第21話 大掃除中
7月23日。ただいま大掃除中です。
「いやー掃除って楽しいね! 家で掃除するより楽しい」
「エディスさんは掃除が好きなんですか?」
「好きだね。身体を動かせるし、あまり頭を使わなくて済むからね」
「そうですか。あ、エディスさんは期末試験の1学年順位は、何位でしたか」
「180位中、87位・・・」
「いい方じゃないですか? 100位以内に入ることが出るのは、意外と難しいですよ」
「ラザは何位だったのよ・・・」
「オレは90位ですよ」
「見事に真ん中!? 本当に無難な位置にいるよ!」
「ほとんどの試験はほぼ平均点でしたよ。何か所かワザと間違えたり、あえて回答しなかったところにありましたね」
「私たちより難しいことをしてますね・・・」
「普通はそんなことしないよね。エメリーは何位だったの?」
「私は1位でしたよ」
「ラザ、エメリーは1位だってよ。アタシらと違う人だね」
「流石王族の人ですね。オレたちよりも頭がいいです。これはからは少し距離を置いて接しましょう」
「そ、そんな酷いことをするんですか!?」
「しないしない! いつも通りに接するよ。そうでしょラザ」
「えっ、オレは本気で距離を置こうと思いましたが」
「・・・ラザ? それは人としてどうかと思うけど。今のところは「冗談だ」って言うところでしょ」
「オレは冗談で終わらせたくなんだけどなぁ・・・」
「ラザ?」
「ハイ、何でも無いです。いつも通りに接しさせていただきます」
「そ、そうですか」
「気を付けた方がいいかもね。いつかきっと、本当に距離を置こうとするね」
意外と鋭い。まぁ2年になればクラス替えで離れるだろう。多分。
「それにしても第1アリーナって広いね! 流石ちょっと辛いよ・・・」
「それはそうですよ。ここで大きな催しをするんですから。主に卒業試合とかですね」
「確か参加する科目は。騎士科、魔法科、冒険科の合計3名の代表。後は各クラスの代表が3名出るんですよね」
「そうです。それらを相手するのは、現役騎士や魔導士や冒険者。各クラスの方は誰が出てくるか分かりません」
「わー、絶対にクラス代表になりたくない・・・」
「大丈夫ですよ。基本的にクラスの担任が実力を見てもらえるので、その実力で代表3名が決まります」
「・・・それで行くと、オレ確実に代表になるのでは?」
「ん? あぁそっか、ラザはイゼベル先生に鍛えてもらってるんだっけ? 確かにラザなら選ばれても可笑しくないね」
「実力を見ることになったら、手を抜かないといけませんね」
「もし3年になっても、イゼベル先生が担任だった場合は、どうするんですか?」
「諦めて全力で戦います」
「まぁそうなるよね・・・」
「そんな先の話より。明後日のパーティーの話しませんか?」
「明後日のパーティー? あの学期末が終わってやる、終業パーティーの事ですか?」
「そうです。2人は終業パーティーに参加するんですか?」
「アタシは参加するよ。ラザは?」
「しませんよ。何であんな無駄なパーティーをするんでしょうか? あのパーティーに参加するくらいなら、ペールと一緒にいた方がマシですよ」
「その終業パーティー何ですが。3年間のうち1回は出ないといけない、決まりがあります」
「・・・嘘ですよね? そんなことないですよね?」
「嘘じゃないですよ。姉さんが言ってましたよ」
「あぁじゃあ出ないとダメだね。でもドレスとか持ってないよ」
「今着ている制服で良いようですよ。スーツとかドレスにすると、差別が生まれるので。学生は制服だそうです」
「・・・それだと先生方が、高いスーツとかドレスを着ると思うのですが」
「先生方はあらかじめ指定されている、スーツとドレスを着る事になっています。それ以外の物を着ると中に入れさせてもらえません」
「そうなんですか。・・・今年は出ますが、来年再来年は絶対に出ません」
「えぇ~今年しか出ないの? 美味しい料理が出ると思うけどな~」
「別に料理には期待してませんよ」
正直言って、日本で食べてきた料理の方が美味しいだよな~。ここの料理はちょっと味が薄い・・・。
「随分と楽しそうに話してるなオメェーら。掃除はちゃんとやってるのか?」
イゼベル先生がこっちに来て話しかけてくる。
「ちゃんとやってますよ。そろそろこの辺は終わりますよ」
「みてぇーだな。それはそうと。オメェーらは明後日の終業パーティーに、出席するのか?」
「出るよー」
「私も出ます」
「出たくないですが。3年間のうち1回出ないと、いけないようなので。今年だけでます」
「やっぱりわたしが予想した通りになったか。オメェーら学生が羨ましいな。3年間のうち1回出席すれば、それで終わりだからな。わたしなんかこの学園にいる間は、必ず出席しないといけねぇだよ・・・」
「へぇーそうなんですか。頑張ってください」
「ッチ。生徒の場合は自主参加だから、わたしの一存じゃあ決められねぇ・・・。わたしが決めることが出来るなら。絶対にラザだけは道連れにしていたのになぁ・・・」
「いやー良かったですよ。生徒の自主性を重んじる学園で」
「・・・お前合宿の時は憶えてろよ」
「私怨の理由で生徒をどうこうするのは、よくないと思いますが」
「言うじゃねぇか。マジで合宿は楽しみにしておけよ?」
そう言ってイゼベル先生は違う所に行く。
「あ~あ、あれは完全に怒ってるよ」
「ラザさん。今のうちに謝れば、許してもらえるかもしれませんよ」
「もう無理でしょうね。・・・合宿中に死ななければいいのですが」
「いや流石に殺されるとは思わないけど・・・」
「でもイゼベル先生の場合は、本気でやると思えるのですが」
「・・・ラザ。短い学園生活だったね」
「姉さんにお願いして、骨だけは拾ってくるように言っておきますね」
「縁起の悪い事を言うのは止めてくれませんかね!」
「まぁ冗談はこれくらいにして。ゴミを捨てて他の所に行こう」
エディスさんにそう言われ、ゴミを捨てて他の所に行く。