IF58話 勘
文化祭が終わって冬休み。プリシラの転移魔法でオレは実家がある街に帰る。
「マジで街まで転移出来た。凄すぎるだろ・・・」
「帰れると言っただろ。ほれ、家に帰るぞ」
オレたちは街に入って家に帰る。家に帰ると、夏休みほど忙しい訳ではないようだ。
「かなり落ち着いて来てるんだな。オレが何かをしなくてもいいようだな」
「そうだな。今回はゆっくり過ごせるかもな」
「―――ラザ様とプリシラ様!? 本当に帰って来たんですか?」
「アレックさん。手紙に帰って来ると書きましたよ」
「そうですが。まさかこんな早く帰って来るとは、思いませでしたよ。それにちょっとタイミングが・・・」
「何か問題でも?」
「その、ジョナス様とノーマンが帰って来たのです・・・」
「帰って来たのか。夏休み中に帰って来ると思っていたが、冬休み中に帰って来るか。そろそろ騎士は止めてほしいものだな」
「次期当主が騎士でいるのは、ちとマズいからなぁ」
「それでアレックさんたちは大丈夫でしたか?」
「はい。色々ラザ様と比べると雲泥の差ですね」
「そこまで酷いんですか? まぁ確かに良い性格はしてませんが。とりあえず部屋に行っていいですか?」
「はい。すみません、余計な話をして」
「いえ」
オレとプリシラは部屋に行く。部屋に入って少し休憩をしてたら、急にドアが開く。
「帰って来たかラザ! まさか冬休み中に帰って来るとな!」
「部屋に入る前に、ノックくらいしたらどうだ?」
「お前にその必要があるのか?」
「誰にだって必要だろ。ジョナス兄さんの部屋に入る時は、ノックしないでいきなり入って良いのか?」
「駄目に決まってるだろ! ちゃんとノックしてから入らんか!」
「そうだろ。分かったら次からちゃんと、ノックして許可を得てから入れよ。またノックをしないで入って来たら、問答無用で蹴るからな」
「そんな事よりもだ。特別に俺の婚約者を紹介してやろう!」
「そんな事よりもだって? コイツは・・・。って婚約者? 誰の?」
「俺のだ。俺の婚約者だ!」
「・・・・・・ジョナス兄さんの婚約者? 明日はドラゴンでも降って来るのか? それとも魔王でも降って来るのか?」
「失礼な奴だな!? 俺に婚約者が出来る事が可笑しいか!?」
「物凄く可笑しい。一体どんな汚いやり方をした? 既成事実でもしたのか? それだったら一度ぶちのめすが」
「誰が汚い手を使ったと言った! 相手から紹介をしてきたんだ」
「この戯けに紹介だと? 目が終わってるのか、それとも本当の戯けか」
「いやただの政略結婚だろ。じゃないとこんな性格の悪いジョナス兄さんに、婚約者何で出来るわけがない」
「ほんっとうに失礼な奴らだな!! 少し羨ましかったり悔しがったりしたらどうだ!?」
「は、何で? 婚約者が好きでもない貴族とか、オレには耐えられないんだが。仮にオレが長男だったら、今すぐこの家から出て行ってるよ。好き嫌い無しでも、貴族って言うだけでちょっと無理・・・」
「お前よくそんな事言えるな。まぁいいだろ。ローサ、入って来い」
ドアが開いて、ジョナス兄さんの婚約者が入って来る。
「ローサ・マルエル・ライセットです」
「カルバーン家の三男、ラザです。兄が何かご迷惑をかけてませんか?」
「今の所ありません」
「おい。何で俺がローサに、迷惑をかけると思っている?」
「ジョナス兄さんの性格を考えるとなぁー。何か迷惑をかけてると思って」
「そんな事はしない! 一応言ってくが、ライセット家は伯爵家だ。変な事をすると、潰されるぞ」
「伯爵家ねぇ。まぁ王族や公爵家よりましか。いや伯爵家もあれだけど」
「王族と公爵家・・・」
何か一瞬チャンスって思われなかったか? これは利用しようと考えてないか? 無駄と思うけど。
「―――兄さんここにいましたか。父さんが呼んでますよ」
「そうか。すぐに行く」
「ノーマン兄さん。次同じ事したら、蹴っ飛ばすから」
「ごめんなさい・・・」
「ラザ。少しの間ローサの相手をしていろ」
「ちょっと待て。流石にそれは駄目だろ。メイドの人にやらせろよ」
「そのメイドが忙しいだ。お前なら手を出せないだろ」
「出せないよ。何で手を出さないといけないんだよ」
「そう言う事だ。行くぞノーマン」
2人は部屋から出て行く。
「あの野郎・・・」
「面倒を押し付けられたな。まぁ適当にやれば良かろう」
「そうだけど。本人がいる前で、よく言えるな」
「聞こえてはおらんだろ。その証拠に何も思われて無いぞ」
「そうかよ」
「―――はぁ~ダル」
「「!?」」
「え、今のはローサさんだよな? 何かかなり雰囲気が違うような」
「えぇ違うわよ。悪いけど、勝手にベッドに座るわよ」
「あぁどうぞ」
ローサさんはベッドに座る。
「はぁ疲れた。アイツの前で落ち着いた性格をするのは、疲れるわぁ~」
「そうですか。でも自分で決めた事でしょ。知りませんけど」
「まぁそうなんだけど。やっぱりメンドウだわぁ~」
「この小娘。さっきの小娘と性格が違うな。そっちが素か」
「そうね。こっちが素ね。改めて、ワタシはローサ・マルエル・ライセット。伯爵家の次女よ。伯爵家って言っても、領地は持って無いけどね」
「そう言う事は王都で暮らしておるのか。で、あの戯けとは政略結婚か?」
「そうよ。じゃなければあんな性格が悪い人と、婚約するわけ無いでしょ。するならまだアナタとした方が100倍マシよ。まだ愛せるわ」
「遠慮しておきます。オレは貴女と結婚何て毛頭ないです」
「でしょうね。アナタは一応ジョナスから聞いてるけど、聞いてたのと違うわね。聞いていた話では。能無しで役立たずで、唯一出来るのは気配遮断だけしか出来ない。って聞いたけど」
「それは多分。オレが学園に入学する前の話だと思いますよ」
「あらそう。じゃあ今は全く違うのね」
「そうですね」
「はぁ。結婚するならやっぱりラザよね」
「止めてください。何でオレなんですか?」
「だってアナタ、使用人たちと仲が良いでしょ」
「何で使用人たちと仲が良いと、分かるんですかね? 一度でも見ましたか?」
「勘よ」
「勘ですか」
勘で何で分かるんだよ・・・。