第53話 噂
8月20日。夏休みの中盤だろうか。夏休みと言えば合宿だが、去年あんなことがあったのに合宿はやった。っと言うのも、生徒たちが合宿をしたいという意見が多かった。これを聞いた学園長は条件つきで、合宿をする事になった。本来は強制参加のところを自主性になり、合宿期間を短く騎士団による護衛をつけることになった。これで参加する人としない人が別れると思ったが、騎士科と冒険科は全員参加。これはこれでどうなんだろうか? 参加したオレが言うのは可笑しいけど。だが合宿期間は3日だったので、合宿はすぐに終わる。現在はオレは学園の昇降口前にいる。
「あ、エディスさん。エディスさんもエメリー様に言われてここに?」
「そうだよ。何で夜に集まらないといけないんだろうね?」
「さぁ? 何かやろうとしてるんじゃないですか?」
「・・・もしかして夜の学園散歩?」
「夜に学園を散歩するんですか。怖くないですか?」
「アタシは怖くないけど。もしかして~、ラザは怖いの~」
「怖いですよ。夜の学園何て怖い以外に何があるんですか? よし帰ろう」
「ダメだよ。ここにちゃんと残ろうか」
エディスさんに掴まれて逃がそうとしない。普通に振り解けるが、勢い余って何処かにぶつけないかを心配をする。
「―――あれ、ラザとエディスじゃん。そこで何をしてるんだ?」
こっちにエリオットが来る。
「エリオットさん? オレたちはエメリー様に呼ばれて、この時間にここに来たんです」
「そうなんだ。俺は夏休みの宿題を一部持って帰るのを忘れたんだ」
「えっ、何で宿題を持って帰るの忘れてるの? 貰ったら空間の中にしまうよね」
「あぁ俺ちょっと他の人と喋っていたから、ついつい机の中に入れっぱにしたからな。お陰で今頃になって思い出したよ・・・」
「ふーん。じゃあエメリーに呼ばれたんじゃないんだ」
「あぁ呼ばれてないぜ。そもそも俺何かが呼ばれる訳ないって。2人はいいよなーエメリー様だけじゃなく、ロザリー様やクリス様とも仲がいいんだろ?」
「偶然ですよ。それに仲がよくても、今でもちょっと気を使うんですよ」
「分かる。今でも呼び捨てで名前を呼べないもん・・・」
「俺なんか顔なんて見れないぜ」
「・・・あぁエリオットよりかは、アタシは慣れてるんだ」
「同じく」
「何か酷くないか!?」
エディスさんとエリオットと暇を潰すように話す。
「―――お待たせしました」
オレとエディスさんを呼んだ、エメリー様が来る。エメリー様だけではなく、ロザリー様とクリス様もいる。
「あ、エリオットさん。こんばんは」
「あぁこんばんは・・・」
エリオットはロザリー様とクリス様を見て固まる。
「ん? エリオットがいたのか。まぁいいか。さてこんな夜に集まってもらったのは、この学園の調査をするためだ」
「学園の調査? もしかして幽霊調査でもするんですか?」
「そうだね。勿論学園長から許可は貰ってるよ。っと言うより学園長からの、依頼なんだけどね。これを生徒会のボクたちが解決する」
「それって最近噂になっている話?」
「そうだ。調べたい噂は1つだ、その噂は『夜な夜な何かを引きずる音が聞こえる』を調べる」
意外と弱い噂だな・・・。
「引きずる音ってなに?」
「それは分からない。ある者は武器か何を引きずっている音、ある者は人を引きずっている音。だとか」
「後者の部分が怖いんですが!?」
「まぁ怖いな。こればかりは私もよく分からない。が。この噂が出るほど音を聞いた人が沢山いるわけだ」
「それは分かったけどさぁ、何でアタシとラザを呼んだの? 生徒会の人たちで解決すんだよね?」
「あぁそうなんだが・・・。今日は人が足りなくてな・・・、1人は風邪をひいたからな」
「もう1人はサラサなんだけど、怖がって行きたくないって。可愛いよね~」
「あ、オレも幽霊が怖いので帰ってもいいですか?」
「ハイハイそう言うウソはいいから、ラザはそれぐらいじゃ怖くないでしょ」
「・・・えっ、本気で学園を調査に連れて行く気。正気か? なぁ正気なのか?」
「わっ、あまりに怖さに敬語が抜けてるよ」
「ではこのくじ引きでグループを決めましょう」
「待ってください! オレも行かないといけないんですか!?」
「そうだが。その為に呼んだんだ。ここで帰っても明日明後日連れて行くが」
「何て人だ! 行きたくない所に行かせるなんて!」
「誰も1人で行けと言ってないだろ。ほらくじを引け、エリオットお前もだ」
「――――――え、俺も!?」
「サラサの代わりだ」
オレとエリオットはくじを引く。中身を見ると2と書いてあった。その後一斉に引いたくじを皆に見せる。
「アタシとラザとエリオット。そっちはエメリーとロザリーさんとクリスさん。変わってないね」
「やり直しを要求します!」
「それは却下だ。時間が勿体ない」
「ねぇ何でグループ別けしたの? このまま6人で行けばいいじゃん」
「そうしたいが、実は引きずる音は2か所ある。引きずる音が聞こえたのは、実験室と解剖室だ」
「本校舎と別校舎に別れてるんだ」
「あぁそれなら、俺たちは本校舎にしてくれないか? 俺宿題を取りに行きたくて・・・」
「構わない。私たちは別校舎に行く」
ロザリー様たちは別校舎に行く。エメリー様は悲しそうにオレとエディスさんを見るが、オレは手を振って見送る。
「何か止め刺してない?」
「オレは帰りたいと言っても、帰してくれなかった罰ですよ。じゃあ行きましょうか。先ずはエリオットさんのクラスですね」
「悪いな。じゃあ行こうぜ!」
オレたちは昇降口に入って、先ずはエリオットのクラスに行く。