第33話 緊急事態
活動報告を書きました。この作品ではあまり関係無いかもしれませんが。
お手数ですが、『小説情報』から作者名『颯馬』をクリックして、左側にある活動報告「転載について」を一度確認してください。
野営が終わり時間が経って合宿5日目。昨日から部屋でスティース先輩たちが、夏休みの宿題を徹夜でやっている。
「クソがっ!! 何でこんなに宿題があるんだよ!?」
「まぁ夏休みは1ヶ月以上も休みがあるんですから、宿題も多くなるのは当然ですね」
「ラザはとっくに宿題を終わってるんだろ。出来れば変わってほしいな・・・」
「ダメですよサハル。これはワタシたちがやる宿題ですよ。それにラザさんは1年生です、ワタシたちは3年生。習っている授業内容が違いますよ」
確かに授業内容は違うけど。チラッと宿題内容見たけど、中学3年生レベルだから。解こうと思えば解ける内容だな。
「でも1人でやるより、3人でやると捗るな。スティース、その計算間違ってるぞ」
「あ? ・・・マジだ。助かるわ」
「サハルはその文字は間違ってますよ」
「・・・本当だ。書き直さないとな」
「フェルリスのその調合結果の答えが、間違ってるぞ」
「・・・あぁ確かに間違ってますね。訂正しなければ」
こんな感じで先輩たちは、宿題を終わらせようとしている。因みにオレは先輩たちの、給仕みたいなことをしている。本当は寝たかったけど・・・。
「そろそろ飲み物のおかわりを持って来ますね」
「あぁワリィな」
オレはトレーの上にコップを置いて、トレーを持って部屋から出る。そのまま食堂の方に移動してると、少し怖い顔をしたイゼベル先生に会う。
「おはようございます」
「あぁおはよう。悪いが、今すぐ冒険科の生徒を起こせ。起きた奴らに『緊急事態の為すぐに食堂に来い』と言ってくれ。そのトレーはわたしが持って行く」
「わ、分かりました・・・」
オレはトレーをイゼベル先生に渡して、すぐに冒険科の生徒がいる部屋に行って、先輩たちを起こして食堂に行くように言う。全冒険科の生徒たちに、伝え終わったらオレは先に食堂に行く。
時間が少し経つと、騎士科の生徒と冒険科の生徒が集まって来る。待っていると騎士科の1人の先生が話し始める。
「皆さんおはようございます。朝早くから起こして申し訳ないですが、緊急事態の為皆さんを食堂に集まってもらいました。驚かずに落ち着いて聞いてください。今から1時間前に宿の近くに『ゴブリンの集落』が見つかりました」
それを聞いた生徒たちは驚く。オレも驚く。
ゴブリンは単体あるいは5体までは、1人でも対応出来る。1人が強ければ関係が無いけど。ただ集団にもなれば話は別になる。それが集落を作っているとなると、ゴブリンの数は50は超えるだろう。戦おうとしたら、冒険科の生徒はオレを含め13人。騎士科の生徒は1年生で25人、2年生は6人。各科目先生は合計で3人。合計47人。そしてオレ含め戦闘経験は半分以上が素人。どう考えても戦うには無理がある・・・。
「マルル先生。ゴブリンの数は一体どれくらいいるんですか?」
1人の生徒が質問をする。
「数は不明です。が、集落を作るくらいなので50以上はいるかと」
「では偵察などの許可を貰えますか?」
「それは却下です。貴方が騎士なら許可を出していましたが、今の貴方は学園の生徒です。大概の意見は却下されると思ってください。それに許可が出ても、貴方は上手く偵察が出来るのですが?」
「そ、それは・・・・・・」
「出来もしない事は言うものでは無いですよ」
「――――――ラザ。ラザ・メルト・カルバーンなら、偵察は可能なのでは?」
1人の生徒がオレの事を言う。すると何人かの生徒はオレを見る。
「確かに彼くらいの気配遮断があれば、上手く偵察が出来るでしょう。ですが彼は偵察をしたことはあるのですか?」
「どうなんだラザ?」
「あります。ですが50を超える偵察は、やった事はありません」
「でしたら許可は出来ません。仮に出来ても許可はしません。質問が無ければ話を続けます。ロヴァン先生とイゼベル先生そしてぼくで、話し合った結果。ここから逃走する事にしました」
それを聞いた生徒たちは納得する。
「ま、待ってください! 自分たちには使い魔がいます! その使い魔と一緒に戦えば、勝機はあると思います!」
納得しない生徒は勿論いるよな。
「聞きますが。貴女は使い魔と連携は出来ますが? 言っておきますが。その場で連携が取れるようになる、って言うのは無しですよ」
「・・・・・・無理です」
「では逃げの一手です。ですがただ逃げるだけでは、ゴブリンの集落は拡大していく一方でしょう。なのでこちらはすぐに騎士団が動けるように、足の速い方が先に王都に戻ってもらいます。この中で足の速い生徒はいますか?」
オレは無言で手を上げると同時に、生徒たちが一斉にオレを見る。
「・・・やはりラザが適任のようですね。ラザはすぐにぼくの方に来てください。後の説明はロヴァン先生に聞いてください」
オレはマルル先生の方に行く。
「申し訳ございません。貴方に責任重大な事を押し付けてしまって」
「別に平気ですよ。ただ今度合宿をやる時は、ちゃんと周りを確認してください」
「騎士団に見回りをしてもらったのですが・・・。今回はぼくたち教師と騎士団の怠慢が招いた結果です」
「反省は後でいいと思います。今は王都に一刻も早く戻る方が先です」
「・・・・・・そうですね。では貴方にこの手紙を渡します。これを王都の門番に届けてください」
「分かりました」
マルル先生から手紙を受け取って、オレは空間の中にしまう。
「すぐに準備をしてください。それが終わればすぐに王都に行ってください」
「はい」
マルル先生はロヴァン先生の方に行く。オレはペールを呼び出す。
「クゥ! ・・・クゥゥ」
「何か顔を見ただけで解ってるような気がするな。これから走って王都に戻るぞ。ペールはオレを護衛してくれ」
「クゥ!」
オレはすぐに準備を終わらせて、宿から出て走って王都に行く。