めをしてくれたおかげで、何でも屋を捕まえることに成功した。その後護送していたが逃げ出した。そもそもここ王都の牢獄にぶち込まれるはずだが、王都にいる囚人どもと結託をして脱獄されることを、考えて遠い場所になった」
あ、今思ったら可笑しい話だよな。まぁ確かに囚人と結託をして、脱獄されるのは最悪だよな。
「今年も何でも屋が侵入してくれる事を考えて、合図札を渡そうとしたが・・・。その何でも屋が堂々と職員室に入って来た」
「「「「「「「えっ」」」」」」」
「そうなるのも無理もない。その何でも屋が―――」
「あぁ~そこからはおっさんが話すよ」
奥から何でも屋のルイスがこっちに来る。
「初めまして、去年この学園に侵入したルイスだ。今年も依頼で侵入して使い魔とかを攫え、って依頼が来たが・・・。おっさんは自分の命惜しさに、依頼主の情報とその他色々ヤバい情報を売ることにしたわ」
おいおいマジかよ。今年で捕まえて牢屋にぶち込まれる話なのに、依頼主の情報と他の情報を売るだと? 完全にストーリーイベントから逸脱してる・・・。
「いやぁもう流石に無理があってねぇ~・・・。隣にいる先生は元Sランク冒険者であり、大規模クランの『果て無き夢』の元メンバー。おっさんには荷が重すぎるよ。だから依頼主などの情報を売る事にした」
クランって確か、冒険者6人パーティ以上の事をクランって言って。危険な依頼を受けるには欠かせなかったな。他にもメリットはあったな。
「でも先生。そのルイスさん? の罪は消えないと思うのですが」
「それはそうですが・・・。彼が持ってきた情報は全て正しかったのです。違法取引をしてる貴族、謀反を起こそうとしている貴族、他国に我が国の情報を売っている貴族など。どれも法に触れる内容でした。これらを全て差し引いても、罪を軽くするどころか、お咎めなしになる可能性があります」
「あれぇそこまでいくぅ~? おっさんの努力が無駄にならなくて良かったわ~」
「そこまでいく情報ですよ。一体何処でこんな情報を・・・。友人はこれでいつも苦労しているのに・・・」
「まぁおっさんも長く何でも屋をやってるし、色々伝手は持っているわけ。ンでここからが本題。今回はおっさん以外にも、お仲間さんがここに来る。だが王都には入らず、近くの森の中で待機している。そこでおっさんからの提案で、そのお仲間さんを捕まえるわけだ」
「流石にこれは嘘だと思ったが。これも本当の話だからな・・・。正直気に食わないが、この話を乗ることにした。勿論学園長からの許可を貰っている」
「待ってくれよ! その何でも屋が途中で、裏切らないって保証が無いぞ!」
「エリオットが言っていることは解っている。わたしも信用できぇね」
「あれー、こんだけ情報を持ってきたのに。まだ信用されてない。流石にちょっとおっさんも困るなぁー」
「黙れ。とにかく今回はコイツ以外の人攫いを捕まえる。それで生徒たちの協力がいる。それは生徒の中で攫われ役をやってもらう」
「さ、攫われ役ですか!? 危険ですよ!」
「んな事は分かってる。わたしも反対だ。だがやらねぇと相手にバレる」
「他の方法は無いんですか?」
「あるにはあるが。今回は確実に捕まえるために、危険な方法を取った。攫われ役は2人だ。こちらから選ぶつもりは無い。各自で決めてくれ」
それを聞いた生徒たちは話合う。
よく見るとロザリー様やサラサ様がいない。午前の仕事があったか、あるいは普通の使い魔なのか。さてどうするか。今回は完全に自分で決める事になっている。多分この場にロザリー様がいたら、きっとやるって言うだろうな・・・。ゴブリンから逃げてる時も、自分から殿をやろうとしてたし。・・・ペールがいるし何とかなるか? ・・・やるか。
「やります。オレが攫われ役をやります」
「―――ちょっ、ラザ!? 何でキミはそんな危険な事をやろうとするの!? 去年キミは痛い目に遭ったのに、また痛い目に遭いたいのかい?」
「誰かがやらないといけないんですよ。そうしないと話が進まないですよ」
「・・・キミは馬鹿なのか? 馬鹿なのか!?」
「まぁ馬鹿ですね。でもその馬鹿のお陰で、助かる人もいるんですよ」
その結果、和利は助かったしな。
「―――ラザがやる事がちょっと予想してたが、本気でやるとはな・・・。お前は死ぬのが怖くないのか?」
「怖いに決まってますよ。自分で言っといて後悔してますよ」
「そうかよ。あと1人だ。このまま出ないのなら、午後の人たちに―――」
「先生。俺もやります」
「エリオットさん? 何でエリオットさんがやるんですか?」
「何でって。そりゃあラザが男を見せたんだ。だったらここで何もしないで、ただ黙っている訳にはいかないからな。それにフランもいるんだ。俺とラザを助けるくらいは余裕だろ!」
「(あれーおっさんはスルー?)」
「・・・アハハハ。エリオットさんも随分と馬鹿ですか?」
「そうかもな!」
「決まったな・・・」
すると先生たちが頭を下げる。
「本来教師である我々が対応するところを、2人を危険な事に巻き込んでしまった。申し訳ない」
「あぁ別に気にしてませんよ。さっきも言いましたが、誰かがやらないと何も出来ませんから」
「それに俺は騎士に、ラザは冒険者になるんだ。どの道危険な事はいつかやるんだ、だったらここで少しでも経験をしないとな!」
「前向きですね」
「そうしないと何も出来なくなるだろ」
「そうれもそうですね」
エリオットさんと話してると、先生たちは頭を上げる。
「そこまで覚悟を決めているなら、こちらからは何も言わない。ラザとエリオット以外は、合図札を受けとって戻っていいぞ」
生徒たちは合図札を受けとって、教室から出る。オレとエリオットは文化祭が終わった後の説明を受ける。