第38話 恋愛
9月3日。放課後、オレは図書室の受付所にいる。実は4月の中旬あたりに委員会を決める時期があって、オレはすぐに図書委員を選んだ。図書委員の仕事は本の整理整頓と受付所の所で案内したりなど。ただし1年生は1学期の間だけ本の整理整頓しか出来ない。2学期から受付所での仕事が始まる。
受付の仕事って少ないんだよな~。本が何処に置いてあるとか、勝手に持ち出しされてないかの確認。後は新しい本が入荷された時に、いかがわしいものがないかのチェック。貸し出しとかやればいいのに・・・。それともそんなに本の需要性が無いのか?
まぁそれはそれとして。今は2年生がいない。今日から2年生は2泊3日の『修学旅行』だ。夏休みが終わってすぐに修学旅行に行くのは、どうかと思うが。ロザリー様とクリス様は楽しみにしていたから、別にどうでもいい。それよりもあの2人が旅行で、いなくなるのは嬉しい事だ。これで少しは緊張が無くなるよ・・・。
「―――おや。ラザは図書委員でしたか」
せっせと魔物の解体書を他の本に写していたら、マルル先生が受付所に来た。
「こんにちはマルル先生。マルル先生は修学旅行に行ってないんですか?」
「ぼくは2年生の騎士科教師ですが、学年の教師は持ってないんです」
「そうですか。それでオレに何の用で? 説教はもう勘弁してください。イゼベル先生とエメリー様たちから、物凄く説教されたので。勘弁してください」
「分かってますよ。これ以上説教をすると、かなり落ち込むと見ました。ところでラザは一体何をしてるのですか?」
「魔物の解体書を書き写してるんですよ。魔物を解体する時に、何も知識がないより何かがあれば、上手く解体が出来ると思ったんですよ」
「なるほどそう言う事ですか。ではそのままでいいので、少しお話をしませんか?」
「それはいいですが。何か話すような内容でもあるんですか?」
「勿論あります。貴方に聞きますが、イゼベル先生の事はどう思ってるんですか?」
「イゼベル先生ですか? 普通に生徒と教師だと、オレは思ってますよ。イゼベル先生もそう思っていると思いますよ」
「・・・そうですか。ぼくはてっきりイゼベル先生に片思い。してると思ってましたよ」
何でオレがイゼベル先生に、片思いしないといけないんだ? 確かにイゼベル先生は人気高いよ。若いしスタイルはいいし、なにかと面倒見はいいし。それで人気がある。一部の人は罵られたいっと言う生徒もいたな。
「あのマルル先生。もし仮にオレがイゼベル先生に、片思いしていたら。オレはどうなっていたんですか?」
「どうなっていたんでしょうね。いつの間にか学園から、消えていたかもしれませんね」
こわっ!? この先生かなり怖いぞ!
「・・・逆にイゼベル先生が片思いしていたら、マルル先生はどうしていました?」
「そうですねぇ・・・。全力で説得にいってますね」
「そうですか。話から察するに、マルル先生はイゼベル先生に片思いしてるんですね。一体何処を好きになったんですか?」
「そうですね・・・。大体の人は容姿と言いますが、ぼくもそこに当てはまりますね」
あぁ確かそんなような気がする。大体が見た目で判断して、後から中身を知る。大体人の恋愛ってこんなもんか? オレはよく分からないけど。
「それと自分の地位を威張ってこない所ですかね」
「地位ですか? 確かにイゼベル先生は侯爵家ですが。一度も威張って無いですね。それどころか本人から貴族って言いませんね」
「ぼくはあぁ言うところも好きなんです。これでもぼくは平民です。他の人からは「お前は平民だが、容姿はいい」っとよく言われるんですよ」
他の人が聞いたら、絶対に嫌味にしか聞こえない・・・。
「その容姿のお陰で、色んな女性の方から声をかけてくるのですが。大体の人は地位をちらつかせて、婚約者に仕立てようとするんですよ」
「あぁそれはちょっと嫌ですね。恋愛は自由であるべきだと、オレはそう思いますよ」
「ラザの言う通りですね。地位や権力などで脅して恋愛をするより、自由に恋をしていくのが恋愛だと思いますよ」
「・・・「恋愛は自由であるべき」っと言いましたが。実際一度も恋愛してないから、よく分からないですがね」
「おや。ラザの周りには良い人がいるではないですか?」
「エディスさんを除いて『貴族』と言う危険な物を持っていますがね。自分も貴族なんですが、どうも苦手ですね」
「貴族が貴族を苦手とするのは、中々珍しいですね。何かあったんですか?」
「何かあったと言うより、貴族に馴染めないんですよ。何と言うか心? 精神? が追い付かないと言えばいいでしょうか。今でも何で自分は何故貴族何だろうって思うんですよ」
「・・・えっと、ラザはまだ15歳ですよね? その年で難しく考えてますね」
前世を含めば30を超えているのだが。後オレはもう16歳なのだが。
「――――――まだここにいたかラザ。今から道具の整理をするから手伝え」
「イゼベル先生。オレは今図書委員の仕事で忙しいんですが」
「どう見てもマルル先生と喋っていて、暇だろうが。いい訳しねぇでサッサと来い」
「ですから。図書委員の仕事で忙しいんです。そんなに人手が欲しいなら、マルル先生に手伝ってもらえばいいじゃないですか。オレよりもお暇ですよ」
「あ? そうなのか? なら手伝ってくれ」
「えぇ勿論ですよ。ではラザ、ぼくはこれで失礼しますね」
マルル先生とイゼベル先生は図書室から出る。マルル先生の顔が笑顔だったのは言うまでもない。残っている時間で、オレは魔物の解体書の書き写しをする。