第32話 面白い過去
夜。野営の準備をして今日はそこに泊まる。1年の冒険科はオレだけなので、同じ1年の騎士科のエリオットたちと一緒になる。エリオットの友達、バルナとカウルはテントで寝ている。
「こうやってラザとゆっくり話すのは、寮の挨拶くらいか?」
「そうですね。あんまり話す機会は無かったですね。バルナさんとカウルさんとは、よく喋りますが」
「うぇ!? アイツらとは喋るのかよ! 一体どんな話をしてるんだ?」
「基本的には、エリオットさんとフランシスさんの嫉妬話ですね。「いつもあんな美人な精霊と一緒にいれてズルい」とか「あんな美人に踏まれたい!」って言ってましたよ」
「ちょっと待て、踏まれたいって言ったのはバルナだろ!」
「いえカウルさんでしたよ。何かそう言うのに目覚めたって言ってましたよ。何が原因か分かませんが」
「・・・俺は今後カウルの事を、どんな目で見ればいいんだ?」
「普通の目で見ればいいのでは? こういうのは大体すぐに忘れるものですよ」
「そ、そうか・・・」
するとエリオットは何かを考え始める。少ししたらオレを見る。
「なぁラザ。ラザに言ってもしょうがないが、言ってもいいか?」
あぁ~・・・、別に聞かなくてもいいけど。本来ラザはエリオットと友達になるはずだったが。オレが変な事をしたから、友達にはならなかった。ここでエリオットの話を聞くのは、罪滅ぼしにはなるかな。
「エリオットさんが気晴らしになるのであれば、オレは話を聞きますよ」
「悪いな。実は俺さぁ・・・、2年になったら騎士科をから精霊科に、転科しようと思ってるんだ。ただちょっと・・・」
「―――何だ妾の主よ。まだそんな事を悩んでいたのか?」
急にエリオットの精霊、フランシスが現れる。
「フ、フラン! いつも言ってるが急に現れるなよ!」
「許せ主よ。妾はいつまでも決められぬ、主が心配で出て来たんだ」
「別にお前に心配される事じゃないよ・・・」
「妾は心配で心配で夜も眠れん。はよ決めぬか? 主の友は反対はしてなかろう」
「そ、そうだけど・・・」
「あの~イチャイチャするのであれば、オレはちょっと離れましょうか?」
「ばっ! 馬鹿じゃないか! い、イチャイチャしてねぇーよ!」
いやオレの目の前でしてただろ・・・。
「――――――・・・其方。実に面白い過去を持っておるな」
「はい? 何のことですか?」
「あくまで白を切るか・・・。これは召喚される人を間違えたか?」
「ちょフラン!? いくらそれが冗談でも、俺は怒るぞ!」
「許せ主よ。つい言わなければいけないと、妾は思ったのだ。安心しろ主よ、妾の身体と心は常におぬしの物だ。今更他の者に惹かれることは無い」
「お、お前・・・ズルいぞ・・・」
わっ、それ逆だと思うぞ。それだと女性が攻めで、男性が受けになってるぞ。
「(―――っと言ったが、真に惜しいことをした。何故妾は彼の所で召喚されなかった? ・・・まぁ今更どう思っても手遅れな話よ。だが、だが許されるなら。過去に戻り彼の所で召喚してほしいものだな・・・)」
「えぇっと、精霊科に転科の話でしたよね。別にしたければすればいいんじゃないですか? バルナさんやカウルさんは、特に反対はされてないんですよね?」
「・・・あぁそうだけど。・・・情けないないよな。最初は騎士になろうって決めていたのに、今じゃあ精霊使いになりたい自分がいる・・・。これじゃあどっちつかずで、終わりそうだな」
「そんなに悩むなら、両方なればいいんじゃないですか?」
「両方? そんなのダメじゃないか? 騎士なのか精霊使いなのか、分からなくなるだろ」
「そうかもしれませんが、2つで悩んでいるならいっそ、2つを取った方がいいと思いますが。まぁかなり苦労はしますが」
「お前って意外と欲張りだな・・・。でも欲張って2つ、か・・・」
「人と言うものは欲張りな生き物だな」
「人じゃなくても、欲張りな生き物はいますよ。エリオットさん。これは1つの道です。エリオットさんが何になるかは、全て貴方次第です」
「そうだな。悪いな変な事を聞かせて! 転科で悩むより、先ずはこの合宿を無事終わる方が先だったわ!」
「そうですね。・・・先に謝ります、すみませんでした」
「えっ、何で急に謝ってるんだよ? ラザは俺に何かしたのか?」
「いえ。これから起きる事に対しての謝罪をしてるんです。多分オレの所にイゼベル先生が来ます」
「ま、マジかよ・・・。カウルから聞いたけど、めちゃくちゃ強いんだろ・・・」
「あれは完全に化物ですよ。イゼベル先生に勝てる人間なんて、ほぼ存在しませんよ」
「――――――化物で悪かったな」
イゼベル先生の声が聞こえた瞬間、オレはすぐに後ろに下がり、空間から木剣を出す。少し遅れてエリオットも下がる。
「ラザ、お前はいつからわたしの存在を気付いていた?」
「さぁ? それを教える必要は無いと思いますが」
「それもそうだな。なら行くぞ!」
イゼベル先生は木剣を持ってこっちに来る。オレは木剣を構えてイゼベル先生の攻撃を防ぐ。
「エリオットさん! すぐに2人を起こしてください! 流石に2対1では、分が悪いです!」
「2対1!? よく分からないが、2人を起こせばいいんだな!」
「避けろ主!」
「うわっ! あっぶねー・・・」
もう来た!? いくら何で早くないですかね! ロザリー様!
「主。この小娘の相手は妾がやる。はよ友を起こしてこい」
「助かるよフラン!」
俺はテントで寝ている2人を起こしに行く。
「まさか噂の上位精霊と戦えるとはな・・・。相手にとって不足無し、ゆくぞ!」
「侮るなよ小娘。そこらの精霊とはわけが違う事を、小娘に見せてやろうぞ!」
私は上位精霊に向かって走る。
「いいんですか! あまりオレに時間をかけると、他の所に襲いに行けませんよ!」
「んな事は分かってる。が、お前には一度ボコボコに、なってもらわねぇとな!」
「それは・・・教師として・・・、どうなんですか・・・!?」
オレは木剣でイゼベル先生の木剣の連撃を防ぐ。何処か打開できるところを探すが、イゼベル先生の隙が無い。隙を探していたら木剣が手から離れる。そのままイゼベル先生は、上から大振りで木剣を振り下ろそうとするが。オレはその隙を見てイゼベル先生の懐に入ろうとする。
「あめぇ!」
オレの左横に魔法陣が出て、そこから大きな水玉がオレに当たる。痛くはないが態勢が崩れる。その隙を狙われてオレはイゼベル先生にボコボコにされる。
「―――あースッキリした! ロザリー、次行くぞ!!」
「は、はい!」
イゼベル先生とロザリー様は他の野営してる所に行く。
「くそ! もう少し勝てたのに!」
「落ち着けよエリオット。今回は勝てなかったが、次は勝てるって」
「そうですよ。次勝てばいいですよ」
「・・・なんかお前ら冷静過ぎないか?」
「気のせいですよ。それよりラザ君を見た方がいいですよ」
「あ! そうだった」
俺は急いでラザの方に行く。
「ラザ無事か!?」
「・・・・・・無事ですよ。身体のあちこち痛いですが」
「お前スゲーよ。ロザリー様と1対1で勝てるんだから。俺たちなんか3対1でも負けるんだぜ」
「あれは気配遮断を使えるからですよ。イゼベル先生相手ではあんまり意味が無いですがね・・・」
「イゼベル先生は別格だ。あんなに動きが速いんだ、俺たちには無理だ」
「そうですか。さて見張りを続けますよ」
先にペールを呼び出しておけばよかった・・・。ペールを呼んでおけば少し変わったかな?
オレは立ち上がって見張りをしようとしたが、バルナさんとカウルさんに休めと言われ。オレはテントに入って休むことにした。