IF68話 条件
「ところでヴィクトさんたちは、ダンジョンに潜るんですか?」
「アタシたちは8月1日にダンジョンに潜りますよ。第11と同じ日に帰ってきます」
「丁度エメリー様たちが来る日に、ダンジョンに潜るんですか」
「エメリー? もしかして、第2王女さまの事ですかぁ?」
「そうですよ。後は公爵家の次女と商家の娘が来ますね」
「ラザさまはいつからそんな交友を持っているんですか?」
「公爵家の次女は去年からで、第2王女様と商家の娘は一昨年からですよ」
「あぁアタシたちがまたいない時ですか。凄いですねぇ。そこまで交友を持っていたら、普通に次期当主とか目指しますよ。あるいは独立するかですね」
「やりませんよ。オレたちは冒険者になるので」
「プリシラさまは使い魔ですよね?」
「何だっていいんですよ。・・・さっきから手を叩く音がするんですが。何をやっているんですか?」
「この小娘が主に不要に触れようとすから、手を叩いてるだけだ」
「少しはくらいは良いじゃないですかぁ。それくらいじゃあラザさまは怒りませんよ」
「メイドとしてそれはどうなんだ? 不要に触る奴がどこにおる?」
「ここにいるじゃないですか。だからすこぉしくらい触っても、良いじゃないですか」
「駄目だ。主の精神が減る」
「触られるだけで何で精神が減るんだよ。オレはそこまで精神が脆いのか? オレはそこまで脆くないだぞ」
「脆かったら面白かったんですがねぇ」
「プリシラのお陰で耐性がついて来てるんですよ」
「耐性が付く前に、もう少し色々やっておけばよかったな・・・」
「耐性が付いて良かったよ」
「アタシも一昨年に来ればよかったですねぇ」
「仮に一昨年来たとしても、今みたいな状態になってませんよ」
「そうかもしれませんねぇ」
「―――ラザ様。こちらに仕事をサボっているメイドはおりますか?」
「丁度1人サボっているメイドがおりますよ。どうぞ連れて帰って来てください」
ドアが開いてイリナさんが入って来る。
「ちょっ。ラザさま裏切るんですか!?」
「ヴィクトさんとは共謀とかした憶えは無いですよ」
「行きますよヴィクト。まだ終わって無い仕事がありますよ」
イリナさんはヴィクトさんの所まで来て、掴んで連れて行って部屋から出る。
「サボってたのかよ。まぁサボってるだろうなぁとは思ったけど」
「あの小娘はいつかクビになるのではないか?」
「どうだろうな。親父の所に行くか」
オレたちは立ち上がって、親父がいるであろう執務室に行く。着いたらドアをノックして、入室の許可を貰って中に入ってソファに座る。
「ラザとプリシラ様か。先ずは手押しポンプの事は礼を言う。ありがとう」
「ありがとう。じゃないよ。何オレに押し付けてるんだよ」
「ラザが一番適任だったまでだ。結果的に手押しポンプを献上出来ただろ」
「確かに出来たけど。それで本音は?」
「国王陛下に会いに行けるわけが無いだろ! 会うと心臓の鼓動が速くなって、最悪死ぬぞ!」
「やっぱりそっちが本音か。オレもきつかったぞ・・・。まさか2日も城に泊る何て思わなかった」
「何故泊まる事になった?」
「書庫にある本の整理のために、駆り出された」
「本の整理か・・・。最近やってないな」
「・・・まぁ実家だからやるの良いけど。流石に人が足りないんだが。手が空いてる人はいるのか?」
「いる訳ないだろ。ダンジョンが出来て、皆手が足りん状態だ」
「もう少し使用人雇ってくれよ。お金には余裕があるだろ」
「雇いたいが。出来ないんだ。決めているのはトーマスとメールだからな。それにウチにいる使用人たちは、何故か戦闘出来るだろ」
「出来るな。この家にいる使用人は何故か出来るな。なるほどあの2人が決めているのか。なら納得がいくな。あの2人は何故か戦闘が出来る、使用人を選ぶか分からんな」
「何で戦闘が出来る人を採用してるんだよ・・・。もしかして今まで落ちた人は、全員戦闘が出来なかったからか。だからイリナさんたちは受かったのか」
「トーマスとメールには、少し妥協してもらわねばな。いつまで経っても使用人が増えない。過去に執事とメイドとしては優秀な人がいたが、何故か試験は落ちた。今思うとその人たちは、戦闘が出来なかったんだな」
「執事とメイド斡旋所には、まだ募集の紙が貼ってるのか?」
「記憶が確かなら貼ってあるな。今度から条件に戦闘が出来る人と書いておくか」
「そうした方が良いな。じゃあオレたちは書庫に行って整理してくるよ」
「頼むぞ」
オレとプリシラは立ち上がって、執務室から出て書庫に向かう。
「あ、メールだ」
「ラザ様とプリシラ様。お帰りなさい」
「ただいま。なぁメール。何で使用人を雇う時に、戦闘が出来る人が条件なんだ?」
「何か遭った時の為ですよ。このご時世。いつどこで命が狙われるか分かりません。なので自分の身は自分で護るようにしないといけません」
「でもその結果。人手不足になってるだろ」
「はい・・・。でもうまく回ってます」
「次からがもう少し優しくしてくれよ。少なくても募集の条件には書いておけよ」
「書いてますよデカデカと! それでも来る人は、大体が出来ない人なんですよ」
「受ける人に問題があったか。あのイリナたちを雇ったのは、戦えるからだろ」
「はい! あの3人は大当たりでした! あの3人を逃していたら、当分ウチにはメイドは入って来ませんね」
「イリナさんたちが入って来てくれて、本当に良かったよ・・・。じゃあオレたちは書庫に行くから」
「書庫にはアレックがいますが、何しに行くんですか?」
「本の整理ですよ」
オレとプリシラはメールと別れて、書庫に行く。書庫に着いたらノックをして入室の許可を貰う。
「ラザ様。何か御用で?」
「本の整理ですよ。アレックさんも本の整理ですか?」
「はい。丁度やる事が無いので、書庫にある本を整理しよう思いました」
「そうですか。ではオレも手伝います」
「ありがとうございます」
オレとプリシラはアレックさんの手伝いをする。




