第20話 試験勉強
7月7日。放課後の図書室にて。
13日に期末試験がある。赤点を取らないように、オレは図書室で勉強をしている。
・・・勉強をするのはいいが、何でエメリー様とエディスさんがいるんだ? わざわざオレと向かい合って座っているけど、別に違う席でいいだろ。
「ラザは期末試験に自信ってある?」
「普通ですね。赤点さえとらなければ、別に問題はないですよ」
「ダメですよ。ちゃんと全力で試験を受けないと、後々面倒な事になりますよ」
「オレにとってはいい点数取って上位にいるより、無難な点数を取った方がいいんですよ」
「そう言うものなの? いい点数を取って上位に食い込めば、色々と繋がりとか持てると思うけど」
「オレはそんなものを持つ気は無いですよ。世の中ヘタに目立つより、無知を振舞った方がいい時もあるんですよ」
「そうなんですか?」
「多分ラザだけだよ」
「何て言われようが、オレは無難な点数を取りますよ」
オレは試験に出る範囲を勉強をする。
期末試験はクラスによって違いがあるのかと言われると、そんな事は無い。期末試験は普通の学校でもある、国語、数学、社会などがある。こっちは共通語、数学、調合筆記、社会などがある。共通語は日本で言う国語で、調合筆記は問題に書いてある内容を読んで、調合の結果を書いて解く。正直調合筆記が一番難しいと思っている。何せ普通の高校生は薬草とかを調合しないからな。やるとしたら理科の実験くらいだろう。理科でも薬草使った調合はやらなか。
「うぅ~・・・。数学何て嫌いだぁぁぁぁ・・・」
「エディスは商人の娘なのだから、計算が出来ない商人は見向きもされませんよ」
「そうだけどさぁ~・・・。正直言って、足し算と引き算とかグラムの計算とかその他の計算出来れば、後はいらないと思うけどなぁ~」
ほぼ全部言ってるような気がするが、確かに日常生活では使わない計算とかあるよな。例えば三角関数とか円周率とか。それらに関する仕事をしているなら、話は別だけど。
「まぁ頑張って憶えるしかないですね」
「めんどうだぁぁぁぁぁぁ・・・」
まぁ計算は生活していく上で、必要になるからな。それを憶えないわけにはいかないよな。
「やあやあキミたち。勉強は捗ってるかい?」
オレたちは声がした方に顔を向ける。そこにクリス様とロザリー様がいた。
「あ、姉さんとクリスさん。生徒会の会議は終わったのですか?」
「あぁ終わった。色々見直すところが出てきた。後は人員の確保だが、エメリーは生徒会に入るのか?」
「はい。いつものように、姉さんのサポートします」
「助かる」
これはチャンスか?
「すみません・・・。オレちょっと気分が悪くなったので、この辺で帰らせてもらいます・・・」
「ハイハイ、嘘はいけないよラザ」
ッチ、流石にバレるか。
「でもオレがここにいるはダメだと思いますよ。非公式のファンクラブに消されると思うんですよ」
「ならその非公式ファンクラブを取り締まろうか?」
「そうしてほしのですが。まだ害が出てないので無理じゃないですか? それに誰がファンクラブの人が分からないですよね」
「・・・それもそうだな」
そう言ってロザリー様とクリス様は、オレが座っている左右の椅子にそれぞれ座る。
「・・・・・・あの、何でわざわざ隣に座るんですか」
「ちょうど席が空いていたから」
「何か問題あったか?」
「・・・・・・問題がありますよ」
死ねる。これは死ねる。左に公爵家の人と右に王族に人。そしてオレは子爵家の人であり、心は一般庶民。どう考えても死ねる。
「えっと、ラザさんの顔が青くなってますよ。本当に具合が悪そうに見えますが・・・」
「あぁ気にしない気にしない。どう見ても緊張してるだけだから」
「緊張してるのか? ここは学園だ、私やクリスの身分は気にしなくてもいいのだが・・・。その顔はどう考えても無理のようだな」
その通りです。お陰で勉強が出来ません。
「・・・勉強できないので、寮に帰っていいですか?」
「ダメだけど」
「クリスさん!? 流石に酷いと思いますよ!」
「酷いのはラザの方だと思うけど。ラザって基本的にボクたちから避けてるじゃん。こっちから近寄ろうとすると、必ず人がいる方に逃げるよね」
「言われてみれば・・・。何で?」
「黙秘します・・・」
「別に尋問しているわけじゃないが。お前らもやめないか」
「「えぇ~」」
「えぇ~じゃない。これ以上ラザを困らせるな。何かもう借りてきた猫みたいになってるぞ」
「ハイハイ止めますよ」
クリス様はやれやれって感じでやめてくれる。
「ロザリー様。助けてくれてありがとうございます」
「気にするな。それとその様付けは止めないか?」
「あ、それボクも」
「それは無理ですね。何があろうとそこは譲れません」
「お前は・・・」
「それよりラザさん。夏休み中は実家にいつ帰省するんですか?」
「・・・・・・26日ですよ」
「早! そんな早くに帰省するんだ」
「8月1日から合宿があるから、早いうちに帰るんですよ」
「・・・あぁラザは冒険科か。なら会う事になるかもしれんな」
「はい? 合宿は冒険科と1年の騎士科だけと聞きましたが。そもそもロザリー様は騎士科だったんですか?」
「そうだ、私は騎士科の授業を受けている。合宿の参加理由は、練習相手としてだ。一部の騎士科の2年は参加することになっている、私はそれに参加しているんだ」
「そうですか。なら会わないように、気配遮断を使っておきますね」
「お前それはいくら何でも、失礼じゃないか?」
「そうでしょうか? それより勉強しません?」
「あれ? 帰るんじゃなかったの?」
「エディスさん。この状況で帰らせてくれると思いますか?」
「・・・・・・ごめん」
「分かってくれて良かったですよ」
オレたちは試験勉強をする。
7月13日。期末試験は無事終了。午前授業しかないので、オレはサッサと寮に帰る。