第17話 運動会その3
ある程度の種目が終わり、そろそろ運動会が終わりに近づいてきている。
「ねぇエメリー。2年の借り物競走って、誰が出るの?」
「姉さんが出ます」
「つまりロザリー様が出ると?」
「はい」
「「・・・・・・」」
オレは顔を青ざめる。エメリー様の隣にいる、エディスさんも顔を青ざめている。
「2人して何で顔を青ざめているんですかっ!?」
「だってエメリーのお姉さんは、ちょっと苦手なんだよね・・・」
「同じく。何とか言うか「こっちに来たら殺すぞ」って感じがして、ちょっと・・・」
「解る。何て言うか威圧感があるって言うか、人を叱る時に目で殺すと言うか・・・。とにかく近づきづらいのは確か」
「エディスさんは何回も会っているので、分かりますが。ラザさんは何でそう言うんですか?」
「オレは一度図書室でロザリー様とクリス様に会いました。会った時に思いましたよ「これ死んだな・・・」って」
「姉さんに会っただけで!? 姉さんは怖い人ではないですよ! ただちょっと目つきが怖くて、ちょっと変態で・・・」
「今聞いちゃいけないことを聞いたけど? アタシの気のせいかな?」
「きっと気のせいですよ。それより応援しなくていいんですか?」
「しますよ」
「ならすればいいじゃん。丁度ロザリーさんの番だよ」
さん付け。様付けではなく、さん付け。意外と怖いも知らずなのか?
そう思っていると、いつの間にかスタートしていた。一応ロザリー様の方を見ると、意外と速くすぐにテーブルの方に着く。紙を取って内容を確認して、何かこっちに走って来る。
「お、おい。ロザリー様がこっちに来てるぞ!」
「ま、まさか。すすすす好きな人を連れて行くとか・・・!」
「なるほど。おれだな」
「「お前はない!」」
「なんだと!?」
何か男子生徒たちは騒いでるけど、こっちには来ないよな?
「エメリー! ラザを借りるぞ!」
「どうぞ」
「はっ!? 何でここでオレなんですか!?」
「思い出せる男子生徒がお前しかいないんだ! つべこべ言わずに、来い!!」
「は、はい!」
ペールはオレの太ももから下りる。オレは立ち上がって、すぐにロザリー様方に行く。そのままの一緒にゴールする。
「ゴォォォォォォォォォォル!! ロザリー選手とラザ選手が1位だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「これはちょっと不味いですね・・・。ラザ選手は後日、非公式のロザリー様ファンクラブに、粛清される可能性が出てきましたね」
マジで!? ロザリー様のファンクラブはそこまで過激なのか!? ってかファンクラブあったんだ!!
「・・・私にファンクラブがあったのか」
本人気付いてなかった!!
そのままオレとロザリー様は1位の列に並ぶ。
並ぶのはいいが。色んな生徒から痛々しい視線が来る・・・!! ってかこんな事ゲームであったか!? 運動会では精々攻略対象から応援されるだけなのに、何でロザリー様と一緒にいることになってるの!? エリオットと友達ならなかったから、ルートから外れてイレギュラーな事になってるのか。どっかで修正出来るか? 修正出来るのか?
「オイ大丈夫か?」
「――――――えっ、はい」
「そうか。すまんな、紙に「男子生徒」っと書いてあったから。すぐに思い出せる男子生徒がラザしかいなくてな、つい付き合ってもらったが・・・。迷惑だったか?」
「いえ、迷惑じゃないですよ。流石に驚きましたが」
「迷惑じゃなければいい。しかし、お前は媚びらないんだな」
「媚びらない? 何でお―――私が貴女様に媚びらないといけないんですか?」
「? 私は第1王女、ロザリー・ローレン・ウィドリングトンだ。ここで媚びでも売っていれば、後々何かと楽になると思うが?」
「あぁそう言う・・・。私は貴女様に対してそんな事はしませんよ。したところで私にメリットがありませんから。それに私は冒険者を目指しているので、媚びを売っても無意味になりますよ」
「・・・・・・」
ヤバい・・・。これは不敬罪か・・・。
オレは顔を青くする。
「―――フフッ、フフフフフハハハハハ・・・。お前はちょっと可笑しいぞ。普通は媚びを売る所だぞ。それをしないとは、お前は可笑しいぞ」
「そ、そうかも知れませんね・・・」
「エメリーが言ってた通り、お前は色々変だな」
エメリー様はオレの事を、どんな風に言ったんだ?
「あのー、ご無礼を承知で申し上げますが、もう私に関わらないでほしいのですが・・・」
「それは無理だ」
「えぇー・・・」
オレはそれを聞いて落ち込む。
「(面白い奴がいるんだ。そう簡単には手放す事は出来ないよな)」
「それより、私は明日生きていられるでしょうか?」
「・・・・・・何か遭ったらエメリーに言ってくれ。アイツならすぐに私の所に、連れてくるだろう」
「はい」
その後借り物競走は終わり、退場して元いた席に戻る。
「おかえり~」
「お帰りなさい」
「ただいま。エメリー様、ちょっと聞いていいですか?」
そう言いながらオレの椅子の方に行くと、ペールは椅子からどく。オレが椅子に座ると、ペールはオレの太ももに座る。
「はい、何でしょうか?」
「オレの事をロザリー様にどんな風に喋ったんですか?」
「姉さんにですか? えぇっと、自分より身分が高い人に媚びを売らずに、逆に関わらないようにしてて、そのせいか基本的に敬語で喋って、自分からは積極的に会話を取ろうとしないし、会話をしようとすると「何か来た」っていうような感じで会話したり、魔法は普通の人より出来る人。って言いましたが」
「・・・・・・何勝手に教えてるんですか?」
「だって、友達は出来たか話せって言ってきたんですよ」
「だったらエディスさんだけで、よかったですよね?」
「勿論エディスの事も言いましたよ。ただちょっと、ラザさんは色々他の人と違っていたので・・・」
「あぁ~、確かにラザって他の人と違うよね。周りの目を気にしてると言うか、怯えながら生活してるような」
「それイゼベル先生に言われたような・・・。とにかく、ロザリー様にあまり変な事言わないでくださいよ。何か目を付けられているので、あまり変な事を言うと見逃してくれないような・・・」
「「あぁ~」」
「なのでオレの事を話題にしないでください」
「――――――はい」
絶対に話題にする気だな。
雑談してると最後の種目、1年のリレーの準備をしていた。オレたちは移動する。その後移動して最初に走る人が並んでスタートする。
「始まりまし最後種目、1年生のリレーです。我々実況者は、どうせ1年Cクラスが1位になるのだろうと、思っています」
「だがしかし! これは団体競技なので何が起きるか分かりません! もしかしたら・・・もしかしたら2位なるかもしれません!!」
「「「「「(それは無い)」」」」」
それは無いかもな。何せ最初の2人で一周の差をつけてるからな。リレーは半周してバトン交代で走っている。因みにオレはアンカーで一周する必要がある。オレの番になるまで暇だな。
オレは自分のクラスを含め走っている人を見る。Cクラスのオレ含め一部の生徒は、イゼベル先生の地獄の特訓のお陰で一番になっている。それだけで1位になれそうだが、これは団体競技なので、足が遅い人もいる。徒競走で他のクラスが走ってる所は見てないが、今リレーで見ると速い人が何人もいる。
「Cクラスのアンカーの人。もう出てください」
「あ、はい」
早いな。もうオレの番がくるのか。
オレはコースに出て、バトンを受け取る体勢を取る。Cクラスの生徒が走ってきて、ギリギリのところで少し前に出て少し距離を稼ぐ。バトンを受け取ったらそのまま一気に走る。
「ラザは速いね~。ボクじゃあ追いつけないなぁ」
「いやあれは可笑しいだろ。なにをしたらあんな速く走れる?」
「練習期間中にエメリーに聞いたんじゃなかったのかい?」
「聞いたが、はぐらかされた」
「あらら。まぁ本人に聞けばいいか」
「その本人からは、関わらないでほしいって言っていたがな」
「えぇ~、折角よく分かんない噂が消えたのに。もう関わってほしくないって? こうなったら、しつこく付きまとおうかな~」
「お前。そう言う面倒はいいのか?」
「自分の面倒事は好きだよ。ただ他の方から持ってくる、面倒事が嫌いなんだよ」
「お前は変わらんな」
「そう簡単には変わらなよ」
ボクは1年のリレーを見る。もうほとんどが走り終わり、順位発表が始まっていた。それが終わり少し休憩してから、全体の順位発表が始まる。
「えーでは、最初に1年生から発表します。第3位は・・・、Bクラスです!」
Bクラスは騒ぎ出す。続きてDクラスが2位になると、これまた騒ぐ。
「そして1位は言わずとも、Cクラスです!」
自分のクラスになると皆騒ぎだす。ここまで騒がれると、こっちはちょっと騒げないな。
その後他の学園も発表され、各学年1位から3位になったクラスから、1人づつ代表で賞状とトロフィーを貰う。当然うちのクラスは運動会実行委員が、ではなくエメリー様が出る事になった。
何でだよ? そこは運動会実行委員でいいだろ。
1人づつ賞状とトロフィーを貰い、校長先生が話して運動会は無事に終わる。