第50話 勝負
3日後。午前中の授業で第3アリーナで実技試験の練習をする。オレは属性魔法の上級と両手から別々の魔法を出す練習をする。
練習と言ってもほぼ出来る状態までなってるから、練習をしなくてもいいんだけど。完璧に使えるまでは練習をしないとな。
「―――ラザ! 俺と勝負だ!」
前から木剣を持ったレジさんが襲ってくる。俺は避けて左手を握り拳にして、レジさんの腹を殴る。殴られてレジさんはその場でうずくまる。
「お、おい・・・。な、何で木剣で相手をしない?」
「木剣で相手をするより、素手で戦った方が早かったからですよ。確かレジさんは騎士科にいましたよね? なら去年の事は憶えてると思いますよ」
「あぁ憶えているよ。何なんだあの冒険科の生徒たちは? 一体何があったらあんなに強くなる?」
「イゼベル先生に教われば、誰だってあんな風になりますよ。レジさんもどうですか。剣以外にも違う武器を使って学ぶのは?」
「それは駄目だ! 他の武器ではなく、剣でラザに勝たないと意味がない! っという事でもう一度勝負だ!」
「別にいいですけど、オレは拳以外にも蹴りとか魔法を使って戦いますが。いいでしょうか?」
「いいだろ。俺も身体強化魔法を使う気でいるからな」
「そうですか。それではオレは少し離れますね」
オレはレジさんから距離を取る。今回は気配遮断を使わない。少ししたらレジさんがこっちに来る。
・・・あれで身体強化をしているのか? 確か身体を一時的に強化する魔法だったな。オレにはあんまり変わってないように見えるのだが、これはイゼベル先生と戦いすぎたか?
こっちに来る間、身体を動かして少し待つ。レジさんがこっちに来て、木剣で攻撃をしてくる。それらを全て避けて右手を拳にして少し遅く反撃をする。レジさんは避けているが少し焦っている。隙を見て足払いをする。レジさんはそのまま地面に倒れ、オレは拳にして右手でレジさんの首辺りで寸止めをする。
「オレの勝ちですね」
オレは右手を下ろしてレジさんを起こす。
「つ、強すぎだろ・・・。昔より遥かに強くなっている・・・」
「そうなんですか? 昔のオレはそんなに弱かったのですか?」
「弱いって事は無かったぞ。大体互角だった。ただ気配遮断だけは負けていたな」
ラザはそんなときから気配遮断を使えていたのか? 確か中々憶えようとしてなかったけど、少しは憶えていたのか? いや憶えて無かったらストーリー中に、ラザの口から『気配遮断』何て出てこないよな。
「お前は今でも気配遮断を使えるのだろ。ちょっと見せてくれよ」
「別にいいですけど。レジさんが知っている昔と違うと思いますよ」
「構わない」
オレはレジさんの前で気配遮断を使う。
「ラ、ラザが消えた!? ど、何処にいるんだ!?」
目の前にいるのだが、喋れば気付くか?
「レジさんの目の前にいますよ」
「わっ! 声だけが聞こえるぞ! 何処だ、何処にいる!」
あ、声でも気付かないんですか。そこまでオレの気配遮断が成長したのか。
気配遮断を解いてレジさんに話しかける。
「ここにいますよ」
「! いたのか・・・! まさか中々憶えようとしなかったラザが、ここまで使えるようになっているとは・・・。何があった?」
「色々ですよ。それよりまだ勝負はまだやるのですか」
「あたり前だ。っと言いたいが、今のでかなりの実力差があるのが分かった。なら同じような強さになるには、イゼベル先生から教わる必要がある」
「え、止めた方がいいの―――」
オレが最後まで言う前にレジさんは、イゼベル先生の所に行って教わりに行く。オレはレジさんとイゼベル先生のやりとりを見ていると、模擬戦が始まる。模擬戦が始まってすぐにレジさんはボコボコにされていた。
あぁ~やっぱりボコボコにされたか。人の話は最後まで聞こうな。
オレは魔法の練習を再開する。午前中はそれで終わり昼休みに入る。
4月が終わり、5月1日。別校舎の教室にて。今日は1年生が来るかもしれない日だ。
「今年も誰かが来てくれるかな? それとも誰も来ないかな?」
「さぁ? 誰かが来るかなんて、あたしが知らないわよ」
「誰かが来たところで、ぼくはちゃんと先輩として教えること出来るかな・・・」
「何もう弱々しくなってるのよ! 去年とは違うんだからシャキッとしなさい!」
「いたっ! 叩かなくてもいいじゃないか!」
この2人は先輩だ。ぼくと言っている男子生徒はモリス先輩で、あたしと言っている女子生徒はクリオ先輩だ。この2人は昔から一緒にいるようで、俗にいう幼馴染だ。
「ほらラザも何か言ってやってよ」
「―――オレですか? 急にそう言われても・・・」
「そうだよクリオ。ラザくんにそう言われても、そう簡単に言葉が出ないよ」
「あんたはいつもそう言うところで、ハッキリと喋るわね・・・」
「でも少しは堂々としないと、すぐに駄目な方向に考えると思いますよ」
「うっ・・・」
「言われてるわね。もう少しシャキッとしてくれると、あたしも楽なんだけどね~」
「――――――ぼくは別に頼んでないんだけど」
「何か言った?」
「いえ! 何も!」
よくある展開か?
「全員揃っているか?」
「全員揃ってます」
「よし。今日は去年と同じように、学習者が1人入って来た。サラサ、自己紹介をしろ」
「サラサ・アリー・リトリです。よろしくお願いします」
去年はオレが入って、今年も新しく人が入って来るとは思わなかった。ところでアリー・リトリって聞こえたけど、まさか―――。
「言っておくが、サラサ・アリー・リトリはクリス・アリー・リトリの妹だ。公爵家の人だからと言って、無理に壁を作る必要は無い。特にラザ、お前が一番努力をしろ」
「オレですか!? オレが一番壁を作っているんですか!」
「そう言う風に見る事が出来るだろ。とにかく努力しろ。サラサの席は特に決めてない、好きな席に座れ」
サラサ様はオレの隣に座る。丁度オレがいる位置って、周りに人がいるんだよな。
「初めまして、ラザ・メルト・カルバーンです」
「サラサ・アリー・リトリです。姉上からラザ先輩の事は聞いています。気配遮断が上手でよく1人でいるとか」
「クリス様から何処まで聞いてるか知りませんが、あんまり嫌な目で見ないでくださいね」
「分かっています」
簡単な自己紹介が終わり、授業が始まる。