第56話 修学旅行その2
夜、部屋にて。
「この時間は女子が風呂に入っている時間だな・・・。よし覗きに行くぞ」
「「「「おう!」」」」
「おう。じゃないですよ! 死にたいんですか!? 他の先生もそうですが、イゼベル先生がいるんですよ。見つかったら、絶対にボコボコにされますよ!」
「それを分かっていても、俺たちは覗きに行くんだ。ラザ、お前は興味ないのか?」
「無いとは言えば嘘になりますが、オレは命が惜しいので行きませんよ」
「情けない奴だ。俺たちは覗きに行くぞ」
「行かせませんよ。このまま行かせれば、オレまでとばっちりを受けます」
「安心しろよ。お前を売るつもりは無い。罰を食らうのは俺たちだけだ」
「だからと言って、行かせてもいいって理由にはなりませんよ」
「ならお前を倒してから行かせてもらうぞ!」
レジさんと他の男子生徒が襲ってくる。オレは1人づつ腹を殴っていく。腹を殴られてレジさんたちはその場で蹲る。
「くっ・・・、相変わらず強いな・・・」
「今縄で縛るので、大人しくしてください」
オレは空間から縄を出す。その縄で最初にレジさんを縛ろうとすると、すぐに逃げ出す。
「爪が甘いぞラザ! 俺たちは全員回復魔法が使えるんだ! この程度の痛みはすぐに治る。今日は俺の勝ちだな!」
レジさんたちは部屋から出て、そのまま女子風呂を覗きに行く。
ど、どうする。今すぐ行けば追い付くが、タイミングが悪かったら先生方に会うぞ・・・。出も行かないと―――。
考えてると叫び声が聞こえた。この叫び声は多分レジさんたちだろう。
オレが行く前に先に先生にバレたか・・・。どの先生に会ったか知らないが、今回の事でちゃんと反省をしてほしい。
オレは縄を空間の中にしまう。部屋から出てロビーの方に行って、お土産コーナーを見る。
あぁやっぱり修学旅行のお土産には、男子が好むようなアクセサリーがあるんだ・・・。後は名物のお土産とかだな。そしてよく分からない置物。
「そこで何をしているラザ」
「右からいきなり現れないでくださいよ。オレはただお土産を見ていただけですよ」
「土産か。そう言えばさっきレジたちを見たが、アイツらは覗きをしようとしてたが。他の教師に見つかって、説教されていたぞ」
「イゼベル先生が見つけたわけじゃないんですね。てっきりイゼベル先生が見つけたと思いましたよ」
「わたしはさっきまで風呂に入っていたんだ、レジたちを見つけることは出来ねぇよ」
「さっきまで入っていたんですか。だから髪がまだ乾いてないんですね」
「あぁ。しかし風呂に入るのはいいが、目線がいてぇ・・・。主に胸の方に刺さる」
「それ男性がいる前でよく言えますね。あまり男性がいる前で言うのは、避けてくださいよ」
「あ? お前は何とも思ってねぇだろ。現に顔が赤くねぇ」
「顔が赤くなくても普通に―――」
オレは右手で自分の口を塞ぐ。これ以上言うと弄られる気がした。
「ほぅ、お前でもしっかり意識をしているのか。で、今のわたしは魅力的か?」
「そんなに密着しないでください。変な勘違いをしたらどうするんですか?」
「お前がそんな勘違いはしないだろ。とりあえずこの辺にしておこう。消灯時間までは自由だが、あまりふざけるなよ」
イゼベル先生はオレはから離れて、階段の方に行く。
・・・一瞬だが、ホの字が出る所だった。恋とかはまだ耐性が無いんだよ・・・。
「―――ねぇキミがラザ君?」
後ろから声をかけられて、後ろを振り向く。
「そうですが。何か用でしょうか?」
「風呂に行く通路の所に、正座をしている生徒がいるから。引き取りに来てほしいって」
「分かりました。・・・今女子風呂はしまってますよね?」
「しまってるから平気だよ。早く行った方がいいよ」
「あ、はい」
オレはすぐに風呂に行く通路に行く。行くとレジさんたちが正座している。見張りをしている先生と話して、レジさんたちを部屋まで連れて行く。部屋に前に着いたら、ドアを開けて中に入る。
「くっ、思っていたよりも警備が厳重だった・・・」
「警備が厳重って言っても、男子風呂の隣が女子風呂で、通路が1つしかないから。そこに先生がいるのはあたり前なのでは?」
「チャンスは明日しかないな。こうなったら覗きに行く同志を探すか?」
「レジさん。普通に諦めてください。多分次は説教どころか、反省文50枚書かされますよ」
「げっ、僕はそんなの書きたくないぞ」
「俺も書きたくはないな。潔く諦めるか。さて消灯時間までどうするか」
「明日の午後はどうするかを、考えたらどうですか? 午前中は海で遊びますが、午後からは自由になりますから。予定を作っていた方がいいですよ」
「それもそうだな。ラザは決まっているのか?」
「もう決まってますよ。じゃあ一足先に寝させてもらいますよ。何かもう疲れたので」
「途中で起きるなよ」
「そうならないように祈りますよ」
オレは寝間着に着替えて、ベッドに入って寝る。
次の日。起きて制服に着替えて食堂で朝ご飯食べた後、部屋に戻って身支度を済ませロビーに集合する。集合したら海に行って着いたら先生たちから、注意事項を聞いて更衣室に行く。水着に着替えて更衣室から出たら、オレはペールを呼び出して、ペールを抱きかかえて海を見る。
「見ろよペール。綺麗な海だぞ」
「クゥ・・・。クゥクゥー」
「急に暴れるなよ。そのまま泳いだら、溺れるかもしれないだろ。今からペールに合う浮輪を借りに行くぞ」
オレはペールを抱きかかえたまま、海の家に行く。店員さんに聞いて、ペールでも使える浮輪がないかを聞く。店員さんはすぐに浮輪を出して貸してくれた。お礼を言って海の上から出て、ペールを下ろして浮輪を膨らませる。膨らんだ浮輪をペールに通りす。
「・・・うん、犬用かな?」
「クゥ~・・・。クゥ!」
ペールは走り出し海に入る。
「おいおいいきなり入るのか!? 戻ってこーい! ・・・駄目だ戻って来る気がしない」
「ラザー! そこでなにやってるのー?」
後ろを振り向くとエディスさんがこっちに来る。
「エディスさん。ペールが勝手に海に入って、呼び戻そうとしたんですが・・・」
「あぁあれじゃあ戻って来ないね。何かバランスが取れてるから、大丈夫じゃない?」
「そうかもしれませね。一応見ておきますが」
「それより。どう? 何か感想ない?」
「オレは感想とかは言えませんよ。そういう言葉が出ないので」
「うん知ってた。ラザはこう言うのが苦手だろうと思ったよ」
「分かっているなら何で聞いたんですかね。ところでエメリー様?」
「更衣室の方で、フランと一緒に騒ぎになってるよ」
「え、フランさんも水着を着てるんですか?」
「そうだよ。興味ある?」
「人並みには」
「まぁそうだよね。行く?」
「行って何とか収まるか試しますか。その前にペールを回収しますよ」
オレはすぐにペールの所に行って、ペールを回収する。その後はエディスさんの所に戻って、一緒にエメリー様の所に行く。
「わっ! さっきより人がいる。これどうやって近づけばいいんだろ?」
「かき分けて行くしかないですよ」
オレたちは人混みの中をかき分けて、エメリー様の所に行く。
「エディスにラザさん。この騒ぎ止めてくれませんか?」
「いやいや無理でしょ。2人の水着姿を見たら、こうなるに決まってるじゃん。お陰で他の女子生徒たちからの嫉妬が凄いよ」
「そ、そう言われましても・・・」
「ふむ。主よ、妾は着ない方がよかったか?」
「いやいや全然! 凄く似合ってるから、問題はないぜ」
この騒ぎが問題なんだよ。それにしてもあのフランシスカが。水着を着るとは。ゲームじゃ1回も無かったぞ。そしてエメリー様はもう、見慣れてきたな。
「―――何だ何だこの騒ぎは?」
人混みの中からイゼベル先生が来る。
「オメェーら、こんな所で人混みを作るな。迷惑だろ。解ったらサッサと散れ!」
イゼベル先生がそう言うと、人がどんどん散って行く。
「流石イゼベル先生。あんなに人がいたのに、もういなくなってますよ」
「もう全部イゼベル先生が、何とかすればいいじゃないか?」
「そんなメンドクセェー事はしたくねぇな。オメェーらも遊んで来い」
「「「「はーい」」」」
オレたちは海の方に行って遊ぶ。