第51話 ワイバーン
6月25日、運動会午後の部。ここの運動会は毎年種目の順番が違う。お陰で午前中にオレの出番は終わった。実況者がうるさかった。午後はもう出ることはない。お陰様で暇になっている。
午後の部にもう少し種目を入れといてほしかった。これじゃあやる事が無くて、寝てしまいそうだ。
「あ、いたラザ」
「ラザさん。そこで寝ようとすると、閉会式に遅れますよ」
こっちにエメリー様とエディスさんが来る。
「こっちに来てよかったんですか? 一応敵同士ですよ」
「特に問題ないよ。もう何十人もの人が他のクラスに行ってるしね」
そう言えばレジさんも他のクラスに行っていたな。最初の方は何かと言ってきていたが、気付いたら静かになっていたな。
「今年はラザのクラスが優勝かな。ウチのクラスにも足速い人はいるけどさぁ、イゼベル先生から教わった人たちは皆速くなってるよね・・・」
「2学年全クラスに足の速い人がいるので、少しは均等になっと思ったのですが。やっぱりイゼベル先生がいるクラスは絶対に足が速くなますね」
「そうですね。来年も速い人が増えますよ。それよりエディスさん何してるんですか?」
「何ってペールを触ろうとしてるだけだよ。触らせてくれないけど!」
「クウゥゥゥゥゥゥ!」
ペールはエディスさんに威嚇する。それでも威嚇関係無くエディスさんは、ペールを触ろうとするが叩かれる。
「何で無駄な事をするんですか?」
「無駄じゃないよ! ただ仲良くしようとしてるだけだよ」
「だったら普通に接すればいいじゃないですか。そうやって無理やり触ろうとするから嫌われるんですよ」
「いやまだ嫌われてないからだいじょ―――」
エディスさんと会話していたら、ペールは隙を見てエディスさんの顔を蹴る。
「・・・・・・あんまり痛くないけど、何か心のダメージが凄い痛い」
「今ので凄く嫌われたと思うのですが。あんまりしつこくするのは止めてくださいね」
「うぅ・・・、次こそは絶対に触って見せる・・・」
「アハハハ・・・。次は姉さんたちの番ですよ」
「今年はロザリーさんとクリスさんは別々だったね。エメリーはどっちを応援するの?」
「・・・両方にしたいですが、姉さんを応援します」
「ラザは?」
「オレにも聞くんですか。どっちが勝っても特に何にも無いですけど。どちらかと言うと、クリス様に応援しますね。クリス様の妹、サラサ様がいますし」
「あぁ科目が同じだったね。仲良くしてるの?」
「それなりには仲良くしてますよ。何で冒険科に来たかは知りませんが」
「アタシ一度もあった事ないな~。エメリーはあるよね?」
「ありますよ。その都度クリスさんに弄られていましたね」
「それが原因で冒険科に入ったんじゃない? あるいはラザの確認とか」
「確認はほぼ無いと思うのですが。クリス様と一緒の科目に入ると、弄られるから何処でもいいから、他の科目を選んだんじゃないですか? それがたまたま冒険科だったんでしょう」
「ん~、本当にそれが理由かな~?」
「この話は終わりですよ。もう3年生の徒競走が終わりましたよ」
話していたらいつの間にか終わっていた。退場してそのまま流れで、こっちに来る。
「お疲れです。姉さんとクリスさんはどっちが勝ったんですか?」
「あれ見てなかったの?」
「どっちを応援するかで話していたら、いつの間にか終わってました」
「その話で盛り上がっていたのか。で、3人は私とクリスのどっちを応援しようとした?」
「私は姉さんです」
「アタシはクリスさんだね」
「同じくクリス様です」
「よし、順位では負けたけど。応援の方はボクが勝ったね」
「ラザはクリスを応援する気でいたとはな・・・。やっぱりサラサ繋がりか?」
「そうですね。ここでクリス様を応援しなかったら、サラサ様に何て言われるか・・・」
「運動会が終わったら、後で褒めに行かないとね」
「止めておけ。お前が褒めに行ったら、サラサは逃げ出すぞ」
「・・・そんな逃げだすような事ってした?」
「してるだろ。ほらそろそろ閉会式だ、早く行くぞ」
椅子に座っているオレたちは立ち上がり、クラスごとに並ぶ。今年の学年別の1位はウチのクラスだった。
7月2日。午後の授業にて。今日は第1アリーナとかではなく、北の森で魔物の狩りをしている。魔物を狩りをしていたのだが、突然ワイバーンが現れた。ワイバーンこっちに襲ってきたが、イゼベル先生がすぐに殺して終わる。
「ッチ、急にワイバーンが出てくとはなぁ・・・。まだはぇーが今日は終わりだ。明日はこのワイバーンの話をする。では解散!」
イゼベル先生にそう言われ、オレたちは学園に戻る。
「驚きましたわ。まさかここでワイバーンが現れるなんて、思いませんでしたわ」
「あれははぐれでしょ? ワイバーンって基本的に群れで行動するけど、今回襲ってきたのははぐれでしょ」
「はぐれだろうね。ぼくワイバーンを見るの初めてだよ。怖かったな・・・」
「自分も初めて見ました。イゼベル先生はすぐに殺していましたけど、あれが普通なのですか?」
「あぁ~、イゼベル先生を基準にしない方がいいですよ。あの人は元Sランク冒険者なのでワイバーンとかの戦いは、基本的に参考にはしない方がいいですよ。ワイバーンは6人パーティで戦うのが普通なので」
「そうですか。ところで先輩方はこの後どうするんですか?」
「わたくしはすぐに寮に戻りますわ」
「ぼくとクリオは武器屋に行こうと思ってるよ。武器がボロボロになってるからね」
「オレは今回殺した魔物の解体ですね。このまま解剖室に行きます」
「・・・モリス先輩クリオ先輩。自分もついて行っていいでしょうか?」
「あたしは構わないわ。モリスは?」
「ぼくもいいよ」
「ありがとうございます」
オレたちは学園に着いたら、更衣室に行って着替える。着替え終わったら、各自でやりたい事をやる。