IF83話 目を見れば
3月20日。ついに卒業試合当日になった。開会式が終わった後は、オレを含め試合に出る生徒たちは待機室に行く。最初は各科目戦になる。
冒険科は最後だから暇だな。待っている間はどうしよ。っとエリオットが来たな。
「なぁラザ。緊張してないのか?」
「してると言えばしてますが。急にどうしたんですか?」
「他の人たちは緊張してるけど、ラザだけは緊張してないのかなって」
「エリオットさん。いくら何でそれは無いですよ。この試合は色んな人に見られるんですよ。少人数ならまだしも、多人数ですよ。緊張しない方が可笑しいですよ」
「そうだよな。ラザって、運動会の種目で徒競走は連続1位だろ。それだけじゃなく、精霊を使い魔にしてるから。かなり知られてると思うぜ」
「ズバッと言いますね・・・。今ので試合に集中出来なくなりそうですよ」
「ワリィ」
エリオットとは友達にならずに、学園生活を過ごしてきたけど。予想外もあったけど楽しかったな~。特に魔法が使えるのが楽しかった。勿論辛い事もあったけど。それでも楽しかったな。
「ラザ。俺変な事を聞くけど良いか?」
「どうぞ」
「俺たちさぁ・・・。友達、だよな?」
「・・・はぁ、今更ですか? 今更それを聞きますか」
「いやだってさぁ。俺たちはあんまり喋らないけど、喋る時は喋るよな」
「今みたいにですね。それで友達かどうかですよね」
「あぁ・・・」
「友達ですよ。何だかんだで喋ってましたし、合宿の時はよく相手してましたし」
「そうだよな! 俺たちは友達だよな! あースッキリした」
気にする事だったか? それにしても最初の方で友達ならずに過ごしていたら、ストーリーイベントがかなり変わったな。同じところもあったけど。最後の魔物群れが、王都に襲って来なかったことが良かったな。まぁ襲って来ていても何とかなりそうだけど。
「おいエリオット。こっちに来てくれ。作戦の見直しをするぞ」
「分かった! じゃあまた後でな」
「また後で」
エリオットはレジさんとエメリー様の方に行く。オレは一度精霊の魔力で少し身体を慣らす。
この試合はプリシラは出れないから、魔力を精霊の魔力に変えた。今回はちょっと色々試したいから、今のうちに身体に慣らす。もしやらずに使うと、身体が思うように動けなくなるからな。
「ラザ。今話せるか?」
「レジさんですか。話せますよ」
「そうか。前々から言ってるが、敬語は止めろよ。昔は普通だっただろ」
「昔は昔、今は今ですよ」
「変わらないな・・・。俺は結局、剣でお前に勝てなかったな」
「そうですね。剣では勝てませんでしたね。剣術はオレの方が上のようですね」
「イゼベル先生に教わってそうなったんだろ。俺も教わったが、あまり上達しないぞ」
「オレはほぼ3年間。イゼベル先生に教わっていたんですよ。教わった時間が違うんですよ」
「俺も1年生の時。ラザと同じクラスだったら、少しは変わっていたか?」
「まぁ早い段階で今ぐらいの実力には、なっている可能性はあるかと」
「そうか・・・。なぁラザ。今日ぐらいは敬語じゃなくても、いいじゃないか? 俺たちは今日で学園を卒業するんだ。最後くらいは敬語じゃなくていいだろ」
「・・・まぁそうだよな。最後くらいは敬語無しでいくか」
オレがタメ口で言うと、レジは驚く。
「おぉラザが敬語を使わないで喋ってる! 凄く新鮮だ。それと同時にタメ口でも喋れるんだな」
「お前はオレは何だと思ってるんだ? こっちの方が素だからな。プリシラやメールや親の前以外で、タメ口で喋るのは久しぶりな気がする」
「あっ! ラザが敬語で喋ってない!? どうなってるんだ?」
「あのラザさんが敬語を使って無いです・・・。明日は槍でも降って来るんですか?」
「じゃあエメリー様だけ、敬語で喋ろうか?」
「いえ! 今のままでいてください!」
オレが素で話すと色々言ってくる。会話をしていると放送でオレが呼ばれる。オレはすぐに移動をして、入場をする。
相手は有名なクランのリーダーのカラレイさんか・・・。さてどこまで通用するかな?
「では両者準備の方は良いですか?」
「「はい」」
「では。・・・試合開始!」
司会者がそう言うと、出入り口に壁が出来る。
「じゃあ始めようか!」
カラレイさんはすぐに弓と矢を出して、矢を放ってくる。オレは木刀をすぐに出して、矢を叩き落としてカラレイさんの所まで距離を詰める。距離を詰める最中に矢は飛んでくるが、叩き落としたり避けたりする。距離を詰めたら木刀を振ろ下すと、弓で防がれる。
「意外とその弓硬いですね! 良い素材で使ってるんですか!?」
「素材と強化だよ。その・・・木剣? だってかなり硬い気がするけど」
「これは付与魔法で強化してますからね。素材は分かりませんけど」
「そうか。1つ聞きたいけど。キミの魔力ちょっと可笑しくない? 人族が持つ魔力じゃ無いよ」
「あぁ・・・。分かりますぅ?」
オレは両足に力をいれて、ジャンプして後ろ下がる。
「使っても良いですけど。何かすぐに終わる気がしますよ」
「使ってくれても良いよ。その方が実力が分かるよ。あと敬語は不要だよ」
「なら両方ともお言葉に甘えて。やらせてもらう!」
オレは強化魔法で身体を強化して、一気にカラレイに近づき木刀を振り下ろす。
「速いっ!?」
カラレイはまた弓で防ぐが、弓にひびが入り壊れる。カラレイはすぐに弓を捨てて、後ろに下がり木剣を出す。オレは距離を詰めて木剣で攻撃をする。カラレイは木剣で防ぐと防いだ木剣が壊れる。
「冗談だろ!? 何だその木剣は!?」
「木剣じゃなく木刀だ! 次行くぞ!」
少し手加減をして素早く攻撃を繰り出す。カラレイは全て攻撃を避けるが、反撃が出来ないようだ。
「(は、速い。避けるだけで精一杯だ・・・! 何とかしてここから抜け出したいけど、隙が無く抜け出せない・・・。これはどうしたものか)」
ん~。ちょっとこれだとそのうち勝つな。もう少し手加減をしないとな。
オレは速度を落として攻撃をする。
「(攻撃が遅くなった? これは抜け出せるチャンス!)」
お、抜け出す気だな。そうはさせない!
カラレイは隙を見て後ろに下がる。それと同時にオレは前に移動して、もう1本木刀を出してカラレイの横腹に手加減をして攻撃をする。
「やばっ」
手加減をしていたが、かなり横に吹っ飛んで行った。カラレイはヨロヨロになりなら起き上るのを見て、オレはカラレイに近づく。
「えぇっと大丈夫か?」
「治癒魔法で治してるから、大丈夫だよ。まさかすぐに攻撃をされとはね」
「まぐれだよ」
「まぐれねぇ・・・」
カラレイはまた木剣を出してこっちに来る。近づいてきたら木剣で攻撃をしてくるが、オレは全て避ける。
「これでも剣の腕はある方なんでだが、全く当たらないね!」
「目で追えるからな。それに」
「それに? っ!?」
左手に持っている普通に強化した木刀で、カラレイに攻撃をする。
「(反撃をするほど余裕があるか。なら魔法で少しは抑えるか)」
あぁ魔法を使ってくるのか。防ぐか。
予想通りにカラレイは魔法を使ってくる。オレは防御魔法で攻撃を防ぐ。
「防いだ!? よく防げる」
次も魔法。だけどこの先が分からないな・・・。分からないのが普通だけど。
また魔法の攻撃を防ぐ。防いだら蹴りが来る。オレは蹴りを避けて左手に持っている木刀で、また横腹を攻撃する。今度は吹き飛ばすその場に踏みとどまる。カラレイは治癒しながら攻撃をしてくる。
「っ。さっきから攻撃。いや動きが読まれてる気がするがする。一体何をした!?」
「何をって言われてなぁ。何て言えば分からないけど、とりあえずオレの目を見れば分かると思うぜ」
「目? ―――その片目どうした? 目の色が違うぞ」
「綺麗な緑だろ。これは精霊の同じ目の色なんだよ。この目は少しだけ、相手の動きが分かるんだ。ただ本当に少しだけだから、少し見えた以外の動きは分からないんだよ」
「それだけでも脅威だね・・・。だからこっちの動きが読まれてるのか」
「ただこれは普通では使えないから、あんまり練習出来ないんだよ」
「キミの魔力が人族と違う事と関係があるのかね?」
「ある。今のオレは精霊の魔力と同じだ。だからこう言う事が出来る」
「なるほど。羨ましい」
「そうかよ。そろそろ再開するぞ!」
オレは浮遊魔法を使って後ろに下がりながら上昇する。オレは右足に魔力を集めて、カラレイの横に蹴って飛ばす。剣で斬撃を飛ばすように、足で魔力の塊を飛ばすようなものだ。その魔力の塊はカラレイを通り過ぎて、地面に当たり地面にクレーターが出来る。
「あ。地面にクレーター・・・。ヤバいぞこれは・・・。修理代を請求される・・・」
「(・・・はい? よく見えなかったけど、何かが飛んできて地面にぶつかったのは分かります。そしてこの威力。加減してるだろうけど、加減無しで普通に当たっていたら・・・)降参します!」
「降参!? 何で!?」
「勝てないと分かったからだ! ヘタするとこっちが死ぬ!」
「そんな。オレはまだ試したい事が―――」
「そこまで! 勝者、冒険科のラザ選手です!」
オレはそれを聞いてガッカリしながら地面に下りる。木刀を空間のしまうとカラレイさんが来る。
「強いね。僕は全くキミに攻撃を当てる事出来なかったよ」
「精霊や先生に鍛えられてますから。でもその気になっていたら、最初の矢で終わっていた気がするが」
「どうだろ。ところでラザくん。果て無き夢に入らないかい?」
「無理かな。明後日は実家に帰って、実家の手伝をしないといけないし」
「冒険者になるのに、一度実家に戻ると?」
「今実家にはダンジョンがあるんで。その手伝いをしないといけないからな」
「なるほど・・・。では近いうちにキミの実家に行くとしますか」
「待ってますよ」
オレはカラレイとは別れる。アリーナから出て少し休んだら観客席に行って、プリシラたちを探す。見つけたら移動をする。
「お疲れ。と言うべきか。無事勝ったようだな」
「勝ったけど。全然試せなかった・・・」
「また違う日にやればよかろう」
「そうだな」
「ラザおつかれー」
「お疲れさ、片目の色が違いますよ。プリシラさんと同じ色ですが、どうしたんですか?」
「あぁこれはちょっと魔法を使ったときに、目の色が変わったんだ。まぁいつか元に戻るよ」
オレはプリシラの隣の座る。
「・・・・・・敬語じゃない」
「ラザ先輩が敬語で喋ってません・・・」
「ほらな。わたしが言った通りになっただろ」
「一体何を言っていたかは知らないけど。そんな顔でオレを見るな。何か恥ずかしくなる」
「いやいやいやラザが敬語を使って無いから、驚くに決まってるよ」
「やはり明日は酸の雨が降って来るのでしょうか?」
「怖い雨だな!? そんな雨がそう簡単に降って来るもんか」
「それほど主が敬語じゃないのが珍しいのだろ。何回か敬語が抜けていたような気もするがな」
その後クラス別試合が始まり、エメリー様たちのクラスが始まる。試合が始まった直後に、エメリー様の魔法で相手を倒す。それも一撃で終わる。終わったら違うクラスが始まる。
時間が経つと全てのクラスの試合が終わり、少し休憩を入れて終わったら閉会式が始まる。それが終わり一度教室に戻る。イゼベル先生が色々話して最後には教師を辞めると言うと、ほとんどの人が聞いて無いと言う。教室で待機していると放送が流れて、教室から出て列を作り並ぶ。移動をして外に出たら道の両脇に、1年生と2年生が並んでいて盛大な拍手で見送る。移動してるとサラサを見つけて、オレたちはサラサの所に行く。
「ご卒業おめでとうございます」
「ありがとうー。サラサさんはもう1人になっちゃったね」
「はい。エメリーさんたちが留年してくれると、自分は嬉しいのですが」
「この学園は留年制度は無いだろ」
「それに留年するとまた面倒になるだろ」
「そんな事は無いと思いますが」
「・・・話変わるけど。冒険科はオレで最後だな。まだ学園に登校する日はあるんだろ。冒険科はどうなるんだ?」
「午後の授業は無くなりましたよ。自分は午前中の授業で帰る事になってます」
「教師を辞めるのは良いけど。せめて1年生と2年生が春休み入るまで、教師を続けてろよ・・・」
「契約だからね。しょうがないよ」
「契約かぁ。それよりもだ。プリシラ。写真だ。写真を撮るぞ」
「言うと思ったぞ。道から外れるが、教師はどうする?」
「探して連れて来る」
プリシラたちは道から外れて、オレはイゼベル先生を探す。見つけたら声をかける。
「イゼベル先生! 写真撮りますよー!」
「良い所で来た。サッサと行くぞ!」
「えぇ!? ちょっ!」
オレはイゼベル先生に腕を掴まれて、そのまま何処かに連れて行かれる。
「先生・・・。何で無理やり連れて行くんだ?」
「マルルから逃げる為だ」
「マルル先生から? あ、もしかして告白されましたぁ?」
「された。だが断った」
「やっぱり断ったんだ・・・。まぁそんな気はしてましたが」
「わたしはその気はねぇんだがなぁ。で、何処で写真を撮るんだ?」
「案内するよ」
オレは案内をしてプリシラたちの所に行く。着いたら並んで写真を撮る。周りから羨ましそうに見えたが、特に気にしない。5人で撮ったら、オレとエメリーとエディスは個別に撮る。次はオレとイゼベル先生、エメリーとイゼベル先生、エディスとイゼベル先生で撮り、最後はイゼベル先生と交代をしてサラサと撮る。終わったらすぐに出来て皆に渡す。
「うん。最後に良い物が撮れたね」
「はい。プリシラさんがいたお陰で、写真が撮れました」
「最後だからな。これくらいはする」
「わたしも貰ってもいいのか?」
「良いんだよ。出来ればイゼベル先生が辞める時に撮りたかったけど」
「難しい話だな」
「そうだな」
「・・・これで終わりですね。2年間ありがとうございました!」
「こちらこそ。ありがとうございます」
オレとエディスも頭を下げる。頭を上げて、オレたちは移動をする。移動している間は話ながら、各自家に帰る。オレは明日冒険者になるため、宿に行って泊る。
それから2日後。オレたちは門の所で実家から来た、馬車に乗って実家に帰る。
「昨日試験の結果は合格。オレは3年間冒険科にいたから、Cランクからスタート。3回依頼を受けてみたけど。問題なく達成出来たな」
「簡単すぎると思ったがな。登録する時に、あの国王が邪魔をすると思ったが。邪魔はせんかったな」
「邪魔をしたらプリシラが怒るだろ」
「あたり前だ。ところで何故馬車に乗って帰る? 転移魔法で帰ればよかろう」
「あぁ何かもう少しゆっくりしたかったから」
「帰ったら家の手伝いか。すぐに冒険者として動けただろうに」
「いやだって、手伝うって言っちゃったからなぁ・・・」
「言ったな。言わなければまだ王都にいれたと思うんだがなぁ」
「いれた思うが、結局は一度帰られないといけないからな。何にせよこれから冒険者とし生きていくんだ。これからもお願いするよ」
「任せろ。ところで主よ。今更聞くのは可笑しいが、転生してどうだった?」
「そうだなぁ。オレは良かったと思うよ。予想外な事もあったけど、楽しかったし、プリシラたちに会えたから満足してるよ。まさかギャルゲーのサポートキャラに転生するとは思わなかったけど」
「そう言う運命だったかもな」
「・・・あれだな。友達を助けたら『ギャルゲーのサポートキャラに転生しました』だな」
「そうなるな。そう言えば、主に秘密にしてた事を言おう」
「何だ? 実はプリシラは上位精霊じゃなくって、最上位精霊だったとか?」
「そうだ。妾は最上位精霊だ」
「・・・・・・マジかよ!? でも納得はした。人の過去を見れるのは異常だからな」
「そう言う事だ。他の奴には言うなよ」
「言わないよ。墓まで持って行くつもりだと」
「墓などに行かせるものか」
「おいおい・・・」
IF章はこれで終わりです。
最後まで見て頂きありがとうございました。誤字脱字報告をしてくれた皆さんもありがとうございます。