第24話 人に会う
次の日。目が覚めてオレは起きて、隣で寝ているペールの頭を撫でる。オレはベッドから下りて、私服に着替える。
今日はエメリー様たちが来る・・・。トーマスさんに気配遮断を教わりながら、家で過ごそうとしてたのに。何で来るのかな? 試験勉強をしてる時に、帰省する日を聞かれた時に、もう少し疑うべきだったな。まぁ来てしまうのはしょうがない。諦めよう。
それより【ラザ】の一部の記憶とかは何処にいったんだ? 学園に入学する前の記憶を思い出そうとすると、中々思い出せない。思い出したのは入学前の時でほんの一部か、人に言われて一部思い出すくらい。何でオレはラザになったんだ? よくある神に会って~っていうのは無かったし。入学する前に一部の記憶を思い出したけど、ほぼ江崎洋治の記憶がある状態だしな。・・・考えても分からないな。こう言う答えは永遠に出ない事もあるし、今はどうやって生きていくかを考えないとな。
「クワァァァァ・・・・・・」
「おはようペール。よく眠れたか?」
「クゥ!」
ペールは起きてすぐにオレの方にきて、オレの身体を上って首裏の方に巻くように座る。オレはそのままリビングの方に行って、朝ご飯を食べる。
数時間後。オレたちは玄関の所で待機している。
「・・・親父、少しは落ち着いたらどうだ?」
「おおおおおお前は逆におおお落ち着きすぎだ! 王族がウチに来るのだぞ、これが落ち着いていられるか!」
「今ここで落ち着かないと。第1王女様方が来た時、もっと落ち着かなくなるぞ」
「解ってる! 解っているが・・・!」
「駄目だこれ・・・」
「領主様! そろそろお見えになります!」
「く、来るのかっ! おおおおお前達、かかかかか覚悟を決めろ・・・!」
これから人に会う覚悟じゃねぇだろ・・・。完全に死に行く騎士の覚悟だろ・・・。
馬車が門をくぐりオレたちの前に止まる。馬車からロザリー様たちが下りてくる。
意外と普通の馬車出来たのか。まぁ王族の馬車で来るよりマシだが、護衛の馬車がいるだけで目立っているから。ちょっとマイナスか?
「ええええええ遠路はるばる起こしていただき、あああありがとうございます・・・。何も無い所ですが、どうぞごゆっくりしていってください」
「あぁ。31日の朝まではゆっくりしていこう」
「そそそそそそうですか・・・!」
「おはようございますラザさん」
「おはよー・・・」
「おはようございます。エディスさんの顔を見れば分かりますが。色々大変そうでしたね」
「ヤバかった・・・。エメリーのお姉さんとクリスさんと一緒にいると、こっちはもうどうしていいか、分からないよ・・・」
「それだけ分かればいいですよ。エディスさんに気まずい気分を味わってもらえるだけで、かなり満足できます」
「酷くないっ!? 何か恨みでもあるの!?」
「ありますよ。よくもオレの貴重な夏休みの一部を潰してくれましたね。折角ゆっくり出来ると思ったのに・・・」
「まぁそれは、日ごろ人と関わらないようにしてるから。今日みたいなことになるんだよ」
「そうですよ。それと、これはお土産です」
エメリー様が持っていた箱をオレは受け取る。
「これは何ですか? 何か見た事がある箱なんですが・・・」
「クゥー?」
「箱の中にはケーキが入っていますよ」
「あぁケーキですか。・・・ケーキ? 何でケーキなんですか?」
「あれ、ラザはケーキが好きじゃなかったっけ? 前にケーキ屋でラザとペールを見たけど。実はそんなに好きじゃなかった?」
「好きですよ。ってちょっと待ってください。いつですか? いつオレとペールがケーキ屋で、ケーキを食べている所を見たんですか!? 少なくても運動会が終わった次の日しか心当たりがないですよ!」
「その日に私とエディスと一緒に街で歩いていたら、たまたまラザさんとペールさんがケーキ屋で、美味しそうにケーキを食べていたので。ケーキと言うより甘いものが好きなのでは、って思ったのです」
「・・・確かに甘いものは好きですよ。まさかあの時いたとはなぁ・・・・・・」
「では客人の皆様。客間に案内しますので、どうぞついて来てください」
「馬車は自分が誘導します」
ロザリー様たちはトーマスさんについて行って、馬車はメールが誘導する。オレは箱を空間の中にしまう。
「・・・し、死ぬかと思った」
「親父・・・。言っておくが、オレがこの家から出るまで、あの人たちはここにいるぞ」
「解ってる! それよりもあのジョナスとノーマンだ。アイツらが先に来る前で良かったが、もし先に来ていたら・・・。考えただけで胃がキリキリしだした・・・」
「そう言えば帰って来るのが遅いな。何処かで道草食ってるのか?」
「―――今帰りました!」
オレたちは声がした方を見る。そこには2人の男性が立っていた。多分この2人がジョナス兄さんとノーマン兄さん何だろう。とりあえず記憶あるように振舞わないと。
「おぉ帰って来たか・・・」
「父上。何故出迎えを? わざわざ出迎えをするほど俺達に何か、知らせたい事でもあるのですか?」
「あぁある。今日は第1王女と第2王女そして公爵家の令嬢が来ている。もう1人は・・・」
「もう1人は第2王女の友達だよ。そいつに何かしたら第2王女様は黙ってないと思うぜ」
「解ってる! 例え相手が平民だろうと、第2王女のお友達に手を出せば確実に処刑されるわ!」
「わ、我が家に王族と公爵家の令嬢が・・・。ついに俺の功績が認められ、会いに来てくれたのか・・・」
「流石兄さんです。一体今までなんの功績をあげたか知りませんが、そのポジティブは流石です」
「釘を刺しておくけど。絶対に変な事をするなよ。何か粗相な事をしたら、オレだけではなくウチ全体に被害が出るんだ。大人しくてくれよ」
「言うようなったな能無し。その台詞は逆じゃないか? お前が第1王女様達に粗相な事をするなよ」
落ちこぼれ? ラザは落ちこぼれだったのか?
「ジョナスちゃん? 弟に落ちこぼれって言うのは、どう言う事かしら?」
「は、母上! そ、それは言葉の綾と言うか・・・」
ジョナス兄さんはお母さんに怒られる。
「オレは一旦部屋に戻るよ」
「待てラザ! お前の首に巻いているそのフォックスは何だ!?」
「オレの使い魔だよ。アイスフォックスのペールだ」
「アイスフォックス? 珍しい使い魔を召喚したな。だかそれで俺の評価が変わると思うなよ!」
「別に2人の評価を上げる気なんて毛頭ないんだが・・・」
オレとペールは部屋に戻る。部屋の前に戻って来たら、ドアを開けて中に入る。
「あ、ラザが戻ってきた」
「遅かったな。一体何をしていたんだ?」
オレは一度部屋から出てドアを閉める。
「なぁペール。オレの目の錯覚なのか、オレの部屋にロザリー様たちがいたのだが。気のせいか?」
「クゥ―・・・」
「あぁ気のせいじゃない。オレの部屋にロザリー様たちがちゃんといたのか・・・。何でオレの部屋にいるんだよ・・・」