IF69話 また説教
31日。オレとプリシラは第11騎士団の見送りをする。
「気を付けて行ってください。危なくなったらすぐに逃げてくださいね」
「解っているが、念を入れて言わなくてもいいだろ」
「ロザリー様は自分の立場を分かってますか? ダンジョンで殉職しました。何て言われたら、カルバーン家は全員打ち首ですよ」
「そっちの心配か」
「それに死んじゃったら、エメリー様たちが大泣きしますよ」
「ラザは大泣きしないのか?」
「オレはグッと我慢しますよ」
「我慢するのか。では行ってくる」
「いってらっしゃい」
ロザリー様は第11の所に行って、ダンジョンに潜る。オレたちは家に帰る。
「まるで恋人みたいなやりとりだな」
「別にそう言うやりとりをした訳じゃ無いんだが。オレは思っていることを言っただけだが。・・・あ。弁当くらい持たせればよかった」
「弁当を渡せば。完全に恋人だろ」
「あとポーションも」
「それは持っているだろ」
「それもそっか。いやそれでも渡せばよかったか」
「そこまでしておけよ。あの小娘を少し過小評価してないか?」
「あ・・・。確かにしてるかも。無理に渡すのは失礼だな」
「そうだ失礼だ。無理に渡せば、自分は弱いと思うだろ。何事にも程程が大事だ」
「程程ねぇ・・・。でも明日はイリナさんたちには渡さないと」
「主は話を聞いておったか?」
「それはロザリー様の話しだろ。イリナさんたちには関係の無い話だろ。それに程程とは言っていたが、空間の中に入れるだけなんだ。特に問題は無いだろ。それに弁当を渡しておけばな」
「渡しておけばなんだ?」
「もう少し長く潜るかもしれない。そうすれば少しは過保護から抜け出せる・・・」
「過保護か。確かに少しは抜け出せるな」
「去年の事があったから。あの3人。いやあの6人はかなり過保護になってる・・・。心配してくれのは嬉しいけど。ちょっとやり過ぎ」
「主はイリナを庇ったからな。それと無茶をする人と思われておるんだろ」
「確かに無茶はしてるけど。そこまで無茶をしてるのか?」
「最近で言えば。去年の文化祭がそうだろ。何故真っ先に志願をしただろ。ちと躊躇しろ」
「確かに躊躇するところだけど。あのままにする訳にはいかないだろ」
「だが危険をちゃんと考えろ。あの場で主が死んでいたかもしれんぞ」
「そうだな・・・。また説教されたなぁ」
「主が悪い」
オレたちは家に帰る。家にいても特にやる事は無い。今も人手不足だが、オレの方まで仕事は回ってこない。色々うまくやっているようだ。
「親父? 何処に行くんだ?」
「街の視察だ。たまには見る必要があるだろ」
「そうだな。気を付けてくれよ。一応ポーションを渡しておくよ」
オレは空間からポーションを3つ出す。親父に渡そうとしたが、トーマスさんが持つことになった。
「では行ってくる」
「いってらっしゃい~」
親父たちは街に行く。オレたちは部屋に戻って、自由に過ごす。
8月1日。朝早くから弁当を作って、イリナさんたちの見送りをする。
「一食分ですが3人分の弁当と、ポーションです」
「本当に弁当を作るとはなぁ」
オレは3人に弁当が入った手提げカゴと、ポーションを3本づつ渡す。
「いいのでしょうか? わたしたちが貰っても?」
「はい。あげる為に作ったので、どうぞ受け取ってください」
「まさか弁当を貰えるなんて思いませんでしたよぉ。これってぇ愛妻弁当ですかぁ?」
「オレはいつ御三方と結婚しました? それにオレは男性ですよ」
「言ってみただけですよぉ。い~つ食べようかなぁ」
「食べないならわたし食べましょう」
「食べない何て一言も言ってませぇーん。ちゃんと食べまーすぅ」
「そうですか。ではわたしたちは行ってきます」
「はい。お気を付けて」
イリナさんたちはダンジョンに潜る。オレたちは家に帰って、部屋で一度寝る。
数時間後。起きて身支度を済ませて外に出る。待っていると、エメリー様たちが家に来る。挨拶が終わったら、トーマスさんに付いて行って。客間に行く。
「今年は兄たちが帰って来なくて良かった」
「そうだな。あの馬鹿2人が帰って来たら、私の胃が持たなくなるぞ・・・」
「胃薬でも飲んでろよ。それよりいいのか? 今日は新人たちの説明会だろ。早く行かないと遅刻するぞ」
「・・・ラザ。お前も来てくれないか? 私1人では人が足りん」
「何人か使用人を連れて行けばいいでしょ。オレは今から、エメリー様たちの相手をしてくるから」
「それとも変わるか? 其方があの小娘どもの相手をするか?」
「―――では行って来る。くれぐれも、エメリー様たちに迷惑をかけるなよ」
親父は急いで準備をして、説明会に行く。
「最初から行けばいいのに」
「それほど人が足りておらんようだな。やはり新しい使用人を雇うべきだろ」
「それを今やっているんだよ。今回の説明会はまさにそれだ。と言っても執事とメイドを合わせて、10人しかいないけど」
「増えないよりマシだろ。そうかもう決まっておったか。だがこれはトーマスとメールも必要だろ」
「後から行くそうだよ。オレたちも部屋に戻るか」
オレは部屋に戻る。自分の部屋の前に着いたら、ドアを開けて中に入る。
「やっぱりいましたか」
「ここに来れば。確実にラザに会えるからね」
「確かにここに来れば、確実にオレはいますね。何でエメリー様たちやヴィクトさんは、人が部屋にいない時に勝手に入って来るんですかねぇ。しかも堂々と男性の部屋に入りますか?」
「普通は入らないよね~。まぁラザだから普通に入ってるんだよ」
オレだからいいのかよ・・・。この3人はオレの部屋に入って、何か変な事はしてないだろうな?
「ところでそのヴィクトさんって誰?」
「ウチで雇っているメイドですよ。去年からウチにいるんですよ。後2人いますね」
「あと2人いるんだ」
「その3人は何処にいるんですか?」
「今朝ダンジョンに潜りましたよ」
「「ダンジョン?」」
「あぁそう言えば。ユールスト街の近くにダンジョンが出来た。て話があったね。そっか、ラザがいる街はユールスト街だったね」
「はい。色々大変でしたよ」
その後ダンジョンの話をして、今日は街に行く。