第2話 入学
4月5午前3時。家の中庭で執事のトーマスさんが持っている、お盆の上にあるリンゴを気配遮断を使ってバレずに奪う事。
―――よし、これなら奪える。
オレは気配遮断を使って、堂々と正面からトーマスさんが持っているリンゴを奪いに行く。
「・・・・・・」
オレはトーマスさんとすれ違った時に、お盆の上に置いてあるリンゴを盗ろうとする。
「甘いですよラザ坊ちゃま」
「っ!?」
トーマスさんは既にオレの隣にいた。
「・・・・・・また盗れなかった」
「ホッホッホ。まだまだラザ坊ちゃまには負けませんぞ。ですが1週間前より上達しております」
「オレは一度も盗れませんでしたよ・・・」
実はトーマスさんは気配遮断も上手いが〈気配察知〉も上手かった。
「それくらいの気配遮断を持っていれば、学生どころか一部の教師にもバレませんぞ」
「その言い方だと、一部の教師にはバレるって聞こえますが」
「そうですな。ラザ坊ちゃま。今日で教えるのは終わりですが、日々の努力を努々忘れぬことですよ」
「はい。1週間ありがとうございました!」
「いえいえ。ではラザ坊ちゃま。このリンゴを差し上げます。空間の中にでもしまっていてください」
「空間の中?」
「! これは失礼。まだ教わってない事でしたね。なに学園に通えば全員覚えることです。これは朝食のデザートに出しておきます。では私は先に」
トーマスさんは先に戻る。
空間の中にしまう? 俗に言う空間収納魔法か? まぁいいか。オレはシャワーを浴びよ。
俺はシャワーを浴びに風呂に向かう。シャワーを浴びたあと朝ご飯を食べる。食べ終わったら学園に行く支度をして、終わったら家の門に行く。
「いいかラザ! お前には特に何も期待をしてないが、我がカルバーン子爵家に泥―――」
「いいですかラザ様! 何か危険な事があったらすぐに、気配遮断で逃げるのですよ!」
「言われなくても分かってるよ。メールはちょっと心配しずぎじゃないか?」
「いえいえ全然足りませんよ! いっそ自分も入学しようと!」
「メール。ラザ坊ちゃまが心配なのは分かりますが。メールはもう学園に通える年ではないでしょ」
「―――っう!」
「ははは・・・」
「ラザちゃん。夏休みは帰って来るのよ」
「言われなくても帰って来るよ。じゃあ行ってきます!」
オレは馬車に乗って王都に行く。
「さ、最後まで私を無視か!?」
「あら。ラザちゃんを蔑ろにしてた人が何を言ってるのかしら?」
「むぐっ・・・!」
あっ、親父に挨拶するの忘れてた。まぁずっと蔑ろにされていたから、別にいいよな。どんな風に蔑ろにされていたかは、知らないけど。さて。前は気配遮断を学んでたり、転生をしたせいもあってザックリっと思い出していたが。今からもう少し思い出そう。今日から通う『シエルティス学園』はどこにあるかと言うと、『ウィドリングトン王国の王都』にある。攻略対象の第2王女の【エメリー・ローレン・ウィドリングトン】と第1王女の【ロザリー・ローレン・ウィドリングトン】が住んでる所だな。ここまで言うと分かると思うが、エメリー様とロザリー様は王族だ。ロザリー様の親友【クリス・アリー・リトリ】は公爵家になる。精霊の【フランシス】は上級精霊である。因みにフランシスは特にラザの出番は無い。何せ自分から主人公に今日はここにいるとか、好みはこれだって言うからだ。サポートキャラの【ラザ・メルト・カルバーン】は子爵だ。そして本作の主人公【エリオット・ヘンリー・パーネル】は男爵家である。
このギャルゲーは基本的にハッピーエンドで、攻略対象と結婚する。なおルートによっては、ラザは死亡する。死亡する原因はエリオットをかばって死亡する。そもそも何故そうなるのか? 進級して2年生の12月の終わりに、王都に魔物の群れが襲ってくる。学生は避難命令が出されるが、戦うために志願する事も出来る。エリオットはそれに志願する。当然ラザもエリオットについて行く。その戦いの最後らへんでエリオットに攻撃してくる魔物から、攻撃をかばって死亡する。なおこの魔物の群れが襲ってくるイベントはストーリーイベントであり、どのルートでも発生するイベントである。紙にも書いたが、死亡するルートはエメリー様とロザリー様のルートだけ。
人物の家柄とエンディングを言ってしまったが。次はゲームの進め方になるが、これは何処にでもあるギャルゲーで。攻略対象に会える所に行って、会話したりプレゼントを上げて好感度を上げる。ただし学力や魅力や運動力などを上げないと、イベントが発生しない事もある。なおストーリーイベントは条件を無視して起きるイベントだ。このストーリーイベントはラザも含まれるため、この時だけ思い出せばいいか。
こんな所だろうか? そうだ。入学試験を受けられる歳は、15歳から20歳まで。オレは15歳だ。さて、ゲームの設定を思い出したがあまり意味が無いかもな。何せオレがラザに転生している時点でゲーム設定から逸脱してるからな。ラザで例えていくと。ラザの設定は元々1人っ子で特に兄妹などはいなかったし、養子とかもいなかった。だが現実は【ジョナス】と【ノーマン】って言う2人の兄がいた。ジョナスが長男でノーマンが次男。そしてオレが三男だ。ここでもう変化が起きていた。つまりこの先のイベントや登場する人たちが、変わってくる可能性がある。例えばエリオットが女性だったり、エメリー様とロザリー様以外にもう1人の妹もしくは弟がいるとか。とにかく設定とは違う、あるいは設定にはなかったものがある可能性がある。
「・・・オレ大丈夫かな? 生きていける?」
そう思っていたら、馬車が止まる。
「ラザ様。王都に着きました」
「分かりました」
オレはカバンを持って馬車から降りる。馭者にお礼を言ってオレは門番がいる方に行く。
「シエルティス学園の新入生ですか?」
「はいそうです。住民カードを見せますね」
オレは制服の内ポケットに入ってる住民カードを門番に見せる。
「――――――ユールスト街のカルバーン子爵家の三男。ラザ・メルト・カルバーン様ですね。身分の確認が出来ました、ようこそ王都へ。住民カードをお返しいます。学園までの案内人は詰所にいます。詰所に案内をしますので、ついて来てください」
「ありがとうございます」
オレは門番に住民票カードを返してもらって、制服の内ポケットに入れる。門番の人について行って、詰所に着いて中に入る。
「おはようございます。シエルティス学園までの案内人のアニェスです」
「ラザ・メルト・カルバーンです。ラザで構いません」
「ありがとうございます。早速ですがラザ様。もう学園に向かわれますか?」
「はい」
「分かりました。では案内させていただきます」
オレはアニェスさんに案内してもらい、シエルティス学園に行く。
「ラザ様。シエルティス学園に着きました」
アニェスさんにそう言われる。
「・・・大きいですね」
「はい。この学園は色んな科目があり、それに適した場所が存在してます。勿論、学生寮もあります。詳しい説明は、後日されると思います。では私はこれで失礼します。よい学園生活を」
「ありがとうございます」
アニェスさんは来た道を戻って行く。きっと俺みたいな王都の外から来た人を案内するために、また詰所に戻るんだろうな。・・・行くか。
オレは校門をくぐり中に入って行く。
まだ人がいない。それどころか入学式って書いてある看板が無い。だが1人だけいる。それはエリオットだ。エリオットは王都に住んでいるから、遅く来ても普通に間に合うのだが。つい楽しみ過ぎて早く来てしまったんだよな。しかも誰もいない時間に。人の事は言えないけど・・・。
こんな早く来た理由はある。エリオットが学園の中庭にいるかを確認するためだ。時間は・・・、朝の7時ちょっと過ぎか。ならいるな。学園の案内板を見て中庭に行くか。
オレは学園の案内板を見て中庭に行く。中庭に近づいたら気配遮断を使う。
「あれここ何処だ? やっぱり案内板を見ればよかった・・・」
いた。エリオット・ヘンリー・パーネル。あのカッコいい顔はどう見てもエリオットだ。今は気配遮断を使っているから、物陰に隠れずにいるが。気配遮断を使ってなかったすぐにバレていたな。
「誰かいないかー? ・・・っているわけないよな。ヤッバいどうしよ・・・」
悪いなエリオット。オレはもう一度死にたくないから、オレは校門に戻らせてもらうよ。
オレはそのまま校門に戻って、入学式が始まるのを待つ。