第54話 正体が分かった
オレたちはエリオットのクラスに着く。中に入ってエリオットの机に行く。
「なぁ何か明るくなるものって持ってるか? 俺光魔法が苦手でさぁ」
「じゃあアタシが照らしてあげるよ」
「悪いな」
エディスさんはエリオットの近くで、光魔法で周りを明るくする。エリオットは机の中を見る。
「――――――あれ無い? 何処行ったんだ?」
「えぇ無いの? 空間の中や部屋のどっかに置いてあるんじゃないの?」
「あぁそうかもな」
エリオットは空間の中に手を入れる。
空間の中に無かったら部屋だろうな。ん?
エリオットの影を見ると、影が無い。一度エディスさんの影を見ると影はある。オレはもう一度エリオットの影を見ると、今度はちゃんとある。
見間違いか? エリオットの影が無かったのは、見間違いか?
「どうしたんだラザ?」
「何か出た?」
「いえ何も出て無いですか。ってなんで何か出る前提で話すんですか?」
「いやだって、何か出たって顔をしてたから」
「そんな顔をしてた覚えは無いんですがね。ところで宿題は見つかったんですか?」
「いや見つからなかった。やっぱり部屋にあるかもしれないな」
「そうかもね。じゃあ実験室に行こうか」
エリオットのクラスから出て、オレたちは実験室に向かう。
「ねぇラザ。七不思議ってなに?」
「憶えていたんですか? 何でどうでもいい事を憶えてるんですか?」
「いや普通に気になったから」
ラザの部屋に来る前に、話したのが間違えだったか。
「怖いので話ませんよ。オレはこう言うのは怖くて無理なんですよ」
「自分で言っといて怖くて苦手なんだ・・・」
「怖くて苦手ですよ。昔からどうも駄目なんですよ」
実際ホラーゲームとかも、ビクビクしながらやっていたしな。
「・・・・・・」
「エリオット? どうしたの?」
「―――あ、何でもないぞ。それより行こう」
何か変だけど大丈夫なのか?
オレたちは5階に上がり実験室に向かう。
「ここが実験室だね。失礼しまーす!」
エディスさんは普通にドアを開ける
「エディスさん!? 普通にドアを開けてないでくださいよ!」
「だってラザに任せたら、中々開けないと思ったから。代わりにアタシが開けたんだよ」
「少しは心の準備をさせてくださいよ!」
「それが時間がかかるんだよ。ほらエリオットを見てよ。全然怖からずにどんどん先に行ってるよ」
「怖くないのかよ!?」
「みたいだね。アタシたちも行こうか」
エディスさんと一緒に中に入る。
「エリオットさん。何か音がしたり人がいたりしませんか?」
「いや聞こえないし人もいないな。ここじゃなくってロザリー様の方じゃないのか?」
「かもしれませんね。念のため周りを見ますか」
オレは光魔法で辺りを照らしながら周りを見る。
「特に何かを引きずる物がなければ、人もいないね。エリオットが言った通りに、ロザリーさんの方かな?」
「今頃向こうでは騒ぎになってますね。こっちは準備室でしたね。行きますか?」
「そうだな。もしかしたらそっちにいるかもな」
オレたちは準備室の所に行って、ドアを開ける。中に入って音の確認をする。
「音は何もしないし人もいないな」
「そうですね。奥の方に行きますよ」
奥の方に行って、何かあるかまたは人がいるかを確認する。
「―――やっぱり何もないね。もしかして時間が遅かったのか、早かったかな?」
「だとしたらまた明日もここに、来ないといけないのですが」
「まぁそうだね。今度はサラサさんも来てほしいな~」
「・・・サラサって誰だ?」
「えっ!? 流石にそれは無いよエリオット。サラサさんはクリスさんの妹だよ」
「クリス様の妹!? マジかよ」
「マジですよ。ここは特に無かったので、移動しますか。集合場所を聞いてませんが、とりあえず昇降口に移動しますよ」
オレたちは準備室から実験室に移動して、実験室から出る。そのまま昇降口の方に移動する。
「こっちはハズレだったけど、ロザリーさんの方は解決したのかな?」
「さぁどうろだろうな。もし解決しなかったら、結局誰かがいたずらで流した、噂じゃないのか?」
「そうだといいですね。本当に何かを引きずるような音がしたら、オレはその場で気絶しますよ」
「そこまで? 本当に怖いのダメなんだ・・・。よくここでこれたよね」
「その場のノリで来てしまったんですよ・・・」
「あぁ話してる所悪いけどさぁ。実は俺さぁ。君たちが知っている、エリオットに化けてるんだけど。どう似てる?」
「・・・いやいやエリオットさん? 流石にその冗談は通じませんよ」
「そうだよ。仮に化けていたら、何かしらヒントがないと分からないよ」
「そこまで似ていたのか・・・。昇降口に行く前に図書室にちょっと寄ろうぜ」
「図書室ですか? まぁいいですよ」
オレたちは昇降口に行かずに図書室に行く。図書室に着いたら、ドアを開けようとしたら勝手にドアが開いた。
「わぁ!? ラザとエディス! 何でここにいるんだよ・・・」
「「えっ、何でここにエリオットが?」」
「何でって。図書室で宿題をして眠くなったから、寝ていたら夜になってたんだよ」
「図書室で宿題。そして寝ていた? 待って今ままで図書室にいたの・・・?」
「そうだが。疑うならフランに聞いてみろよ」
「そのフランさんがいないのですが」
「―――妾なら主の後ろにおるが」
「わ、ひょっこり出て来た。で、本当にエリオットは図書室にいたの?」
「ずっとここにおったぞ。妾は暇だったがな」
つまり今まで隣にいたエリオットは偽物で、本物のエリオットは図書室にいた・・・。じゃあ今までいた偽物のエリオットは誰?
「ねぇラザ。今まで一緒にいたエリオットって・・・」
「そのまさかですよ・・・」
「ん? 2人はどうしたんだ顔を青くして」
「ふむ・・・。その顔を察するに、主の偽物がいたのだろう」
「えっ、俺の偽物!?」
「然り。其方ら何か悪い事でもされたか?」
「いや特に何もされてません」
「そうだね。ただのエリオットだったし」
「なら今後悪い事は無いだろう」
だといいけど。
「俺の偽物がいた事は驚いたが、2人がそれに気付けない事にも驚いた」
「いやいやだって瓜二つだよ! そう簡単に見分けつくわけないじゃん!」
「ヒントはありましたよ。例えばエディスさんが光魔法で机の周りを照らしたときに、エリオットさんの影が無かったんですよ。と言ってもすぐに影はありましたが。次は移動中にどこか違う所を見てましたね。最後はサラサ様の事を知らなかった。これぐらいでしょう」
「・・・全く分からなかった」
「もういいだろ。とにかく俺の偽物がいたけど、特に何もなかった。これでいいだろ」
「そうですね。じゃあ昇降口に行きますか」
オレたちは昇降口に行く。昇降口に着いたら、外にロザリー様たちがいたのでそっちに行く。
「戻って来たか。そっちは何か分かったか?」
「何かを引きずる音は分かりませんでしたけど、違うものなら分かりましたよ」
「違うもの? まぁそれは後でいいか。こっちは音の正体が分かった」
「分かったんだ。で、何だったの?」
「先ず引きずっていた人がいました。それはガエル先生でした」
「ガエル先生って誰ですか?」
「あぁラザは知らないか。ガエル先生は解剖を教える先生だよ。たまに調合室に来てたりするよ」
「そうなんですか。そのガエル先生が何でこんな夜に解剖室に?」
「それは授業の準備や物の片付けだそうだ。たまに袋に重い物が入っていて、それを引きずったりするそうだ。実験室でも同じ事をしていたそうだ」
「この学園の先生ですよね? 空間収納魔法くらいは使えると思うのですが」
「ガエル先生は他の国からきた先生だから、この学園の先生みたいに使える訳じゃ無いんだよ。ボクたちが他の国に行って、空間収納魔法を使ったら驚くかもね」
「そうですか。じゃあ引きずる音の正体も分かりましたし、これで解散しましょう」
「待って、違うものについては?」
「それはエディスさんに聞いてください。私は部屋に戻って今日の事を忘れたいんです」
「ん~、まぁいっか。じゃあねラザ」
「はいさようなら」
オレは1人で寮に戻る。
今頃エディスさんとエリオットが説明をしているのだろ。