IF60話 襲って来ない
次の日。オレはドワーフのクライブさんから、武器を受け取って、庭で試しに使ってみる。
「本当に可変武器が完成したんだ。変形させるには魔力を流せばいいのか」
「一体どんな形になるのだろうなぁ」
「今は剣の状態だな。これに魔力を流してっと」
剣に魔力を流す。剣は魔力に反応して、形が変わって槍になる。
「槍か。剣からどうやって変わってるか知らないけど。凄いな」
「変形をするのは良いが。強度はどうなる? 武器によって違いがあるだろ」
「どうだろ。この武器は全て強度が同じかもしれないな。次」
槍に魔力を流すと、今度は戦槌になる。
「戦槌か。使った事無かったな」
オレは少しプリシラから離れて戦槌を振ってみる。
「これは重いな。1人で戦う時は注意が必要だな」
「流石に違う武器を使うだろ。その大きな戦槌は巨大な敵と戦う用だろ」
「そうだな。もう少し小さくならないかな?」
オレがそう言うと、戦槌は形を変えて片手持てるサイズになる。オレは片手に持てるサイズになった戦槌を振る。
「これなら動きやすいな。1人でも戦える」
「そうだな。しかし戦槌では砕く事しか出来んぞ」
「あぁそれをやると素材が駄目になるな。スケルトンとかなら良いけど、ホーンラビットとかは駄目になりそうだな」
オレは戦槌に魔力を流す。次は弓になる。
「弓!? 糸は何処から出て来た!?」
「気にせんでいいだろ。矢はどうした? これでは使えんだろ」
「そうだよな。一応矢はあるけど、糸にも何かあるんじゃないのか?」
オレは糸に触れ引っ張ってみる。だけど何にも起きない。次は糸に魔力を流してみる。すると弓の中心に矢の形が出来る。オレは弓を上に向けて、糸を引いて放すと矢が飛んで行く。
「なるほど魔力で矢が出るタイプか。ちとこの武器では魔力消費が激しいな」
「これは援護をする時に使うか。・・・この弓で殴るものアリか?」
「止めて方がいいと。妾は思うが」
「だよな」
弓に魔力を流すと剣に戻る。
「全部で4種類か。あの鉱石で4種類も変形出来るのか。凄いけど、順番って決まってるのか?」
試しに剣から戦槌に変形する。
「おぉ剣から戦槌になった。これなら使いやすいな」
「便利だな。とりあえず一通り見たな」
「後は1つ1つ練習しないとな。今日はやらないけど」
オレは戦槌から剣に変えて、空間の中にしまう。オレたち部屋に戻る。
冬休みが終わって1月。放課後の図書室にて。
「・・・・・・魔物の群れが王都に襲って来ない!? どうなっているんだ!? もう1月だぞ、そろそろ魔物が王都に襲ってくる時期だろ。本当は12月の終わりくらいだけど。このまま何も無ければいいけど。実は襲ってくる時期がズレたのか?」
「あるいは主が、ストーリーから逸脱させたからだろ。その結果。本来なら魔物の群れが王都に襲うが、その為の条件を満たさずに過ごしておったから、何も起きなかったんだろう」
「それは嬉しいものだな。このまま何事も起きなければ良いんだけど」
「主が余計な事をしなければ、何も起きんだろ」
「オレはそんな事しないよ。そもそもどうやったら余計な事をするんだよ・・・」
「さぁな。とにかく後は卒業して、冒険者になるだけだろ」
「何か一気に楽になったなぁ~。今年の夏休みは中々大変だったけど」
「ダンジョンが出来た事によって、やる事が多かったからなぁ。あのポーションを作るのは、苦労したのではないのか?」
「苦労したよ。魔力がいくらあっても、足りなかったからなぁ・・・。プリシラが手伝ってくれなかったら、かなり時間がかかっただろうな」
「あの程度ならすぐに作れる。ただちと効果が効きすぎるかもしれんが」
「えっ、マジで・・・? どうしよ。これ親父たち言わないと。後々大変な事なるぞ・・・」
「何とかなるだろ。一応手紙でも出しておくか?」
「出しておかないとな」
「―――ラザとプリシラさん? そんな所で何してるの?」
「エディスさん。考え事と調べ物ですよ。エディスさんは1人で何してるんですか?」
「アタシもちょっと調べ物だよ」
エディスさんはテーブルの上に、本やノートを置いてオレの前の席に座る。エディスさんは本を開いて、本に書いてある内容をノートに書き写す。
「調合か。確かエディスはノーラス商会の娘だろ。何故調合を調べている?」
「ノーラス商会!? 大商会じゃないですか。初めて知りましたよ」
「そうだけど。何でプリシラさんが知ってるの? アタシ喋ったっけ?」
「そこは気にせんでいい。別に調合をなどしなくてもいいだろ」
「そうだけど。アタシは接客とかお金のやりとりより、調合の方がいいんだよね~。親には反対されたけど」
「調合の方がいいのであれば、調合をやればいいのでは?」
「そうなんだけど。親はそれよりも、客の前に出て接客してほしんだよ。人で不足だから」
「あぁそうなんですか。それでも調合の方がいいんですよね?」
「そうだよ。アタシが調合をすれば、少しは出費は防げるでしょ。それを親に言っても意味なかったけど・・・」
「エディスは親はエディスを思って、言っておるのではないか?」
「そうかもしれないけど。やっぱり調合の方が良いよ」
「エディスさんがそう決めたら、オレたちは何も言いませんよ」
「ラザたちが言って来たら、ちょっと困るよ・・・」
雑談をしながら時間を潰していく。