第48話 教室にいる理由
3月20日。今日は3年生の卒業試合。この学園は少し変わっている。それは卒業式は19日にやって、その次の日に卒業試合をやる事になっている。普通逆だと思うけど。まぁ元々ゲームだからいいんだけど。1年生はオレたちは自分たちの教室にいる。
「それにしても暇だね~。何でアタシたちは試合を見る事が出来ないんだろ? 卒業式は見れたのに・・・」
「それは観客席には卒業生と、その保護者が来るからですよ。それに2年生も見るんですよ。私たちが座る場所はほぼ無いですよ」
「そうなんだ・・・。あぁー暇すぎて死にそう~。大体何で教室で待機しないといけないの? 最終的には外に出るんでしょ。ならこんな早く教室待機をしないで、寮で待機してた方がいいよ」
「教室にいる理由は、試合が早く終わる可能性があるからですよ。過去に何回か卒業試合が早く終わって、寮にいた1年生と教室にいた1年生の集合が遅れたそうですよ。なのでその対策として、1年生は教室待機になっているんですよ」
「へぇ~そんな事があったんだ。でも早く終わるって事はあまり無いよね?」
「・・・そうかしれませんが、理由はもう1つあるんです。それは非常時の時にすぐに、人を集める事が出来るためです。1年生格クラスにいれば、すぐに点呼が取ることが出来ます。事前に点呼を取っておけば、少しは早く対応できますよ」
「教室に集まる理由がもう1つあったんですね。誰から聞いたんですか?
「あ、もう1つの話は嘘ですよ」
「「え、嘘!?」」
「これはエメリー様が教室にいる理由を喋っている時に、オレがそれっぽい理由を考えてそれを言ったんですよ。なのでオレが話したのは嘘ですよ」
「ふ、普通にあり得そうだから、てっきり本当だと思ったよ・・・」
「な、何でそんな嘘を言ったんですか?」
「エディスさんが暇暇って言っていたので、嘘を付いて暇を潰そうと思ったんですか。どうでした?」
「確かに少し暇は潰せたけどさぁ・・・。非常時の話は本当のことだと思ったよ・・・」
「私も同じです」
「・・・すみませんでした。まさかそこまで信じるとは、思いませんでした」
「いやいやラザが謝る事じゃないよ! ただ本当にあり得そうだから、信じたんだよ!」
「そ、そうですよ! 特にラザさんが謝る事じゃ無いですよ!」
「・・・分かりました。先ほど謝った事は取り消します」
「うん、その方がいいよ。それよりアタシたちそろそろ2年生だね」
「もう2年生になるんですね。1年があっという間に終わりましたね」
「この1年で色々ありましたね。合宿所の近くにゴブリンの集落あったり、文化祭中にも何かありましたね」
「それほぼラザが被害に遭った事じゃない? アタシは1回も無かったけど」
「本当は無い方がいいんですよ。遭ったら遭ったで経験にはなるので、何とも言えないんですが」
「ラザさんだけ色々遭いすぎなのでは? 何か悪い事でもしましたか?」
エリオットと友達にならなかった。っという悪い事をしました。
「あまりそう言う事は、聞かない方がいいじゃない?」
「あ、すみません。不愉快な事を聞いてしまって・・・」
「平気ですよ。話は変わりますが、エメリー様は前の実技試験の合否はどうでした?」
「合格でしたよ。ビームは初級でやるには難しいそうなので、中級になりました」
「良かったね。これで不合格だったら、ちょっと進級出来るか不安になっていたね」
「そうですね。私だけ退学何て嫌ですね」
そう言えば、進級試験が不合格だったら一発退学だったな。
エメリー様とエディスさんと話していたら、教室のドアが開いてイゼベル先生が入ってきた。
「オメぇーら全員いるか?」
イゼベル先生がそう言うと、クラス委員長が全員いると報告をする。
「そうか。あぁまだ立たなくていいぞ。まだ卒業試合は終わってねぇ」
「? それだと何でイゼベル先生は教室に来たんですか?」
「見てて面白くねぇからだよ。自分クラスや各科目だったら話は別だが」
「そうですか」
点呼を取った後は特にやる事が無いと思うが。・・・クラス替えがあるから、その前にクラスを見ておこうって事か?
「イゼベル先生。何でアタシたちは教室で待機なの?」
エディスさんは教室で待機している理由を確認するために、イゼベル先生に聞く。
「あぁ言ってなかったな。教室待機にしたのは、卒業試合が早く終わった時に、すぐに校門付近や昇降口前に移動するためだ。理由は何回か卒業試合が早く終わる事があったからだ。その結果、教室にいた1年生と寮にいた1年生で、情報の伝達が遅れて校門付近と昇降口前集合が遅れた。今後そのような事が無いように、卒業試合が始まったちょっと過ぎに、教室に集まるようになった。後は何か非常時の時にすぐに点呼を取れるようにだな。他にも色々理由はあるだろうが、主な理由は最初に言ったやつだな」
「わ、解りました」
「そうか。トイレに行くのはいいが、寮には戻るなよ」
そう言ってイゼベル先生は教室から出る。
「・・・何かラザが言った嘘が本当だったね」
「嘘が本当になるのは予想外でしたね」
「でもこれで理由ははっきりしましたよ。・・・これからどうしましょうか?」
「また時間を潰すのを考えないとね~」
数時間後。イゼベル先生が教室に入ってきて、昇降口前または校門付近に行くように言われる。席から立ち上がって移動する。
「じゃあアタシは調合科の方で集まりがあるから」
「私も魔法科の集まりがあるので」
「オレも冒険科の集まりがあるので」
「見事にバラバラだね。じゃあまた教室で!」
エメリー様とエディスさんと別れて、オレは昇降口から校門に行く道の中心あたりの左端の方に行く。待っていると冒険科の2年生の先輩が来る。挨拶をして卒業生が来るのを待つ。待っていると卒業生が来る。拍手をして見送っていく生徒もいれば、卒業生と話している生徒もいる。
「―――ようオメーら。俺らは今日で卒業だ。あんまり良い言葉は出ねぇーが、一先ずこの1年間ありがとうな」
「スティース先輩、そしてお2人も。こちらこそ1年間ありがとうございます。午後の授業は楽しかったですよ」
「お、そうか。次は2年生になるが、後輩が入って来るといいな!」
「入って来ることを願ってますよ」
「そうだな。そんで2年生。ラザがまた無茶をやる事があったら、その時はちゃんと止めろよ」
「言われなくても分かってますわ」
「何か酷くないですか!?」
「酷くは無いですよ。何せラザは何回も無茶をしてるので、他の人たちにもこう言っておかないと。知らない所で無茶をすると思うので」
「た、確かに無茶をしましたが。何も言わなくても・・・」
「言わねぇと意識しねぇだろ。っと、あんまりここで喋ってると。後ろがつっかえるな。じゃあな、街で会ったら何か話そうぜ」
スティース先輩たちは校門の方に行く。その後卒業生たちを見送ったら、教室に戻り春休みの注意事項を聞いて寮に戻る。