第42話 文化祭その1
10月16日。体育館で文化祭のオープニングが終わり教室に戻る。戻った後はメイクを始める。
うわぁー・・・。嫌になるほど慣れてきてる・・・。ゲームじゃこんなこと1回も無かったぞ。そもそもこんな喫茶店自体無かったが。そう言えば、男装女装執事メイド喫茶から改めて『おかしな喫茶店』になったな。来店した時にはネタばらしをするけど、客がガッカリしないか。ちょっと不安になってきたな。後は髪を梳かして、このメイド服を着るだけか。
オレは髪を梳かしてメイド服に着替えて、店側の方に行く。オレが来た事に気付いたのか、エディスさんはオレを見る。
「おぉ~。一応聞くけど、ラザだよね?」
「ラザですが。そんなに似合ってますか?」
「凄くね。そのまま女性として生きていけるんじゃない?」
「それは勘弁してほしいですね。ところでエメリー様は、まだ着替え中ですか?」
「うん。あともう少しで来るんじゃない?」
「そうですか。それにしても凄いですよね。魔道具で教室を広くしたり、部屋を作ったりするのは」
「家の店にも置いてあったけど、いざ使うとビックリしたよ。ここまで出来る魔道具って、凄く高いんだよね・・・。多分これ1個で金貨600くらいはすると思うよ」
「高っ! そんなお金を集めるのは無理ですね」
「一体どうやって稼けば、そこまで貯まるんだろうね・・・。間違えても壊さないようにしないと」
「壊したら当分タダ働きですね。思ったのですが、オレはずっとメイクの方に集中してましたが。メニューってどうなりました?」
「オムライスとか、サンドイッチと言った軽い食べ物。飲み物は紅茶やオレンジジュースなどあるよ」
へぇ~つまり喫茶店の定番は揃ってるのかな。オレンジジュースとかあるのか。
「お待たせいたしました」
エメリー様がこっちに来る。オレとエディスさんはエメリー様を見る。
「おぉ~かなり印象が変わるね~。周りの視線が凄いよ」
「そうですね。このまま男性として生きていけますよ」
「流石にそれはちょっと・・・。ラザさんも似合ってますよ」
「あんまり似合ってるなんて言わないでください。悲しくなってくるだけなので・・・」
「褒められたことは、素直に受け入れるべきだと思うけど。ん~。ラザ。ちょっとエメリーの隣に立ってみて」
エディスさんにそう言われ、オレはエメリー様の横に立つ。
「・・・・・・これを絵として残して家宝にしたい」
「これくらいで家宝にするのは止めてくれませんか?」
「えぇ~。あ、そっかアタシがそこにいないね。そう言う事なら、確かに家宝にしない方がいいね」
「そう言う風に言った訳じゃ無いんですが。エメリー様も何か―――。エメリー様? 大丈夫ですか?」
「えっ、はい大丈夫です! どうやって絵に残しましょうか!」
「全然大丈夫じゃない事は理解しました」
そんなに残したいの? オレは嫌だぞ。
「今思ったんだけど。ラザって午後からだよね。何で今着てるの?」
「今のうちに着て慣れようと。今から慣れないと、呼び込みの時は大変ですから」
「あぁそうだったね」
〈間もなく1日目の文化祭が始まります。みなさん怪我の無いように、存分に楽しんでください〉
放送が入り1日目の文化祭が始まる。なお放送も魔道具で放送している。
「始まるそうですね。男子更衣室から悲鳴声が聞こえますね」
「一部の男子は女装して接客や呼び込みをするからね。ラザの方がちょっと可笑しいかな?」
「まぁ可笑しいですね。では私は男子更衣室で待機してますね」
オレは男子更衣室に行こうとすると、右手を掴まれる。
「ラザ? ここは一緒に文化祭の出し物を見て回るところでしょ」
「行かないと駄目ですか? どうしても行かないと駄目ですか?」
「今日しかないんだよ。自由にお店に行けるのは。明日なんてほとんどの店に、行けないと思ってもいいよ」
「あのー私だけ1人になるのですがー。それはいいのでしょうかー?」
「そう言われてもエメリーだけくじ引きで、午前になったんだから。ちゃんと午前中は仕事しないとね」
「理不尽です! 私も一緒に回りたいです!」
「もう決まった物はしょうがないよ。じゃあ行こっか!」
オレはエディスさんに連れられて、教室から出る。
「最初は何処に行こうか?」
「丁度の近くにあるので、先ずはそこから行きませんか?」
「それ自分のクラスでしょ。逃げるのは駄目だよ」
「駄目ですか・・・。なら何処に行きましょうか?」
「普通なら隣のクラスに行くだろうけど。ここはもうすぐにロザリーさんのクラスに行こうか」
「いきなりそこに行くんですか? まぁいいですけど」
オレとエディスさんは、ロザリー様たちがいるクラスに行く。ロザリー様たちがいるクラスに着くと、既に少し混んでいる。
「・・・流石第1王女と公爵家。もう少し混んでるよ。とりあえず並ばないと」
オレとエディスさんは列に並ぶ。
「出し物はメイド喫茶店ですね。考えることは同じようですね」
「やっぱりあの案は正解だった。あのクラスに対抗するなら、普通の案じゃあ無理だからね」
「まさか1位を狙っていたんですか? 流石に相手が悪いのでは?」
「それでも勝ちにいくんだよ。そうじゃないと賭けに負ける・・・」
「賭け? 一体どんな賭けをしたんですか?」
「負けたらクレープ屋の、一番値段が高いクレープの奢り。勝利条件は相手より順位が上だったら勝ち」
「じゃあ必ず1位を取らないといけない。って事は無いんですね」
「そうだけど。やっぱり1位は取りたいじゃん。1位を取って完全勝利したいじゃん」
「完全勝利ですか。私には関係無いですね」
「関係無いって・・・。今更だけど、一人称変わってない?」
「外見は女性に見えるかもしれませんが『オレ』って言ったら可笑しいと思いますよ。そもそもメイドが『オレ』って言いますか?」
「・・・言わないね。主とかがいない時はどうかは知らないけど」
「私も知りませんよ。あ、そろそろ私たちも入れるようですよ。行きましょうエディスお嬢様」
「お嬢様!? そこまでやる!?」
「ロザリー様とクリス様に見られるんですよ。もう自暴自棄です」
「・・・・・・ごめんラザ」
「謝られると困るのですが」
オレとエディスさんは、ロザリー様たちがいるクラスに入る。
「お帰りなさいませ。おじょう・・・さ・・・ま・・・?」
メイド服を着たロザリー様が、オレを見て固まる。そしてすぐにロザリー様は他のメイドの方に行く。
「お、おい。ウチにあんなメイドはいたか?」
「い、いえ。うちにはあのようなメイドはいませんが・・・」
「ならあれは他クラスの生徒か? 私は知らないが、あのような生徒もいるのか。すまない、仕事に戻る」
ロザリー様がこっちに来る。
「ロザリーさん? アタシの隣にいるのはラザだよ」
「ラ・・・ザ・・・? ――――――ラザ!? お前はラザなのか!?」
「ラザです。そんなに変わりますか?」
「変わり過ぎだ! 自分のクラスのメイドだと勘違いをしたぞ!」
「・・・そうですか。それより移動させてください。後ろにまだ人おりますので」
「! そ、そうだな。―――ではお嬢様方、席にご案内させてもらいます」
メイドのロザリー様に席に案内されて、案内された席に座る。