第43話 文化祭その2
「いや~メイドのロザリーさんは綺麗だね~。今日と明日は告白の嵐だね」
「ロザリー様にとって、この2日間は嫌な思いをするのですね。それにしても何とも不思議な気分ですね、メイドがメイドに接客をするのは」
「そう? これくらい普通だと思うけど」
「私には普通とは思えないんですが。それよりも、メイドの格好をしてるとは言え、自分のクラスのメイドと間違えますかね? デザインが違うんですがね」
「ほぼ顔だけで判断したかもね。メニューを見ようか」
オレとエディスさんはメニューを見る。料理を見るとどれも値段が高い気がする。
「・・・ラザ。割前勘定で良いよね?」
「それで良いですよ。何でこんなに高いのでしょうか・・・」
「多分ロザリーさんが料理を運ぶんじゃない? あるいはクリスさんが運んでくるとか」
「ま、まさかそれだけの事でここまで値段が・・・」
「流石に無いよね。多分食材にこだわってるんだよ。ラザはもう決めた?」
「私はタマゴサンドイッチと紅茶にしますよ」
「アタシもそれでいいや。すみませーん!」
「ただいま参ります」
メイドがこっちに来て、エディスさんは料理を注文する。メイドはそのまま厨房の方に行く。
作ってる所が見れるのか。何かそう言う店もあったな~。
「今思ったんだけどさぁ、これってデートだよね?」
「デート? ・・・あぁ! 確かにデートみたいになってますね」
「ちょっ! こ、声が大きいよ! そんな大きな声で言うと―――」
エディスさんはごにょごにょ言いながら、顔を赤くする。
「そこまで恥ずかしいですか?」
「うん・・・。何でラザは恥ずかしくないの?」
「この格好してると慣れてきた。っと言うべきでしょうか」
「・・・可笑しいよね? 何で普通に慣れてきてるの?」
「多分ですが、普段エメリー様とエディスさんと一緒にいるせいでしょう」
「それだったらアタシだって慣れるはずだけど」
「それは人によると思いますよ」
「何かズルいよ~・・・」
「――――――お待たせしました。タマゴサンドイッチと紅茶になります」
ロザリー様が料理を運んできて、テーブルに料理が置かれる。
「少し聞いてもいいでしょうか?」
「何なりと」
「ここのメニューのねだん――――――」
値段の事を言おうとしたら、ロザリー様に睨まれる。オレはそれ以上聞かずに、他の事を聞く。
「クリス様はどちらにいるのでしょうか?」
「クリスは現在休憩中でございます」
「そうですか。ありがとうございます」
オレはお礼を言うと、ロザリー様は一度会釈をして違う所に行く。
「これはあれですね。ロザリー様とクリス様が接客するから、その分値段が・・・」
「かもね。まぁあのロザリーさんとクリスさんが接客してくれるから、安いと言えば安いのかな」
注文した料理を食べる。食べ終わった後は少し休憩をして、立ち上がって受付の方に行って会計を済ませる。割前勘定で払ったのは、銀貨8枚。つまり合計で銀貨16枚ってこと。会計が終わったら教室から出る。
「次何処に行こうか?」
「・・・さっきまで顔を赤くしてた人が、言う台詞じゃ無いですね」
「うるっさいな! それはもういいでしょ!」
「そうですか。で、何処に行くのですか? 私は特に行きたい場所が無いので」
「もう少し楽しんだらどう?」
「楽しむ? 充分楽しんでますよ。エディスお嬢様が顔を赤くしてるところを」
「意外と性格が悪いね・・・。じゃあ―――」
オレはエディスさんに連れられ色んなクラスに行く。途中ナタル先輩を見つけたが、この格好で声をかけるのは流石に恥ずかしいので止めた。午前を楽しんだら午後の仕事に行く。オレはエディスさんと別れて、このまま校門の方に行って、看板を持っているクラスメイトを見つける。
「交代の時間ですよ」
「おぉ・・・やっと救いが来た・・・」
「大丈夫ですか?」
「全然大丈夫じゃ無い。精神がもうズタボロだ・・・」
「この程度で精神がズタボロになっていると、明日はもう死んでますよ。明日は生徒以外の人も来るのですから」
「それを言うな! 折角忘れていたのに・・・」
「忘れていても明日は来ますよ。変わってください、貴方は休むべきです」
「あぁそうするよ」
オレは看板を受け取って呼び込みを交代をする。
さて呼ぶ込みになったけど、正直どうやればいいんだろ・・・。前の人に聞けばよかった。とりあえず少し看板を左右振って、宣伝をすればいいのか?
オレは持っている看板を少し左右に振って、少し大きな声を出そうとすると。後ろから声をかけられる。
「すみませ~ん、そのメイド喫茶店は何処のクラスですか~?」
オレは後ろを向いて答える。
「1年Cクラスの喫茶店です。メイド喫茶店ではなく、おかしな喫茶店です」
「お、おかしな喫茶店? 何処がおかしいの?」
「それは来店した時のお楽しみですよ」
「ふ~ん。行ってみよ」
女子生徒たちは1年Cクラスに行くようだ。
「―――お、1年Cクラスってラザがいるクラスじゃないか?」
「あぁそうだったな。おいメイド、ラザはクラスにいるのか?」
「今貴方様の目の前にいますが」
「「「・・・・・・えっ?」」」
スティース先輩たちは口を開けて、ポカーンとしている。数秒したらスティース先輩が喋る。
「オメーラザかよ!? 一体何をしたらそうなるんだよ!」
「メイクと女装したらこうなるのですよ。やっぱり変わりますか?」
「変わり過ぎだっ!」
「驚きましたね・・・。つまりラザのクラスは女装メイド喫茶店ですか?」
「それは言えませんね。来店してみれば分かりますよ」
「あんまり行きたくねぇが、行ってみっか」
スティース先輩たちは1年Cクラスに向かう。オレは呼び込みを始める。
数分後。交代が来て入れ替わる。クラスに戻って休憩をする。時間が経つと放送が入り今日の文化祭が終わる。色々片づけをして、明日の下準備をして寮に帰る。
次の日。文化祭2日目は生徒以外にも王都の人たちが来る。クラスの準備をしようとしたら、放送でエリオット、エメリー様、そしてオレが呼び出されて職員室に行く。職員室に入ってイゼベル先生の所に行く。
「来たか。オメェーらにこの魔法陣が書いてある紙を渡す」
いきなり紙を渡されて、オレたちはその紙を受け取る。
「その紙の使い方は、魔力を流して破れば発動する」
「イゼベル先生。いきなりそう言われても、オレたちは全く分かりませんよ」
オレがそう言うと、エリオットとエメリー様は頷く。
「今から説明する。オメェーらに渡したのは『合図札』だ。使い方は様々だか、今回は何かトラブルが遭った時に使え」
「トラブルですか。それって使い魔が関係してますか?」
「察しがいいじゃねーかラザ。そうだオメェーらの使い魔が関係してる。今日は一般客も入って来るが、必ずしも一般客が来るわけじゃねぇ。人攫いや間諜などが入って来る。今回一番危険視してるのは『何でも屋』の奴だ。正直そいつのほぼ情報がねぇ。名前や出身地、構成員の数や男か女かもわからねぇ・・・」
「何でも屋って言うのは?」
「その名の通り何でもやる奴だ。荷物を運んだり一時的に冒険者のパーティに入ったり。裏仕事なら殺人や誘拐もやるな」
「その人たち、あるいは団体の人が狙ってくるんですね。私とエリオットさんは分かりますが、ラザさんも必要なのですか?」
「必要だ。何せ2人の中で一番難易度が低い。エリオットのフランシスは上位精霊、そう簡単にはやられねぇだろ。エメリーのクリスタルドラゴンも同じだな。残ったラザはそう言はいかねぇ。普通のフォックスよりかは強いが、クリスタルドラゴンや上位精霊には足元も及ばない。そのラザを狙う可能性が高いが、2人の狙われる可能性もある」
「解りました。ですがロザリーさんも狙われると思いますが」
「それは他の先生が対応してるだろ。話は終わりだ。戻っていいぞ」
オレたちはイゼベル先生から離れて、職員室から出る。
きたなストーリーイベント。本来はオレは職員室に呼ばれないが、アイスフォックスのペールも珍しいから、攫われる危険性があるから、オレもイゼベル先生に呼ばれたんだろう。本番は午後だな。合図札を使ったあとは戦えるかな~・・・。