IF59話 メイド斡旋所
「確かにオレは使用人たちと仲が良いと思いますよ。使用人たちはどうかは知りませんが」
「良いと思ってるわよ。いいわよねぇ~。使用人たちと仲が良くて。ワタシの実家はそうでもないのよ」
「小娘の振る舞いが悪かっただけだろ」
「普通の振る舞いよ。例えば1週間休みを与えたり、給料を上げたりしたり、仕事を早く終わらせたり。それなのに全く仲良くなれないわ・・・」
「会話とかしたりしないんですか?」
「するわよ。ただ皆嫌そうな顔をするわ・・・」
「・・・親がどこかで握りつぶしておるのだろうなぁ」
「そうね。それしか考えられないわ。帰ったら一発ぶん殴ろうかしら」
何かジョナス兄さんには、勿体ないような気がする。
「―――ラザさま。入ってもいいでしょうか?」
「どうぞ」
ドアが開いてヴィクトさんが入って来る。ヴィクトさんはローサさんを見て、ちょっと嫌そうな顔をしてこっちに来る。
「アレ大丈夫なんですかぁ? あの長男の婚約者ですよぉ」
「大丈夫ですよ。少なくてもジョナス兄さんよりマシですから」
「そうですかねぇ。噂だと1週間休みを与えたのに、いざ戻ってみると怒られたり。給料が上げると言いながら、逆に下がっていたり。仕事が早く終わったら、また次の仕事を追加したり。色々良い話聞きませんよ」
「それはワタシの親が勝手にやっているのよ。多分。ワタシは本当に使用人たちと仲良くしたいのよ」
「確か実家の方は数人程仲が良い人がいますよねぇ。その人たちとは本当に仲が良いみたいですが、他の人たちはそうでもないみたいですねぇ」
「何で知ってるのよ!?」
「さぁ? 色々情報は転がってるんですよぉ」
「・・・ヴィクトさん。最初から知ってましたよね?」
「知ってましたよ。ただちょ~とこの部屋にいるのが、気に食わなかっただけですよぉ。婚約者はあの長男の部屋にいると助かるんですがねぇ」
「棘のある言い方ね。そこまでワタシが嫌い?」
「嫌いって訳じゃ無いんですがねぇ。・・・何と言えば分かりませんねぇ」
やっぱり嫌いなんじゃないか?
「この家のメイドまで嫌われるなんてねぇ・・・。ワタシこの家で暮らせるのかしら?」
「それは知りませんよ。それは貴女自身が頑張る事ですよ」
「そうよね。ところでアナタは、王族と公爵家との繋がりでも持ってるの?」
「持ってませんよ。ただ仲が良いだけですよ」
「それだけでも充分持っているわよ。アンタがここの家を継げばいいじゃない」
「嫌ですよ。オレは冒険者になるんで、この家を継ぐ気は無いですよ」
「勿体ないわねぇ。アナタが継げば色々楽だと思うわよ」
「仮にオレが継げば、色々面倒来るんじゃないですか。他家から色んな女性を紹介されるんじゃないですか」
「その時はワタシと結婚すれば良いじゃない」
「貴女と結婚するより、仲の良い王族か公爵家の女性と結婚した方が、まだ利益がありますよ」
「もっと爵位が上だったら・・・」
「・・・・・・」
「プリシラ。先に言っておくが、殺すなよ」
「何故分かった!?」
「流石に分かるからな。1年半以上も一緒にいるんだ。これで分からなかったら、どうかしてるよ」
「・・・そうか」
何か嬉しそうだな。
するとドアがノックされる。オレは許可をすると、ジョナス兄さんが入って来る。
「戻ったぞ。一応聞くが、何もしてないだろうな?」
「するわけ無いだろ。仮にオレが嘘を言っていたら、プリシラが何か言ってくる」
「どうだが。お前の使い魔だから、不利になるような事はしないだろ」
「それを言われると言い返せないな。あぁローサさん。もしジョナス兄さんや親に嘘を吹き込んだら、タダじゃ済みませんよ。特に嘘とかはすぐにバレるので」
「えっ、はい・・・」
これで嘘とか言ったら、本当にどうしてやろうかな。まぁそこまで馬鹿だとは思わないけど。
ジョナス兄さんとローサさんは部屋から出る。ヴィクトさんはベッドに横になる。
「あぁ何か疲れた・・・」
「お疲れ様でぇーす」
「主がいる前で堂々とベッドに横になる・・・。本来ならその場で怒られても、文句は言えんぞ」
「まぁそうですねぇ。まぁラザさまだから、許されていると思いますよ」
「前にも同じ事があったような。これは怒った方がいいでしょうかね?」
「すぐにどきます」
「冗談ですよ。それよりどうやって、ローサさんの情報を知ったんですか?」
「メイドたちの情報網ですよ。大体の他家の情報は、これで手に入りますからねぇ」
「それはこの家の情報も?」
「はい。今カルバーン家は危険はありますが、人気があるですよぉ。今年は入れたので運が良いですよ」
「人気あったんだ・・・。でもそれだと、他家の情報は手に入りませんよね?」
「それはメイド斡旋所って言うのがあるんですよ。大体の情報はそこで手に入ります」
「メイド斡旋所? 何だそれ?」
「素が出てますよぉ。寧ろ素でいてくださいよぉ」
「嫌です。メイド斡旋所って言うのは?」
「メイド斡旋所って言うのは、メイドを募集する時に使う場所ですよ。大体はこのメイド斡旋所を使いますね。まずメイドになるには。ある程度は学園とかで学んでから、メイド斡旋所で試験を受けてます。合格をしたらメイドとして登録されます。そこからメイドを募集をしてる所を探して、その場所まで行って試験を受ける。合格をしたらその場所で仕事をする。不合格ならまたメイド斡旋所で、また募集を探しますね。逆に貴族や商人など偉そうな人が、メイド斡旋所に行ってスカウトする時もありますね」
「初めて知りました。メイド斡旋所があるなら、執事も?」
「ありますよ」
「・・・ヴィクトたちは傭兵を止めて、先ずはメイド斡旋所に行ったのか?」
「はい。試験を受けて無事合格をして、早速探しましたよ。中々条件が合わなかったですがねぇ」
「どんな条件ですか?」
「気楽な所ですよぉ~。でもそんな場所って中々無いですからねぇ。唯一見つかったのが、このカルバーン家でしたよ」
「この家だけだったのか・・・。この家に試験を受けた人は何人いました?」
「ざっと232人でしたね」
「2、232人!? よく受かりましたね。意外とヴィクトさんたちは、よく出来たメイド何でしょうか?」
「そうだと思いますよぉ。流石にアタシたちしか合格者いなかったのは、ちょっと驚きましたよ」
一体どんな条件だったんだろうか?




