IF72話 まだ眠い
2日後。
「――――――まだ眠いですね」
「あくびが出るほどだもねぇ。今日も休みだから、部屋で寝てても良いんですがねぇ」
「寝すぎると今度は夜になっても、眠れませんからね」
「でも寝たいよねぇ・・・。ここってラザさまの部屋でしたよね」
「はい。・・・まさかですが。ラザ様の部屋で寝る気ですか?」
「そのまさかだよ。丁度ラザさまのベッドなら3人で寝れますよぉ」
「そうじゃ無いですよ! 勝手に部屋に入って勝手にベッドに寝ると言うのは、何事ですか!」
「勝手に入っても怒ったりしないよぉ。一度も怒った事無いしぃ。それにベッドで寝てたくらいで、怒ったりしないと思いますよぉ」
「流石に怒られます。いくら優しいとは言え、勝手にベッドで寝たら怒られますよ」
「大丈夫と思うけどねぇ。まぁ何でもいいや。ラザさま起きてますかー? それとももういませんかー?」
ドア越しから特に反応が無い。ヴィクトはドアを開けて中に入る。
「ヴィクト。怒られないうちに部屋に戻って寝ますよ」
「イリナは心配し過ぎだよ。それにもう遅いし」
「何言を言ってっ」
イリナは後ろからミシュに叩かれて、気絶して体勢が崩れる。ミシュは素早くイリナを抱えて部屋に入って来る。
「よし。これで眠れるねぇ。イリナを中心に置いて、左右はアタシたちが寝ようか」
アタシは毛布をどかして、ミシュはイリナをベッドの中心に置く。
「ん~。ギリギリかなぁ」
アタシたちは左右に別れてベッドに入って、毛布をかけて寝る。
「さて朝ご飯も食べたし。部屋に戻るか」
「・・・ラザってさぁ、あんまり外に出ようとしないよね」
「そうですね。何で外に出ないんですか?」
「別に外に出てもやる事無いし、行く所も無いですよ。それに外にいるといつ冒険者ギルトの職員に、捕まるか分からいですからね。なので不要な外出はしませんよ」
「なるほど。じゃあラザの部屋に行こうか」
「あぁ付いて来るんですね・・・」
オレたちは移動して、オレの部屋に行く。着いたらドアを開ける。
「――――――プリシラ。ちょっと確認するけど。朝オレの部屋にイリナさんたちいなかったよな?」
「おらんかったな。ちと確認するか」
プリシラは部屋に入って、確認をする。
「服は着ている。夜這いなどの目的では無いようだな」
「夜這いとかだったら、すぐに起こして説教だよ。これでも充分説教だがな」
「あのベッドで寝ている人が、前に言っていたヴィクトさんたちですか」
「はい。すみません。何故か勝手に部屋に入って寝ているようです」
「構いませんが。ラザさんはその・・・。大丈夫なんですか?」
「何がですか? オレはちょっと怒ってるですよ」
「怒りの方が強いんだ・・・。中に入って良いかな?」
「どうぞ」
エメリー様たちは部屋に入って、オレも部屋に入る。エメリー様たちは、空間からクッションを出して、クッションを敷いて座る。オレは椅子に座る。
「で、あの3人がベッドで寝てるけど。襲わないの?」
「何で襲わないといけないんですか? 殺したいほど恨みはありませんよ」
「そっちじゃなくて性的にだよ」
「そんな事する訳ないじゃ無いですか! それをやったら最低のクズ野郎ですよ!」
「仮にやろうとするなら。妾は止めるがな」
「やらないって言ってるだろ!」
「たぶんやっても大丈夫だよ。普通ならこんな事無いんだよ。いい機会だと思うよ」
「エディスさん。今すぐに部屋から出て、出禁にしましょうか?」
「本当にすみませんでした。もう言いません」
「本当に言うの止めてくださいよ。2人が顔を赤くしてますよ」
「エディスはたまにそう言う事を言うんで、こっちが困りますよ」
「同じく」
「たまにエディスさんがおっさんに思えますよ」
「言い方が酷い! 女性に対してその言葉は無いよ!」
「いえ。エディス先輩は言い返せないかと。事実なので」
「はい。事実なので言い返す事は出来ないと思いますよ」
「2人も!? 何でそんな事を言われるのかなぁ・・・」
「まぁ今までの行動だろ。自業自得だ」
「うぅ・・・。こうなったら、あの3人を起こしてやるぅぅぅ」
「止め方が良いですよ。無理に起こそうとすると、武器が飛んで来ますよ」
「嘘でしょ・・・」
「本当ですよ。本人たちがそう言っていたので、起こすときは普通に起こしてほしいそうです」
「この3人ちょっと怖くない!? 絶対元冒険者とかでしょ!」
「惜しいですね。この3人は元傭兵ですよ」
「元傭兵・・・。え、何でメイドになってるの? まだ王都の騎士になった方が良いよね」
「本人たち曰く。気楽な場所がいい。そう言ってましたよ」
「気楽な場所がいいんだ」
「確かにここなら気楽かもしれませんね。長男と次男を除いてですが」
「ラザ先輩の兄たちはそこまで酷いのですか?」
「気に入らない事があればすぐに怒るわ、使用人にはきつく当たるわ、普通に人を見下すわ、自分勝手だわ。一昨年なんてエメリー様たちが入浴中に、侵入しようとしたんですよ」
「よく廃嫡になりませんでしたね」
「未遂で終わったんで、親父の説教だけでしたよ。メールたちがいて良かったですよ」
「そのまま廃嫡すればよかったじゃん」
「廃嫡なったら、オレが次期当主になるんじゃないですか。嫌ですよ。兄さんたちがつまらない事でヘマして、廃嫡になるのは困るんですよ」
「そうですか。ところであのメイドさんたちはどうするんですか?」
「起きるまでそのままですよ。ダンジョンの疲れがまだ残ってると思いますし、説教するのはいつでも出来ますし」
「意外と優しい。無理に起こさないの?」
「よほどな事が無い限り、無理やり起こしたくないんですよ。それにオレは死にたく無いですし」
「流石にラザさんには攻撃しないと思いますよ」
「攻撃をしてこないって言う、根拠がほしいですね」
オレは一度ベッドを見ると、ヴィクトがあくびをしながら起きる。
「――――――おはようございますぅ~」
「おはようございますぅ~。じゃないんだよ。何勝手に人のベッドで寝てるんだよ。あとプリシラも寝てる人にちょっかいをだすな。ヴィクトさんはちょっとこっちに来い」
「敬語が抜けてる」
「怒ると敬語が抜けるんですね」
「そのまま敬語を抜けてほしいものですね」