第31話 賭け事
騎士科と冒険科の模擬戦が始まり、少し時間が経つ。
「ハッ! 動きがおせぇ!」
「ぐわっ!!」
「かっ・・・!」
「おいおいウソだろ!? こっちは5人で戦ってるのに、何でこうも一方的にやられるんだ!?」
「知らないわよ! え、ちょ。こっち来ないでよ!!」
「おいおいもう戦意喪失かよ!? 雑魚じぇねぇか!!」
5対1をものともせず。スティース先輩は、騎士科の生徒をどんどん倒していく。そのままスティース先輩の勝利で終わった。
「だらしねぇーなぁ! 案外騎士科の連中は大したことねぇじゃねぇのか?」
「スティース先輩。相手は1年生ですよ。まだ弱いのは当たり前ですよ」
「あ? それもそうか。なら2年と是非相手をしてぇな」
「スティース先輩はもう終わりですよ。大人しく見学してください」
「そうですよ。次はワタシが戦いに行きますよ」
「負けるんじゃねぇーぞフェルリス!」
「分かってますよ。負ける気は一切ありません」
フェルリス先輩が前に出る。騎士科の方も生徒たちを出す。
あ、エリオットたちだ。あぁきっとあの3人も負けるんだろうなぁ・・・。
見ていると模擬戦が始まる。
「相手は魔法使い。一気に叩きに行きますよ!」
「「おう!」」
エリオットたちはフェルリス先輩に突撃をする。が、フェルリス先輩は棒で3人を叩きのめす。
「―――ま、魔法使って・・・、に、肉弾戦が・・・出来るの・・・か・・・?」
「出来ますよ。何せ必須だったので」
「「「あ、ありえない・・・・・・」」」
早かったな~。まぁ相手は3年生だから、オレたちより2年早く習っているから。オレたちより強いのは、当然と言えば当然何だろう。
「流石フェルリス。魔法を使わずに倒すとは、実はそっち方が得意になったのか?」
「そんな事はないですよ。ただ魔法を使う前に相手が倒れただけですよ」
「これで5勝だな。問題はモヤシポニテだな・・・」
「―――あら、わたくしがそう簡単に負けると、お思いになるのかしら?」
「ハッキリ言う。オメー絶対に負けるだろ」
「ハッキリとおっしゃりますわね・・・。ですがわたくしは、たいそう負けず嫌いですの」
そう言ってナタル先輩は前で出る。騎士科の生徒たちも出てくる。そして模擬戦が始まる。
「気を付けろよ。魔法を使うと見せかけて、格闘戦持ち込むかもしれん。慎重に行くぞ!!」
「「「おう!」」」
「わたくしは前で御遊びになるより、後ろで御遊びをした方がたいそうお得意のよ」
ナタル先輩は魔法で騎士科の生徒たちに、当たらないように雷魔法で雷を落す。
「わわわわわわわわっ! か、雷が降ってくるぞ!」
「慌てるな! これは当てる気のない雷だ! 少しづつ前に進むぞ!」
騎士科の生徒たちは少しづつ前に出て、ナタル先輩に近づいてくる。
「まぁ、そのまま前に来ますの。でもいいですわ」
するとナタル先輩は風魔法で、一気に騎士科の生徒たちを吹き飛ばす。審判が吹き飛ばされた、騎士科の生徒を見て。気絶をしていたようなので、ナタル先輩が勝利した。
「まことにありがとう存じます」
「マ、マジかよ・・・。モヤシポニテが勝ちやがりやがった・・・」
「少しは見直しましたか?」
「あぁ・・・。正直相手を弄んで戦うとか、スッゲードン引きしたわ・・・」
「たいそう見る目がない御人で。一度名医のお医者に目を見てもらった方がいいのでは?」
「喧嘩売ってるのかモヤシポニテ。丁度いい昨日は出来なかったんだ・・・。今ここで戦うか?」
「えぇ今ここでハッキリさせましょう!」
やば、止めないと!
「―――止めんか馬鹿どもが!」
イゼベル先生は、スティース先輩とナタル先輩の頭を叩く。
「ったく、少し我慢を憶えろガキどもがっ!」
「「は、はい・・・・・・」」
少し遅かった・・・。
「中々冒険科の生徒は強いですね・・・。少し侮っていましたよ」
「わたしが教えたんだ、いやでも強くなる。そちらの1年は随分と弱いが、ちゃんと教えてるのか?」
「ぼくはちゃんと教えてはいるのですが・・・。そちらがそれを上回っているので、何とも言えませんね・・・」
「・・・あの~、何故お2人はライバル視をしているんですか? 何かあったんですか?」
「あぁ? 別にライバル視はしてねぇよ。ただの賭け事だよ」
「そうですよ。ぼくの方が勝ったら『イゼベル先生は、ぼくの正式に婚約者』に」
「わたしの方が勝ったら『1週間学食を奢ってもらう』だ」
「何やってるんですか!? 何ここで賭け事をやってるんですか!! しかも賭けの内容が釣り合ってないじゃないですか!!」
「別にこまけぇことは気にするな。どの道わたしたちの勝ちなんだからよぅ」
「それよりオレたちは、賭けと言うのを知らずに戦っていたんですか?」
「生徒たちと1人の教師を騙して悪いと思ってますが、いい機会だったんでのつい」
「な、何て教師だ・・・。それでも教師なんですか? こんな賭け事をして。他の生徒がこれを知ったら苦情が来ますよ」
「ならその時はお前が何とかしろ。お前なら何とか出来るだろ」
「嫌ですよ。自分で蒔いた種は、しっかり自分で刈り取ってくださいよ」
「あぁ~解った解った。そろそろお前の出番だろ。負けてもいいから早く行け」
そう言われて、騎士科の人はもう前に出ていた。オレは急いでそっちに行く。
「彼とは随分と親しいようですね。彼のような人が趣味ですか?」
「ちげぇーよ。ただアイツと喋ってると、どうも同い年と思うんだよ。見た目は年相応何だが、精神面がどうもちげぇ。他の生徒は何かしら馬鹿騒ぎをして、学園生活を楽しもうとしてるが。アイツはちげぇ。周りから距離を置いてるが、生きる術を必死に学んでいる。その証拠にわたしや他の生徒たちには、絶対に敬語を使ってやがる」
「そうなんですか。ぼくは今日初めて会ったので、何とも言えませんが」
「なら話してみるといいぞ。絶対に生徒とは思え無くなってくるからな」
「ならこの合宿中に話してみましょうか。ところで彼が相手している人は、第1王女様なのですが。彼は何と思わず、第1王女様をボコボコにしてるのですが。いいのでしょうか?」
「・・・アイツ何か恨みでも晴らそうとしてねぇか?」
「あれは止めた方がいいのでは?」
「いや、もう終わりだ」
模擬戦はオレが勝利する。模擬戦が終わり、オレはスティース先輩たちの方に行く。
「勝ちましたよ~」
「・・・オメーよく戦う事が出来たな。相手は第1王女様だぞ。少しは手加減をしろよ」
「手加減をして第1王女様に花を持たせても、第1王女様は喜びませんよ。逆に怒られて再戦を言い渡されますよ」
「そうかもしんねぇけどよ。少しは遠慮って言うのを憶えろよ」
「これでかなり遠慮してますよ。その証拠に一度も魔法を使ってません」
「オメーは・・・」
「―――おいオメェーらも集まれ。次の行動を説明するぞ」
オレたちはイゼベル先生の所に行く。次は夜の野営についての説明が始まる。