第52話 真似をするな
次の日。午後の授業にて。
「昨日言っていたワイバーンの事を話すぞ。ワイバーンの基礎知識として。アイツらは基本的に群れで行動するが、稀に1体で行動するワイバーンもいる。そいつを『はぐれ』と言う。はぐれのワイバーンは普通のワイバーンと違って、強いと思っていい。昨日襲っていたワイバーンは、紛れもなくはぐれワイバーンだが・・・。それは後で話そう」
「先生。そもそも何ではぐれワイバーンが、出てくるんですか?」
「ハッキリとしたことは分かってない。だが考えられることは内輪もめとか、生まれた時から常に1体だった。などが考えられる」
「昨日みたいにはぐれワイバーンまたはワイバーンに遭遇した時の、対処はどうすればいいのでしょうか?」
「ワイバーンの場合は群れ行動しているのは言ったな。6人パーティでワイバーンに遭遇したら、戦うって選択はあるが実力以下だと判断したらすぐに逃げろ。逆に3人以下のパーティならすぐに逃げた方がいい。はぐれワイバーンも先ほど言った事と同じだ。けして昨日わたしがやった事を真似をするな。あれは強い奴がやる行動だ」
「それは言われなくても理解してますよ。オレたちがそれを真似するのは、かなり後の話になりますよ」
「まぁそうだろうな。他に質問は? 無いなら昨日襲ってきた、はぐれのワイバーンをここに出すぞ」
特に質問は無かった。オレ含め生徒たちは立ち上がり、机と椅子をどかす。イゼベル先生は空間からはぐれワイバーンを出して床に置く。
「コイツは昨日襲ってきたはぐれワイバーンだ。だが普通のはぐれじゃねぇ。時間をやるから見て考えろ、そして答えろ」
はぐれのワイバーンを見て考える。
魔物の解体書でしか見た事が無いが。尻尾が途中で2本になってるな、しかも足や手の爪が大きい。
「先生。このワイバーン尻尾が途中で2本になっています。さらに足や手の爪が大きいです。普通のワイバーンを見た事が無いので、分かりませんが。これは普通なのですか?」
「あっているぞサラサ。少し難しい問題だったな。サラサが言った通り、コイツは尻尾が途中で2本になっていて、足や手の爪が大きい。普通はここまで大きくないし、尻尾も2本にはならない。だがコイツは大きいし尻尾2本ある。ただの成長が異常なのか、突然変異なのかは分からん。とにかくコイツにあったらすぐに逃げろ。コイツははぐれより強い可能性がある。見つけても戦うな」
それを聞いて頷く。
「コイツは王都の研究所に送る」
イゼベル先生は床に置いてある、ワイバーンを空間の中にしまう。
「さてどうするか。本来なら今日と明日も森で魔物を殺す予定だったが、はぐれとは言えワイバーンが近くにいる可能性ものある・・・。よしアリーナに行くぞ、確か第6アリーナが使えたはずだ。第6アリーナに移動して練習着に着替えろ」
イゼベル先生は先に教室から出る。机と椅子を元の位置に戻して、教室から出て第6アリーナの更衣室に入って。練習着に着替えてアリーナに入る。先生が来るまで。アリーナ内を走ったり、木製の武器を持って素振りなどをする。
「ラザ先輩。少し模擬戦いいでしょうか?」
「いいですよ」
少し離れて模擬戦を始める。オレは走るのを加減をして、サラサ様の方に行く。サラサ様は弓と氷魔法を使って、矢と氷柱が無数に撃って来る。しかも氷魔法に関しては毒魔法と合わさっていて、当たると毒になる。最初は飛んでくる氷の色が紫色だったが、最近は無色透明の氷柱が飛んでくる。それを剣で斬り落とす。少しづつ近づいてくると、サラサ様は弓を空間の中にしまって。斧を出してそのままこっちに来て、斧で攻撃をしてくる。
「ラザくんとサラサさんが模擬戦してるよ」
「そうね。あたしたちもやる?」
「む、無理だよ。クリオがすぐにこっちに来るじゃないか」
「そこはちゃんと魔法で対策をしないからでしょ。ほらやるわよ!」
「え、本当にやるの!?」
クリオは距離を取る。ぼくはすぐに杖で罠を作り時間稼ぎをする。
「わたくしの相手は貴方たちですか。いいでしょう、全力でお相手をしますわ!」
わたくしは雷魔法を使い、6人の同級生と相手をする。
おいおいなぁーに勝手に戦ってるんだ? わたしの仕事が減るからいいが、これじゃあわたしが、ちょっかい出しに行けねぇだろ。機会を見てちょっかい出しに行くかぁ。
わたしは周りを見て、先ずはナタルたちの邪魔をする。ナタルたちの所に行くと、一斉にこっちに向かってくる。向かってくる生徒を殴り、蹴り、掴んで投げ飛ばしたりする。落ちてくる雷を避けながらナタルの方に向かう。
「どうした! その程度の雷なら、避けるのは造作も無いぞ!」
「あり得ませんわ!?」
「あり得るんだよっ!」
ナタルに近づき懐に入り、ミゾを殴り態勢を崩したら左腕を掴んで、そのままモリスの方に投げる。
「――――――うああああああああああっ!?」
「モリス!?」
「どうしたクリオ。止まっていると殺されるぞ」
クリオの横腹を殴りそのまま吹き飛ばす。
「・・・やっべー。絶対にこっちに来るだろ。弱い気配遮断を使ってもすぐにバレるな・・・」
「ラザ先輩。これは逃げた方がいいのでは?」
「イゼベル先生が逃がしてくれるとでも?」
「・・・いえ。では矢と氷魔法で牽制をします」
「ならオレは隙をみて攻撃をしますよ」
サラサ様は矢を放ち氷魔法の氷柱を放つ。オレは気配遮断を使って少し遠くに行く。イゼベル先生は全ての攻撃を避けながら、サラサ様の方に行く。
接近戦になったな。どのタイミングで・・・。って今しかないな。
イゼベル先生の後ろに行って、木剣で斬ろうとすると。大きな水玉に当たり態勢を崩す。
「あめぇ―――、なに!?」
わたしがラザと思っていたものは、ただの人の形をした闇だった。
いま!!
木剣でイゼベル先生に攻撃をするが、すぐに避けられて腹を蹴られる。
「おいおいラザ。いつの間にか妙な魔法を使うようになったな。まぁいい。オメぇーら、今から休憩時間だ! 少しは休め」
イゼベル先生にそう言われ、オレたちは休憩をする。