第5話 科目
教科書などの荷物を置いたら、中庭に移動する。
「つーわけで。朝言った通りに、オメェーらには魔法を憶えてもらう。家庭教師で習ってる貴族はいると思うが、一般の人は何のこっちゃっていう人がいるから、教えておくぞ。魔法を発動させるには『詠唱』『魔法陣』『杖』『魔道具』が必要だ。が、そんなもんはほぼ必要ない。脳の片隅にでも置いてけ」
「ま、待ってください! なぜ詠唱や魔法陣などが必要ないと言い切れるんですか!? 魔法は詠唱をしなければイメージが固まりませんし、魔法陣を書かなければ大掛かりな魔法が使えません!」
「馬鹿か、最後まで話を聞け。さっきお前が行った通り、魔法は詠唱しないと『イメージ』が固まらないと言ったな。逆に『イメージ』さえ固まっていれば、詠唱や魔法陣を使わずとも魔法は発動できる。こんな風にな」
イゼベル先生は詠唱や魔法陣を使わず、右手から火が出た。それを見たオレたちは驚く。
「ほら火が出て来たぞ。これでオメェーらも火が出せるよな。どうしても出ないなら『ファイヤ』と言えば出てくるだろう。分かったらサッサとやれ」
オレたちはイゼベル先生に言われた通りに、魔法で火を出してみる。
イメージか・・・。マッチで火をつけるようにすれば出来るか? あるいはアルコールランプとかで・・・。
オレはとりあえず、火がつくようなイメージをする。すると右手に火が出る。
「おぉ出来た」
オレは右手の火を消す。
「はぇーじゃねぇか。そのまま他の魔法も出来るか? 出来たらプリントを渡すから、そのまま帰っていいぞ」
「そうですか。・・・お手本無しでですか?」
「そうだ。言い忘れていたが。属性魔法を使ったときに、特に効果が大きかった3つを憶えておけよ!」
「せんせー! 他の魔法が出来ませーん!」
「あぁ? 貴族なら自分何とかしてみせろ! 一般の人は一旦中断して、わたしの所に来い!」
イゼベル先生の所に一般の人たちが集まる。他の貴族たちは自力で魔法を使おうとする。
何人かすぐに魔法を出しるな。その人たちは家庭教師に教わったのだろう。勿論8つの魔法が全て出せる訳じゃないけど。
「あぁーダメだ! ぜんっぜん魔法がでねぇー!」
「ボクも出来ません・・・。エリオット君は出来ました?」
「おう! 俺は出来たぜ!」
「マッジかよっ!? どうやってやったんだ? 教えてくれ!」
「ボクもお願いします」
「いいぜ。先ずはな―――」
どうやらエリオットはすぐに出来たようだな。さて次は水だな。蛇口から出るイメージでいいよな。
俺は蛇口から出るイメージをして、水を出そうとしたが。まさかの右手の甲から勢いよく水が出た。俺は慌てで止める。
ま、まさかの右手の甲から水が出るとは・・・。蛇口のイメージをしたからか。なら湧き水みたいに。
湧き水みたいにイメージをすると、右手の手の平から勢いよく水が出る。勢いよく出た水はオレの身体全身にがかかる。
どうやらオレは水に適性があるようだな・・・。
「ラザってスゲーな・・・。水魔法であんなに出るなんてな~」
「そのおかげでラザ君はびしょ濡れになってますけど・・・」
「気配遮断も出来て、水魔法も得意のか・・・。ラザって面白いな!」
よし、水の次は土だな。
びしょ濡れになりながら、オレはどんどん魔法を使って行く。8つの属性魔法が使い終わり、オレはその中で効果が大きかった魔法を思い出す。
一番は『水』だったな。二番は『闇』で、三番は『雷』だな。それ以外は普通だったか? とりあえず服を乾かして身体を温めるか。
オレは火魔法で全身を温めるイメージをする。それが出来たのか、服は乾いて身体はあったまる。
―――ヤバい、気持ち悪い・・・。これは魔力の使いすぎか?
「―――先生! ラザさんの体調が悪いです!」
多分エメリー様がイゼベル先生を呼ぶ。イゼベル先生はオレの方に来る。
「あぁこれは魔力の使いすぎだな」
イゼベル先生は突然何かが入った瓶を出す。
「ほら、この魔力ポーションを飲め」
「・・・ありがとうございます」
イゼベル先生から魔力ポーションを貰って、蓋を開けてそれを飲む。
「――――――っ、苦い・・・」
「魔力草を使って作ってるからな。ラザ。全部の全属性は終わったか?」
「はい」
「ならこのプリントを渡すから、今日はもう帰れ。明日も午前で終わりだ」
オレはイゼベル先生からプリントを貰って、エメリー様にお礼を言う。
「エメリー様。イゼベル先生を呼んできてくれて、ありがとうございます」
「いえいえ。私はただラザさんが辛そうな顔をしていたので、先生を呼んだけですよ」
「そうですか。・・・その、魔法の方はどうですか?」
「あっ、まだ水が出なくて・・・。ラザさん。厚かましいかもしれませんが、水を出すイメージを教えてほしい、です・・・」
「良いですよ。そうですね・・・。湧き水から水を出すイメージをすれば、水が出るかもしれませんよ」
「湧き水から・・・」
エメリー様はイメージが出来たのか、水を出すことに出来た。
「出ました! 出ましたよラザさん!」
「おめでとうございます。では残りの6つ、頑張ってください」
「えっ? あ、ハイ・・・」
「それではオレは先に帰らせてもらいますね」
エメリー様にそう言って、オレは教室に戻る。
「―――オメェーらも早く終わらせれば、早く帰れるぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
教室に戻った後はカバンを持って、男子寮に戻って自分の部屋に入る。
で、この紙は・・・。5月から始まる午後の選択科目か。選択科目多くないかっ!? 先生どんだけいるんだよっ!? えっと「空欄に科目を第1候補から第3候補まで書く事。第1候補から第3候補まで選ばれなかった場合、強制的に冒険科になります」まぁオレは冒険科の授業を受けたいから、第1候補に書くけど。問題は第2と第3だよな・・・。何を選ぼうかな。
オレは書いてある科目を見て、第2と第3を決める。
暗殺科・・・。本当にあるんだ。いやオレは暗殺者になる気はないんだ。他は騎士科、魔法科、料理科、音楽科、建築科、諜報科などあるけど。・・・やっぱりゲームと同じで騎士科と魔法科にするか。
俺は第2に魔法科にして第3に騎士科にする。
「なお、一度決まったら進級するまで変更不可」嘘・・・。冒険科にならずに、騎士科または魔法科になる可能性もあるのかよ・・・。まぁ第1候補から第3候補になれなかったら、冒険科になるんだから。そんなに進んで冒険科になりたいって人はいないよね・・・。
オレは紙をカバンの中に入れて、今日貰った教科書や体操着などを確認する。