第36話 当然のように
「ハァ・・・ハァ・・・。お、終わりか?」
「・・・・・・どうやら終わりみたいだな。つ、疲れた・・・」
「ふぅ・・・。使い魔がいなかったら、今頃死んでましたね」
「そうだな・・・。あぁ~当分動けねぇーぞ。騎士団はまだか?」
「そう簡単には来ないだろ。機動隊でどれだけ早く来るか、分からないからな」
「出来る事なら、早く来てほしいものですね」
休憩をしていたら、左右からまたゴブリンが現れる。
「おいおいおい! まだ出てくるのか!? ふざけるんじゃねぇぞ!!」
「・・・無理ですね。使い魔たちも疲弊してます。同時にワタシたちも。これは今度こそ死にますね」
「あー! 短い人生だったな!」
すると、ゴブリンどもの上から粉雪らしきものが降っている。その粉雪がゴブリンどもに触れたところからどんどん凍ってく。
「お、おい。どうなってやがるんだ? 何でゴブリンどもが凍ってるんだよ・・・」
「し、知らないよ。誰かが魔法で凍らせてるんじゃないか?」
「ですが、こんなことが出来るのでしょうか?」
「――――――ペールさん? 何でじわじわと凍らせてるですか? 一気に凍らせた方がいいのでは?」
「クゥゥゥゥゥゥ」
「わっ、顔が完全に悪い人の顔だ。その顔は止めてくれよ」
オレは歩いてスティース先輩たちの方に行く。
「良かった。生きてましたか!」
「ラザ・・・。オメーなに戻ってきやがってるんだ!? 死にてぇのか!?」
「別に死ぬ気は無いですよ。先輩方は動けますか」
「今動けないんだ。ここで休んでからすぐに下に下りるよ」
「そうですか・・・。オレは先に進むんで、先輩方はそこで休んでください」
「はぁ!? オメーは先に進む気か! オメーもここに残れ。いつか騎士団が来るんだろ。それまでここで待ってろ」
「でも先生方は戦ってるんですよね。なら加勢に行きますよ」
オレはそう言ってペールと一緒に気配遮断を使い、走って先に進む。
「待ちやがっ―――もう消えやがった・・・」
「あ、相変わらず気配遮断は凄いですね」
「アイツ絶対に冒険科じゃなくって、暗殺科に行くべきだろ」
走りながら氷魔法でゴブリンを殺して行く。
あんまり魔法を使うと、魔力が無くなってしまうな。もう少し魔法を使うのを抑えないと。着いたときに魔法が使えないってなっていたら、来た意味がないよな。
走っているとマルル先生を見つける。オレは気配遮断と解かずに、そのままゴブリンを斬り殺す。ペールは魔法を使いながら殺して行く。殺し終わったらマルル先生を見る。身体はボロボロで地面に跪いてるが、命を落とすことは無いと思う。
「――――――ど、何処にいるかは・・・、わ、分かりませんが・・・。言っておきます。今すぐに逃げてください」
「マルル先生。それは聞けません。オレはイゼベル先生とロヴァン先生の所に行きます」
「――――――っ却下します」
「すみませんマルル先生。説教は後でいくらでも聴きます」
オレはそう言ってペールと一緒に走って先に行く。
後はイゼベル先生とロヴァン先生だけど、イゼベル先生は無事としか思えない。あの人が負ける所なんて見た事が無い。オレ含め13対1でも、余裕でイゼベル先生が勝からな・・・。イゼベル先生より心配なのはロヴァン先生の方だな。間に合うといいが。
もう少し早く走ると、ロヴァン先生らしき人物が見えた。更に進むとイゼベル先生らしき人物を見つける。オレは気配遮断を解いて、そのままゴブリンの方に行って斬り殺す。
「―――ラザか!? なにしに来やがった。だか今はいい、お前はロヴァンを護れ!」
「分かりました!」
あの人当然のように無傷だな!
オレとペールはロヴァン先生の所に行く。ロヴァン先生を見るとかなりボロボロになっていた。だが運が良く、身体に剣や短剣などが刺さって無かった。オレはペールにオレとロヴァン先生の周辺にいる、ゴブリンを近づかせないように言う。ペールは頷き、氷魔法でゴブリンを殺して行く。オレは空間から応急手当が出来る道具を出して、ロヴァン先生の傷を治していく。
これで良し。応急手当が出来て良かった・・・。正直1人でやるものじゃないけど。
道具を空間の中にしまって。オレはすぐにイゼベル先生とペールの加勢に入ろうとしたら、常にゴブリンたちは死体に変わっていた。イゼベル先生とペールがこっちに来る。
「おいラザ、わたしが言いてぇこと分かっているよな?」
「はい・・・。勝手に王都から出て助けに来てしまい、すみませんでした」
「分かってるじゃねぇか。お前の説教は後だ、今は逃げるぞ」
「はい」
「よし。ならお前は―――、避けろ!!」
瞬間。ラザは左腹から棍棒が当たり、そのまま右側に吹き飛ばされる。わたしはラザが吹き飛ばされた方を見る。すぐにペールがラザの所に行く。わたしはラザを拭き飛ばした奴を見る。
「ゴブリンキングか・・・。てめぇはなにわたしの可愛い教え子に手ぇ出してんだ? 肉塊にされる覚悟は出来てるだろうなぁ!!」
素早く移動して剣でゴブリンキングの右足を斬る。右足を切断されたゴブリンキングは跪く。剣を投げ捨てて空間から斧を出して斧で斬っていくが、最後まで斬らずに違う所を斬って、また違う所を斬る。それを繰り返し言葉通りにゴブリンキングを「肉塊」に変えていく。
「はぁ・・・はぁ・・・、わたしの可愛い・・・教え子に手ぇ出すから・・・こうなるんだ・・・・」
斧を肉塊に刺して、わたしは少し後ろに下がりその場に座る。
あぁー疲れた・・・、もう動きたねぇー。でも駄目だ、ラザの容態を確認しねぇと。
立ち上がりラザの方に行く。ラザの所に行くと、ペールはラザの身体の一部を冷やしている。何処かの骨が折れたのだろう。手首を握り脈を確認をする。
まだ脈は動いてる。まだ死んでねぇ。しっかしどうするか。ロヴァンだけならいいが、ラザも一緒に運ぶのはちょっと厄介だな・・・。とりあえずラザの応急手当を―――。
小さい音だがこっちに何かが来る。わたしは空間から剣を出して構える。音はどんどん大きくなる。そしてわたしはこの音に気付く。馬が走っている音だと。目視出来る距離まで馬が来て、馬に魔道具が装備されているのを見て、わたしは騎士団が来たと確信した。騎士団はこちらに来てその場で止まる。
「無事でしたか!」
「あぁ何とかな。来て早々悪いが、生徒と教師を至急病院に連れて行ってくれ」
「分かりました。残りのゴブリンは、我々が掃討しておきます」
「頼む」
「イゼベル先生! ラザは、ラザは無事なのですか!!」
「なっロザリー。お前まで来たのか!? ラザは生きてるが、重傷だ。そこのお前、なぜロザリーがここにいる?」
「ロザリー様が「意地でもついて行く」と言われましたので。致し方がなく連れて来ました」
「お前クビになるぞ・・・」
「その覚悟は出来てます」
「イゼベル先生。私はこのまま騎士団と共に、ゴブリンの掃討に当たります」
「駄目だ。っと言いたいが、どうせ聴かないだろ。責任はわたしが持つ。生きて帰ってこいよ、じゃねぇと説教が出来ねぇからな」
「はい!」
わたしはラザとロヴァンを見るが、常に馬で移動しているようだ。わたしも誰かの馬に乗っている騎士の後ろに乗り、王都に帰る。