第37話 説教
「ラザちゃ~ん。大きくなったら何になるの~?」
「おおきくなったら、きしになる~」
「そう騎士になるのね。騎士なってどうすの?」
「きしになっていえをまもるの~」
「家を護るのね。偉いわラザちゃん」
オレは目が覚めて、全く知らない天井に驚く。身体を動かすと痛みを感じる。オレは身体を動かすのをやめて、さっき見た夢を思い出す。
あの夢は【ラザ】の記憶だったのか? 見えたのはお母さんだけだったから、自分の姿が分からなかった。でもお母さんは少し下を見て、口を動かしていたから。きっと幼い時の記憶だろう。だからと言って、ラザの記憶が戻った訳じゃないだろうな。本来なら死んだ人が次の人生を歩むときは、当然前の記憶など無い。ごく一部を除いてな。だが何かしらの理由で『江崎洋治』の記憶が出てきて、逆にラザの記憶が封じられたのか? でもオレはあの時和利をかばって、トラックに轢かれて死んだ。これはもう確定でいいだろ。生きていたらこんな世界にいない。
考えていたらドアが開いて、誰かが入って来る。
「ラザ。今日も居眠りか?」
「今日「も」? オレはそこまで寝ていた気がしませんよ。おはようございます、イゼベル先生」
「っ! 起きていたのか・・・。永遠に起きねぇかと思ったよ。おはよう」
イゼベル先生はこっちに来る。イゼベル先生の顔は何処かホッとしている顔だった。
「それはすみませんでした。それで、オレは一体何にやられたんですか?」
「ゴブリンキングの棍棒でやられた。一撃で気絶してたぞ」
「そうですか。すみませんが起こしてくれませんか? 自分で起きようとすると、痛くて起きれないんですよ」
そう言うと、イゼベル先生はオレを起こしてくれる。
「イゼベル先生。オレはどれくらいの間寝ていました? それと被害の方も」
「今は20日だ。大体2週間くらいだろ。被害はお前とロヴァンとマルルとスティースたちだ。お前は重傷だがロヴァン身体中に怪我と片腕の骨折だけだ。今は腕に包帯を付けて退院。マルルたちはそこまで大きな怪我じゃなかったな。お前が寝ていた時は大変だったぞ~。事後処理しねぇといけねぇわー、合宿に参加した生徒たちの、家族たちに謝罪をしねぇといけねぇわー。色々メンドクサッかった・・・」
「そうですか・・・。オレの家族の方にも謝罪に?」
「あぁそうだ。母親とメイドと執事は悲しんでいたぞ。父親の方は全然そんな事は無かったな」
「アハハハ・・・」
オヤジはまぁあれで心配してるんだろうな。エメリー様たちが来る前に、一応は和解してるし。
「さてラザ。お前は憶えてるだろうな?」
「説教、ですよね。それよりペールは何処に?」
「ペールはお前の左側にいるぞ」
オレは頭を動かして左を見る。丸椅子の上の丸くなって寝ている。
「まさかオレがここに運ばれてから、ずっと丸椅子の上にいたんですか?」
「ずっとそこにいたわけじゃねぇが。お前が起きるまでその辺をウロウロしてたり、昼寝の時はお前の近くで寝てたぞ」
「そんな事をしてたんですか。起きたら謝らないとな・・・」
「そうしろ。で、お前の説教だが。ロザリーが来てからだ。個別で説教をすると時間がかかる」
「ロザリー様も説教ですか? 何をしたんですか?」
「アイツは騎士団と一緒に掃討に当たったんだよ。お前とロザリーは人の話を聞かねぇやつだな、えぇ?」
「本当にすみませんでした・・・」
「まぁお前の説教はかなり時間がかかると思えよ。何せエメリ―とエディスとクリス、そして冒険科の生徒からも説教を貰えよ」
「・・・・・・マジかよ」
「あぁマジだ。今のうちに言い訳を考えておけよぉ」
イゼベル先生と話していると、ドアがノックされる。イゼベル先生が許可を出すと、エメリー様たちが入ってくる。
「ラ、ラザさん!? 起きたんですか!」
「起きたのか! 身体の調子はどうなんだ?」
「やっと起きたんだ。いくら何でも遅くない?」
「キミは意外と酷い事を言うね・・・」
「あの・・・。そういっぺん喋らないでくださいよ。話が分かりませんよ」
「そうだぞオメェーら。ラザと話す前に先ずは説教だ。おいロザリー、お前もだからな」
「は、はい・・・」
その後イゼベル先生に説教され、エメリー様たちにも説教をされる。終わったと思ったら、スティース先輩たちがお見舞い来て。そのまま説教される。
9月1日。始業式が終わり教室に行く。オレは8月30日に退院出来た。医者には「治癒魔法で治してはいるが、完全には治ってない。あまり派手な動きをするな」っと言われた。後は月1回病院に通う事になっている。入院中にイゼベル先生から2年生と3年生の、騎士科の合宿のを聞いたが。中止になった。まぁ宿の近くのゴブリンの集落があったから、他の場所にあるかもしれないから、捜索と集落の破壊のために中止になったんだろう。そう言えばあんな事があったんだ、国王陛下から呼び出しがあるんじゃないかと思ったが、特に無かった。ビクビクしながら入院生活を送っていたよ。
今日からオレは無事学園生活に戻れる。そして少し面倒な2学期が始まる。