第34話 しんがり
王都の北門にて。
「あ~今日も暇だな~・・・。何か面白いことはないか?」
「ねぇーよ。俺も暇なんだから我慢しろよ」
「ヘイヘイ。しっかし門番って暇な仕事だよな。まぁ給料はいいけどよ」
「暇な仕事なのは同意する。が、俺たちが怠けると大変な事になるぞ」
「そーだな。んぁ? 何か砂煙が巻きあがってないか? しかもこっちに来ている」
「構えた方がいいな。お前はすぐに他の奴を呼びに行け」
「あいよ!」
トリスは他の奴を呼ぶために詰所に行く。俺は武器を構える。
「――――――人? それと魔物、いや使い魔か? もしかして追われているのか?」
その人が俺の所に来て止まる。そのまま空間から手紙出して、俺に渡してくる。
「シエルティス学園の生徒です! すぐに手紙を騎士団に届けてください! 宿の近くにゴブリンの集落が発見しました!!」
「なに!?」
俺はすぐに手紙を受け取る。それと同時にトリスたちと他の門番が来る。
「おい何が来たんだ? ってシエルティス学園の生徒か。どうしたんだ?」
「おいトリス、この手紙をすぐに騎士団に持って行け」
「はっ!? オレ今来たばっかだぞ! それにまもっ」
「いいから早く行け! 学生と教師たちが危険な状態なんだ!!」
「あぁクソ、分かったよ!」
俺はトリスに手紙を渡す。トリスはすぐに騎士団のいる所に行く。俺は他の門番に指示を出して、生徒を詰所まで行って状況を確認をする。
オレは門番の人に状況を説明をする。
「なるほど。だからラザくんは先にここに来たと。それで他の生徒と先生は、逃げる準備をしているのか?」
「準備を終えてもう王都に向かってると思います」
「そうか・・・。しかし戦おうとせず、よく逃げる事を選んだな。確か教師は3人しかいなかったはずだが」
「その3人で話し合った結果、逃げの一手になりました。・・・あの。先ほど騎士団に手紙を渡してほしいと、言いましたが。あの手紙が嘘だと思わなかったんですか?」
「思わないな。ラザくんは知らないだろうが。あの手紙の色は黄色だった。その手紙は至急騎士団の方に行くようになっている」
「そう、ですか・・・」
だから疑わずにすぐに騎士団の方に、届けに行ったのか。・・・オレここにいていいのか? 騎士団が今すぐに動けるわけじゃない。もし、もし騎士団の到着が遅かった? オレだけ生き残ってのうのうと学園生活を送れと言うのか?
「まぁ時期に騎士団も動く。その間ここで待ってろ。今飲み物を持ってきてやる」
そう言って門番の人は立ち上がって、部屋から出る。オレは右を見て床に座っているペールを抱き上げる。
「・・・なぁペール。オレさぁ、皆を助けに行こうと思うだ」
「クゥゥ!? クゥクゥ!」
「行かない方がいいって? 確かにそうだろうな。でも行かなかったら後悔すると思うんだ。行っても後悔するかもな。でもそれでもいいんだ、誰かを助けたいって思うんだ。ペール、聞いて驚くなよ。オレは一度死んで転生してるんだ」
「・・・・・・クゥ?」
「・・・ハハハ、まぁそんな顔をするよな。馬鹿かもしれないし、愚か者かもしれないが。それでもオレは助けに行くよ」
「クゥ・・・。クゥクゥゥ!」
「ペールも来るのか。そうだな一緒に助けに行こうか」
オレは立ち上がり気配遮断を使って、部屋から出て詰所から出る。そのまま北門から出て、宿がある方に走って行く。
宿から出て数分が立つ。今の所魔物は来ていない。
「クソが。何で近くにゴブリンの集落あるんだよ・・・。折角の合宿が無駄になったじゃねぇか・・・」
「スティースは合宿が始まる前から、そわそわしてたもんな」
「その合宿の楽しみを奪われましたからね。ご立腹ですね」
「うるせぇ! 楽しみしちゃいけねぇ―のか!?」
「全然。おれも楽しみにしてたからな」
「ワタシもですよ。正直2年生とラザさんが羨ましいですよ」
「――――――ほぅ、なら冬休みも合宿でもやろうか?」
「「「えっ?」」」
「そこまでわたしの特訓が受けてぇなら仕方がねぇが。メンドウクセェーが、オメェーらがやりてぇって言うなら仕方がねぇよな」
「あ、いやその・・・。何と言いますか~・・・」
「言葉の綾と言いますか・・・。間違えと言いますが・・・」
「・・・・・・」
「ハッ、無駄口を言ってねぇで。サッサと走れガキども」
「「「はい!」」」
スティースどもは走って行く。
それにしてもロヴァンのやつが、ゴブリンの集落を見つけたおかげで、早い段階で逃げ出すことが出来たが・・・。生徒どもがいなければ、わたしがゴブリンの集落に襲撃しに行けたものの・・・。ッチ、今年に入ってから運がねぇな。まぁ仕方がねぇ、今は生徒どもを無事王都に―――、気付かれたかっ!
わたしは鞘から剣を抜いて、こっちに襲い掛かるゴブリンを斬り殺す。
「なっ!? ゴブリンどもに気付かれたか!?」
「イゼベル先生加勢します!」
「馬鹿がっ! しんがりはわたしがやる、オメェーらは逃げろ!」
「・・・ッチ、逃げるぞ!」
「は!? 何で逃げるんだよ!」
「察しろよ、俺たちは足手まといなんだよっ!」
「今ので分かるのかよ!?」
スティースどもを含め、生徒どもは逃げていく。ゴブリンどもを見ると少しづつ増えてくる。
「さぁーて、オメェーらゴブリンどもには。わたしの鬱憤晴らしに、付き合ってもらうぞ!」
剣を持ってゴブリンどもに突っ込んでいき、片っ端からゴブリンどもを殺して行く。