第23話 何の冗談だ?
7月26日。オレは馬車から降りて実家の門前に着く。門をくぐり玄関を開けると、両親と執事のトーマスさんとメイドのメールがいた。
「お帰り~。元気にしてた~?」
「元気にしてたよ。色々問題はあったけど・・・」
「なに!? ラザ、お前は一体何をした!? まさかカルバーン家に泥を塗ったのか!?」
「それだけで済むならどれだけ良かったか・・・。とにかくオレの学園生活は色々大変な事になってる」
「ラザ坊ちゃま。一先ず部屋に荷物を置いてから、リビングでお話をしましょう」
「そうですね。一度部屋に行って荷物を置いてきます」
オレは一度部屋の方に行く。
「ラ、ラザの奴一体何をやらかしたんだ・・・。今年は学園に王族が2人もいるんだ。その2人に何か粗相な事でもしたのか・・・!? い、いかん。い、胃が・・・」
「あなた。もう皆行っちゃいましたよ」
「な・・・に・・・? 私たちも行くぞ・・・」
オレは部屋に入り、とりあえず空間から荷物を出して片づけをする。その後ペールを呼び出す。
「クゥ」
「よっ、ペール。ここがオレの部屋だ。後で家族とかに合わせるからな」
「ククゥ!」
オレは少し休んでペールと一緒にリビングに行く。
「来たか。って何だのそのキツネは? お前の使い魔か?」
「そうだよ。アイスフォックスのペールだ」
「クゥ!」
「ほほぅ、アイスフォックスですか。珍しい使い魔を召喚しましたね」
「キツネですか? ラザ坊ちゃま、自分の使い魔はご存じでしょうか?」
「そう言えば知らないな。メールの使い魔はなに?」
「自分の使い魔はシルバーオウルです。「アルル」」
メールはシルバーオウルのアルル召喚する。アルルはメールの肩に止まる。
「ホゥー」
「銀色のフクロウ・・・。初めて見た」
「クゥ・・・」
アルルはメールの肩から下りて、ペールに近づく。ペールとアルルはお互いに挨拶をして、アルルは何処かに行き、ペールはそれについて行く。
「いいのかアレ? 勝手にどっか行ってるが」
「いいんですよ。アルルは家の中をしっかり憶えてます。きっと家の案内に行ったのでしょう」
「そうか。なら大丈夫か」
オレは椅子に座る。
「で、だ。ラザ、お前は何をやらかした? 私の胃がボロボロになるような事をしたのか?」
「何と言うか・・・。先ず第2王女のエメリー様を知ってるだろ?」
「勿論だ。逆に知らない奴はいるのか?」
「赤ん坊や子供なら知らないだろ。で、そのエメリー様と何か友達になってるっぽい・・・」
「なに!? 第2王女様と友達と!? よくやったラザ。お前には期待をしてなかったが、まさか第2王女様と友達になるとはな! ウチは安泰どころか爵位が上がるんじゃないか!?」
「まぁ・・・。でもラザちゃんは冒険者になるんでしょ。お家の跡継ぎはジョナスちゃんが継ぐから良いけど。ラザちゃんはどうするの? 騎士になるの?」
「ならないよ。オレは冒険者になるんだ」
「入学する1週間前に何を言いだすと思ったが・・・。色々あって条件を付けたが、今なら撤回するぞ」
「人の話を聞いてた? オレは騎士になる気は無いぞ」
「正気か? 今絶好のチャンスが来ているんだぞ。あわよくば次期国王になれる可能性があるぞ」
「話が飛躍してるが、オレはそう言うのは嫌なんだよ。あと次期国王になるには、第1王女のロザリー様と結婚しないと駄目だろ」
「それもそうだが・・・。しかし勿体ない。ラザ。やっぱり来年は騎士科にでもなったらどうだ?」
「嫌だ。あそこ行っても強くなれないし、冒険科にいれば様々な知識が手に入るから、絶対に騎士科にはいかない。他の科目にもだ」
「ならせめて友好関係は築いておけ。そうすれば我がカルバーン家も格が上がる」
「えぇ~、今のままで充分じゃん。爵位が上がると苦労する思うが」
「それくらい何てことは無い。こっちはやる気が出る」
「お話しのところ失礼します。旦那様とラザ坊ちゃま宛に手紙が届いております」
トーマスさんは親父とオレに手紙を渡してくる。
「これはどう見ても王家の家紋だよな・・・」
「おおちちちちつつつけけけけけっ!」
「親父が落ち着けよ・・・。先ずは中を確認をするか」
オレは手紙の封を切って中身を確認する。
何々に。「明日、私とエディスと姉さんとクリスさんで。ラザさんの家に行きます。エメリーより」・・・・・・何だって? 簡潔に言ってるけど、エメリー様たちがウチにくるだと? 何の冗談だ?
「おおおおおおおおおいラザ・・・。ウウウウウウチにだだだだ第1王女様とだだだだだ第2王女が来るぞ・・・。それだけではない、ああああああの公爵家の令嬢も一緒に来る・・・」
「オレも手紙で確認した・・・。何でウチに来るんだよ・・・」
「まぁそれは大変ね。早速準備をしなといけませんね」
「それなんだが「無駄な歓迎をするな」っと書いてあった。つまりいつも通りにしろって事だ」
「いつも通り? 第1王女様方が来る時点で、いつも通りに出来るかしら?」
「無理だな。いつも通りに出来るなら、そいつは随分と図太い神経を持っていることになる」
「そんな事はいい! 問題は明日だ! 明日はお前の兄達が帰って来るのだぞ!」
「兄たちが? ・・・あぁジョナス兄さんとノーマン兄さんか。どんな顔をしていたが思い出せないな・・・」
「無理も無いか。あの2人が騎士になったのは、お前が8歳の時だ。騎士になって以降は、今日まで一度も帰省しなかったからな・・・。あぁ胃がキリキリしてきたぞ・・・」
オレが8歳の時に家から出たのか。それでも記憶があると思うが、今のオレは記憶がほぼ無いようなものだから、全く顔とか憶えて無いんだよな~。でも学園には通っていたから、18歳には騎士になってるって事だろ。なら今の歳・・・、25歳か。
「―――胃薬でも飲んだらどうだ? 少しはマシになると思うが」
「そ、そうだな・・・。トーマス、いつもの胃薬を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
トーマスさんは胃薬を持ってくるために、リビングから立ち去る。
「とにかく、明日は第1王女様達がここに来る。私達はいつも通り尚且つ粗相の無いように。分かったか?」
「「「はい」」」
「では解散」
オレは立ち上がり、ペールが何処にいるか探しに行く。